石ころによる家畜の改造
といってもいいかも知れない。
「これだけ、外人ばかりを贔屓する会社ばかりなんだから、うちのような会社があってもいいではないか」
というのが、上層部の考えであろう。
実は、最近では、宿でも、こういうところが増えてきていると聞いていた。
というのは、
「最初こそ、政府のいうような外人優遇ということをしていると、今はどうか分かりませんが、最初の頃は、日本人のお客様と、トラブルが絶えなかったんです。しかも、施設を平気で汚されたりしていたので、本当に困っていたんですよ」
というではないか。
それを考えると、
「私どもも商売ですから、そんなひどいお客さんをシャットアウトする必要があって、大っぴらにはできないとも思ったんですが、制限せざるを得ないと思っているんですよ」
ということであった。
だから、この宿に来る人も、宿の人も、基本的に、
「政府のやり方」
あるいは、
「政府自体」
に嫌悪感を感じている人ばかりだったようだ。
「インバウンド」
などといって、よく政府は、外人の労働力と、あいつらが落としていく金を当てにしているようで、しかも、それをマスゴミどもが煽っている。
実情を知らない人は、
「ああ、外国人ってありがたいんだ」
というお花畑的発想をしているようだが、一歩間違うと、
「日本の土地を、どんどん外人に買われている」
ということで、密かに問題になっているが、そんなことを、マスゴミも話題にしない。
ワイドショーなどでやっている、
「時事討論」
などの番組で、誰も問題にしようとしない。
それは、まるで、
「話してはいけない」
ということのようだ。
それを思うと、
「苛立ちしかない」
といえるだろう。
今年になって、
「パンデミックが収まってきた」
ということで、また、
「外人観光客が増えつつあるが、日本の将来がまた危機にさらされる」
日本は侵略されていることを分かっていないのは、政府やあマスゴミだけではないだろうか?
いや、分かっているが、目の前の金や利権だけを考えて、
「どうせ、日本の未来なんか、知ったことか」
とばかりに、自分の代でおかしくならなければいいとしか思っていないのかも知れないのだ。
そんなことを考えていると、今回の旅行はありがたかった。
それは、皆同じことのようだった。
そんなことを考えながら、ボーっと動物が無邪気に温泉に入っているのを見ているだけで、癒されてきた。
本当に慣れているのか、サルが、温泉に浸かって、身繕いをしたりしている姿は、実に可愛いものだった。
あんまり見詰めていると、
「さすがにのぼせるわね」
と友達が言いだしたので、ゆいかも、自分の身体が火照ってきているのを感じた。
「そうね。そろそろ上がりましょうか?」
といって、温泉から上がると、二人は身体が思った以上に熱を持っていることにビックリした。
それでも、ここの温泉の効果なのか、必要以上に、熱くなっているわけでもない。
「大丈夫?」
と聞かれて。
「ええ」
と答えたが、
実際には、
「少し、きついかな?」
と思った。
ロビーで、軽くお茶を買って飲んだのだが、これがまたおいしい。
ゆいかは、牛乳が苦手だったので、お茶にしたのだが、正解だったと思っている。
そのお茶というのは、このあたりのオリジナルのお茶のようだった。
「このあたりは、実はお茶も有名なのよ。で、ペットボトルのお茶も、このあたりで生産しているようで、今では、ネット通販などで、全国で注文可能らしいのよ。結構な売り上げがあるというのを、聴いたことがあるわ」
と友達が言っているのを聞いて、ゆいかも頷いた。
お茶を飲んで、一度部屋に帰って、後は宴会まで、ゆっくりすることにした。
「軽く、仮眠できるくらいの時間かしらね」
と、時間的には、三十分はあるということなので、ちょうどいいと思ったので、
部屋に入って、座布団を枕にして、すでに数人が眠っているようだった。どうやら、アラームを掛けているのか、それとも、宴会時間になれば、誰かが呼びに来る手筈になっているのか、皆安心して寝ているのであった。
それを見たゆいかも、安心して、自分も他の人と同じように、早速川の字になった。座布団は、床の間のところに結構余裕な数が置いてある。それを枕に、浴衣の上から羽織るものを掛布団にして、ゆいかは、眠りについたのだ。
「三十分という時間は、仮眠には、ちょうどいいくらいの時間なのだろう」
ということであった。
横になったゆいかは、あっという間に眠りについたようだ。
夢の中で、さっきのサルが出てきて、温泉に浸かっている。先ほどの状況とほぼ同じ夢であったが、夢の中で、
「こんなにも、リアルと同じシチュエーションの夢って、見るものなのかしらね」
と感じたのだ。
実際に、そんな夢を見るということを考えると、
「夢って面白いものだ」
と感じ。この夢に、
「何か意味があるのでは?」
と思った。
そして夢を見ていると、その理由が分かってきた気がしてきたのだった。
夢の中のサルと、目が合った。
「そういえば、さっきのサルとも目があった気がしたな」
と思ったのだが、その時、以前聞いた話を思い出した。
それは、動物園の猿山などのことであるが、
ああいうところは、放し飼いのようにしていて、よく客の食べているものを、サルが、すっと手から奪うということをきいたことがあった。
それだけではなく、言われることとすれば、
「サルと目を合わせてはいけない」
ということであった。
理由は、
「襲ってくるから」
というものであったが、
「それなら、なぜ、最初から柵を張り巡らしたりして、危険を防止しないんだ?」
と思ったが、そこに触れるつもりはなかった。
「危険なら、自分が近づかなければいいんだ」
と感じたからだ。
食べ物を取られるくらいは可愛いものでケガでもさせられれば、誰が責任を取るというのだろう。
そういう意味で、この温泉は、危険はまったくなかった。ガラス張りのところで守られているので、余計にそう感じた。
何と言っても、向こうは野生のサルなのだ。動物園などで飼われているサルなのだ。
それを思うと、普通なら、
「危険極まりない」
ということも、厳重なガラス張りでは、別に意識することもないだろう。
あまり危険がないということで、こちらも安心している。
サルの方も、人間が安心しているのを見ると安心しているのか、怯えている様子がまったくない
それは、サル山のサルとはまったく違っていて、特に、
「無効は集団」
こっちのサルは、
「いるとしても、数匹で、家族なんだろうな」
と思わせる程度であった。
後から入ってきたサルは、子サルを連れていた。
「かわいいわね」
と友達はいったが、考えてみれば、
「もし、子ザルに何かあれば、親サルは必至になって、抵抗を試みたりして、一番危険な状態になるんだろうな」
と、ゆいかは考えた。
作品名:石ころによる家畜の改造 作家名:森本晃次