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悪魔への不完全犯罪

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「どうせ、警察なんて、スナックのお姉ちゃんだと思うと差別的な目で見るんだるな」
 と思い、対応も、明らかに塩対応になった。
 ただ、さすがに、目の前に死体があって、そこで、
「現場検証が行われている」
 ということで、今までに、
「刑事ドラマでは見たことがあるけど、実際には初めてだわ」
 と思っているので、塩対応というのも、限界があった。
 それよりも、
「自分のために、相手を殺すことになってしまった隣人が気になる」
 という雰囲気んあのか、どこか、震えというのか、怯えが消えないようであった。
 それを桜井刑事は察していて、
「それも無理もないことだ」
 と感じていたのだ。
「ところで、あなたは、ここで殺されているこの男をご存じなんですか?」
 と聞かれて、
「ええ」
 と答えると、また口を真一文字につぐんでしまった。
「どういうご関係で?」
 と聞かれたので、
「実は、この男は、借金取りなんです。私は、この男が所属していると思うんですが、そこの金融会社から、お金を借りてしまい。利息を返すのがやっとという状態になってしまったんです」
 というのだった。
「どういう内容かまでは、とりあえずお聞きしませんが、その元本というのはいくらだったんですか?」
 と聞かれて、
「300万円です」
 と答えるではないか。
「なるほど、まとまったお金ですね。それで、何とか利息分だけを返してきたということですが、かなりの利息だったということでしょうね?」
 と桜井刑事が聴いて、その会社名を聴くと、桜井刑事は、心の中で、
「ああ、あの金融業者は危ないわ」
 と思ったのだ。
「どうしてそんな会社で借金を?」
 と言われ、
「実は、前に付き合っていた男が、会社の金を使い込んだので、埋め合わせをしないといけないので、金を貸してほしいといってきたんです。その時、この会社を勧められたんですよ」
 というではないか。
 それを聞いた桜井は、
「ああ、なるほど、相手の男は何もかも分かっていて、下手をすれば、グルだったのではないか?」
 と感じたのだ。
 しかし、それを彼女に伝えることはしなかった。どうやら今は分かっているようだからである。その証拠に、話を進めていくうちに、
「その男とは別れた」
 という話になったので、その男は、すでに、別れることになったのであろう。
 彼女は、そう言って、話をしていたが、桜井刑事には、
「どこか、裏があるのではないか?」
 という風に見えたのだ。
 かといって、まだ何も分かっていない状態で、しかも、正当防衛かも知れないということであっても、実際に手を下したのは、彼女ではないのだから、うっかり突っ込むこともできない。
 もっといえば、
「彼女が何か、事件に関係しているのだとすれば、この時点で、相手を警戒させることになるようなことは、決して許容できることではない」
 といってもいいだろう。
 警察としても、まずは、
「事情聴取」
 ということで、元々の原因を作ったのは、彼女だということも間違いないのだ。
 だから、捜査は、彼女を中心に、行われるといってもいい。
「被害者との関係」
「加害者とは、以前から知り合いではなかったのか?」
 という問題。
 さらには、加害者と被害者がまったく顔見知りだったのか?」
 ということも、問題になる。
「正当防衛」
 というものを主張するのであれば、そのあたりが、白昼に晒されるということがなければ、
「捜査が先に進むことはない」
 といえるのではないだろうか?
 その日の話は、さほど深く入った話ではなかったが、分かったこととしては、それぞれは顔見知りではないということであった。
 ただ、借金取りと、女性は、何度か面識があるだけで、彼女とすれば、
「顔を見るだけで、吐き気を催しそうになる」
 というほど、恐れていたという。
「誰か、他の人に相談でもしましたか?」
 と聞くと、
「いいえ」
 と答えたが、これはあてにならない。警察としては、
「正規の捜査」
 いよって、そのあたりを解明していこうと思っている。
「ウソをついていれば、すぐに分かることだ」
 と思っていたのだった。
 男の方は、さすがに帰すわけにもいかず、署に連行することになった。
 何と言っても、
「人を殺した」
 という事実があるだけに、
「緊急逮捕」
 ということになったが、警察側でも、
「これは、状況から見れば、完全に正当防衛なんだけどな」
 と思っていた。
 もちろん、状況判断での贔屓目に違いないのだが、
「これが正当防衛にならないのであれば、世の中、犯罪者だらけだ」
 と考えるに違いない。
 ということであった。
 世の中、実際に、そんなことになっているということは分かっていて、
「あとは、俺たちは、正当防衛となる証拠を探してくるだけだ」
 ということで、皆、それぞれ、
「正当防衛になってほしい」
 と心の中で思っていた。首脳陣は、検挙率が気になるので、本心までは分からない。
 そんなことで、とりあえず、拘留されることになったが、取り調べといっても、あの状況以上、何も聞かれることはない、ちなみに、
「事件の引き金になった、
「新宮ゆま」
 という女性の話は、河村の供述と、辻褄が合っていないところはなかった。
 もっとも、現場を一番近くで見ていたのだから、辻褄が合うのは当たり前で、
「私が、余計なことをしてしまったので、それが原因で借金をした」
 というだけのことで、彼女の方もある意味、被害者であった。
 その彼氏のことも、もちろん、調査された。確かに借金をしていて、使いこみそうになった時、彼女に相談すると、
「任せて」
 ということだったので、彼女に任せていると、
「まさか、借金をしてまでお金を作ってくれるなんて」
 といって驚いていた、
 その男の方は、別に法律的な罪を犯したわけでもないし、そもそも、警察は、
「民事不介入」
 ということで、男の会社に、チクったりなどすることもない。
 男の方は、
「ロクでもない男」
 ということのようで、最初警察が来た時、
「使い込みのことか?」
 というので、ビビったようだが、
「自分が彼女にお願いしたせいで、殺人事件が起きた」
 というのに、彼女のことを心配するどころか、自分に害がないとでも思ったのか、次第に、話が他人事のような感じであった。
「彼女も可哀そうなことになったのですね」
 という言葉の裏には、
「俺には関係ない」
 ということを平気で言っているというだけのことだった。
 それを聞いた警察も、さすがに、
「何だこいつは、自分のせいで彼女が金を借りたことが、こんな事件を引き起こすことになったのに。そもそも、お前が借金したことが大きな問題なんじゃないか?」
 と、握ったこぶしから、汗が出ているのを感じたのだ。
 しかも、この男は、
「警察が民事不介入である」
 ということを分かっているのか。借金をしたこと、自分が、悪いということを、まったく口にしなかった。
 それどころか、この男、話が終わった後に、
「ああ、ちょっと、彼女から連絡が来るので」
 というのだった。
「もう、他にはないでしょね?」
 と、
「早く話を打ち切りたい」
作品名:悪魔への不完全犯罪 作家名:森本晃次