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悪魔への不完全犯罪

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 ただの偶然なのかも知れないが、それだけで済ませられるということはないに違いないと言っても過言ではないだろう。
「少年としてのそれまでが、まるでウソのようだ」
 と、彼を知っている大人はそういうが、父親である坂下氏は、
「やはり思った通りだ」
 ということで、自分の遺伝子の強さのようなものを、自分で感じていたに違いない」
「さすがに、財閥を築けるだけの大物だということなのだろう」
 というのであった。
 坂下財閥と言われてはいるが、実際に、
「財閥」
 というのは、戦後、つまり、
「今から、70年前くらいに、解体した」
 と言ってもいいだろう。
 それでも、当時まで財閥だった企業は、コンツェルンというような、一種の、
「独占企業」
 という形で、残ってはいた。
 もちろん、
「独占禁止法」
 という法律の下に固まった企業としてであった。
 だが、坂下財閥というのは、そんなに昔からある企業ではない。むしろ、先代が一代で起こした大企業ということで、
「まるで財閥のようだ」
 と言われたことで、自然と、
「財閥」
 という言葉が残ってきたのであった。
 それを考えると、
「戦後の混乱でのし上がった会社のように、バブル崩壊の間隙を縫って、のし上がってきた会社というのも、少なくはないだろう」
 ということであった。
 ということを考えると、
「なんといっても、社長である坂下氏の父親が、どれほどのカリスマ性であったり、大企業の社長だる貫禄があったのか?」
 ということであろう。
 現社長も、同じように、昔の社長童謡の、貫録を示していたようだ。
 歴史でよく言われる、
「初代の貫禄の影に隠れた影の薄い二代目」
 ということではないようだった。
 だが、
「その遺伝子の力」
 というのも、神通力としては、
「先代までだったのかも知れない」
 というのは、女に対してであれば、
「その力は遺伝なんだろうな」
 と言われるだろうが、人間としては、少々難しかったりする。
 というのも、完全に、親の七光りの影に隠れて、
「自分が何かをしなくても、まわりが勝手にしてくれる」
 という、悪い方に解釈してしまったということであろうか。
 何と言っても、学校がそもそも、
「金持ちしか入れない」
 というところだったことで、一応の試験はあるのだが、お金の力でいくらでも何とでもなる。
 という噂まであった学校だった。
 実際に、それは、ウワサということに限らず、ウソでお何でもないようで、それだけに、「親のレベル」
 も知れているということだった。
 特に、
「金持ちばかりがいる学校」
 というところにいるというだけで、自慢だという親だったのだ。
 普通であれば、普通の学校で、皆が平等であれば、
「自分の子供だけ優秀であってほしい」
 ということで、
「受験戦争」
 というものに、親が無理矢理巻き込んでしまったりするのだろうが、最初から、
「お金による差別」
 というものが存在している学校であれば、
「うちの子供は優秀だ」
 ということになる。
 だから、
「いまさら、競争させることはない」
 ということになるのだが、次に親が考えることとすれば、そんな競争のない学校にいれば、
「モノをいうのは、金である」
 ということになる。
 つまりは、
「金のあるところに、子供を近づける」
 ということで、中で普通はないはずの、
「親の金」
 という子供には何も関係のないことで、無理矢理に差別化させようとするのだ。
 そうなると、金のある子供である、
「坂下君と仲良くしなさい」
 と親が、余計なことで口を挟むようになる。
 それは、親とすれば、自分の子供が一番であってほしいと思うのは当然なのだろうが、それはあくまでも、
「平等な学校」
 でのことであって、ここのように、
「最初から、金で差別化されているようなところでは、長い者には巻かれロという理屈でしか判断できない人が多くなっているのだろう」
 ということである。
 そうなると、坂下少年が、昔でいうガキ大将という形になり、それが次第に、派閥のようになってくると、次第に、子供の世界でも、
「大人の世界の縮図」
 が出来上がってしまうのであった。
 それを思うと、
「大人というものの、ちょっとした一言であったり、損得勘定が、まったく違った道を描いてしまう」
 ということになりかねないのであった。
「本当に世の中って理不尽だ」
 ということになるのだろう。

                 帝王学

 そんな坂下少年の筆おろしをしてくれた女性、
「いつか」
 は、実は、まだ女性大清だった。
 中学生で、まだ子供の坂下少年から見れば、
「相当年上のお姉さん」
 ということで、
「いろいろいけないことを教えてくれるんだ」
 ということで、胸をワクワクさせていたことだろう。
 だが、どちらかというと、
「おねえさんが弟を諭すかのように、少し口調は、厳しかった」
 ということであった。
 だが、実際に、
「自分には、お姉さんがいない」
 ということで、坂下少年は、お姉さんが欲しかったこともあって、いつかに諭されることが、まんざらでも嫌ではなかった。
 いつもであれば、
「俺を誰だと思っているんだ」
 と、自分が偉いわけではなく、親の七光りで、まわりが、静かになるというのを、生まれてからずっと味わってきたので、
「それが当たり前なんだ」
 と思っていたに違いない。
 学校でも、坂下に逆らうものはおらず、何か悪いことをしても、先生は大目に見てくれたり、まわりの大人も逆らうようなことはなかった。
 しかも、
「犯人を特定しなければいけない」
 という時でも、そのあたりは、坂下家の中にある何かの組織が動いて、
「犯人をでっち上げる」
 ということをしていたに違いないのだった。
 そこは、昔の財閥と同じ、
「昭和の世界」
 であり、いわゆる、
「任侠」
 であったり、
「極道」
 という世界が広がっているのかも知れない。
 やはり、
「大切な跡取り」
 ということで、可愛いということだけでなく、
「血を絶やさない」
 という、それこそ昭和の考えをもっていたに違いないのだった。
 二代目社長は、実際には、世間が認める、
「やり手社長」
 で、
「二代目社長うというと、初代の影に隠れていたり、どこか、初代に対しての競争心が先に出て、成果は上げられない」
 と言われるし、それどころか、
「二代目が潰してしまう」
 ということになることが多いのだが、この二代目は初代に勝るとも劣らない、素晴らしい時代を気づいた。
 そこには、
「参謀と呼ばれる、素晴らしい、軍師がいるのが、一番だった。昔でいえば、越後の上杉家のように、上杉景勝の横に、直江兼続がいるということで、上杉家は、没落するどころか、大大名へと変貌した」
 そういう意味でも、この会社に存在する参謀が、先代の、
「教育係」
 であり、その息子が、坂下少年のまた、
「教育係」
 だったのだ。
 その息子も確かにやりてであったが、時代には逆らないのか、一生懸命にやっても、任侠道は今の時代には合わない。先代のようなやり方は通用しないというのは、すでに、
「バブル崩壊」
作品名:悪魔への不完全犯罪 作家名:森本晃次