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悪魔への不完全犯罪

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「前にいたいつかさんは?」
 と聞くと、
「ああ、もう退店されましたよ」
 と言われたのだ。
「ああ、卒業したんだ」
 と思うと、身体がムズムズしてきた。それは、
「俺は、まだいつかさんを求めているのかな?」
 と思わせたのだが、そこまで感じると、それ以上は、意識しないようになっていた。
 きっと、
「自分の中で、最高潮の気分になった時、果てないまでも、何か、賢者モードのような状態になったのではないか?」
 と感じた。
「果ててもいないのに、賢者モードに陥るというのは、身体も精神も、中途半端な気がして。その憤りは、ハンパではなかった」
 そう思うと、
「これは、賢者モードに似ているが、違っているのかも知れない」
 と感じた。
 賢者モードというのは、女生徒セックスをした時、男性が果てた後に訪れる、
「倦怠感」
 であったり、
「何か言い知れぬ、罪悪感」
 のような、複雑な気分がまじりあって、一気に気持ちが冷めてしまい、身体が追いついてこないような時のことをいうようであった。
 そんなことになった時、
「いつも考える」
 ということがあった。
 それが、以前に行ったことがあった田舎の村といってもいいようなところであった。
 そこには、いつも夏に行っていたのだが、そこは確かに暑く、セミの声が鬱陶しいところであったが、子供である自分は、ランニングに半ズボンという、格好だったので、
「そんなに暑いとは思わなかった」
 と感じていた。
 子供は皆、元気に外で遊んでいた。木造の日本家屋で、一部屋がかなり広い。
 したがって、クーラーは設置はしてあったが、ついていたのかどうか、覚えていないくらいでもあった。
 ただ、実際にはついていなかったことを思い出すと、
「クーラーなしでいられる自分が偉い」
 という感覚に陥っていたのを思い出していた。
「クーラーというものがなくても、暮らせるのは、何度までなんだろう?」
 と思っていたが、どうやら、その場所は、どんなに暑くても、
「33度」
 というのが、今までの最高記録だということであった。
 実際には、近くの都市では、
「毎年のように、37度くらいの気温が、一度くらいはある」
 ということであったようだ。
 しかし、それも、
「地形の違い」
 という一言で片づけられたのだが、その理由として、
「フェーン現象というものが、向こうでは起こっているからね」
 ということであった。
「フェーン現象」
 という言葉は聴いたことがあったが、実際に、
「どういうことなのか?」
 ということは知らなかったし、
「まだ、子供の君たちには早い」
 ということを言われると、
「ああ、知る必要はないんだ」
 ということで、知りたい気持ちが消えていったのだ。
 他の子供は知りたいと思っただろう。
 しかし、坂下にとっては、
「そんなことは、これからの英才教育で、学校で習うよりも早く知るはずなので、慌てることはない」
 と感じたからであった。
 なるほど、坂下にとって、英才教育は、普通の学校よりも早く習得させることになる。
 なぜなら、一般教養の後に、実際の会社経営に特化した、本当の帝王学というものの勉強が待っているからだ。
 そのことは、
「教育係の先生から、口が酸っぱくなるほど聞かされたのだから、耳にタコができたといってもいいだろう」
 そんな状態で、坂下は、
「次第に、考え方が、冷めてきている」
 ということが分かっていたが、自分では、それをどうすることもできなかった。
「嫌だ」
 というわけではないのだが、だからといって、
「英才教育を受けたくない」
 という気持ちにならない。
「せっかく途中まで受けたのだから、今ここでほっぽり出されてしまうと、自分ではどうすることもできなくなる」
 ということになるであろう。
 それを考えると、
「あの時田舎で過ごした時間は、素敵な時間で、賢者モードの時に思い出すというのは、何か意味があるのではないか?」
 と感じたのだ。
「人間というのは、どうしても、避けては通れないと感じる時がある」
 ということを、
「英才教育」
 の中で聞かされたことがあった。
「英才教育というのは、押しつけに見えるかも知れないけど、実はそうではない」
 と言われていたが、それがどういう意味なのか、正直分からなかったのだ。
 実は、坂下は、筆おろしをしてもらった、
「いつかさん」
 以外にも、同じ風俗の違う店で、相手をしてもらったことがあった。
「最初に筆おろしをしてもらった女性と、2回目はしてはいけない」
 というルールがあったのだ。
 ただ、
「3回目以降はかまわない」
 ということで、
「最初と二回目は、決して同じ女性を相手にしてはいけない」
 という、ルールなのであった。
 その理由としては、
「一人の女性に、嵌りこむとすれば、最初の筆おろしの相手が一番可能性が高い」
 ということである、
「決して結ばれない」
 ということが分かっていて、精神と肉体のバランスが崩れてしまうことで、精神が病むか、それとも、肉体が、自分のいうことを利かなくなるということが、心配だということであった。
 それは、もちろん、大人になって考えれば分かることであるが、まだ肉体的にも精神的にも、
「まだまだ子供だった」
 というその頃に、分かる理屈ではなかった、
 ということであったのだ。
 そんなことを考えていると、
「ひょっとすると、俺って、賢者モードというのを、凌駕できるのではないだろうか?」
 というような、恐ろしいことを考えていたのだった。
「男というのが、どういうものなのか?」
 それは、まず女というのを知る必要がある。
 というのが、
「筆おろし」
 ということの、
「英才教育」
 での一環ということであった。
 そんなことを考えると、
「二人目が、確かに、いつかさんに比べて、劣っているように感じたのは、それだけ最初だったという印象が強かったからだ」
 ということは分かっている。
 確かに、二人目の人が、
「落ちている」
 というわけではないことも分かっていた。
 しかし、やはり、
「何事においても、最初の人間というものには、敵わないものだ」
 ということが分かっていることで、
「誰が相手であっても、いつかさんにはかなわない」
 と感じさせられるに違いないということであった。
 そんなことを考えていると、
「次は、いつかさん」
 と思っていたはずなのに、どこか、急に、
「慌てることはない」
 と考えるようになった。
 というのは、
「いつかさんとの再会には、落ち着いた、つまり大人になった自分を見せたいんだよな」
 という気持ちになっていたのだ。
 だから、気持ちが落ち着いて、会えるという日を自分なりに模索して、
「その時が来たら、満を持して会いに行く」
 ということを決めていた。
 しかし、それが思ったようにはいかなかったようで、お店に問い合わせると、
「もう辞めた」
 ということであった。
「えっ」
 といって、その後、店の人との電話をいつ切ったのか分からないくらいに放心状態だったはずなのに、気が付けば、
「まあ、いいか」
 と思っている自分がいたのだった。
作品名:悪魔への不完全犯罪 作家名:森本晃次