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石ころによる家畜の改造

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「病気だったら、最初から、それなりの仕事をしろってんだ」
 と考えるに違いない。
 それを思うと、
「仕事なんか」
 と考えるのだ。
 確かに、
「仕事ができる状況なのか?」
 ということになると、
「正直、自信がない」
 特に、
「あなたは、精神病」
 と言われてしまうと、ショックが大きい、
 特にそれを先生からの宣告であれば、たまったものではない。
 ショックというのは、
「仕事がまともにできなくなるのではないか?」
 という思いであったり、
「人から謂れのない差別を受ける」
 ということが溜まったものではない。
 ということ。
 さらに、
「自分で自分を嫌になるのではないか?」
 という思いであった。
 最初の二つは、仕方がないことであり、
「他力本願」
 でしかないかも知れないが、最後の一つはそういうわけにはいかない
 自分を嫌になることは、何とか抑えられそうな気がするのだが、実はこれが一番難しいようだった。
 というのも、
「考えれば考えるほど、きつくなるのだった」
 鬱状態というのは、
「自分の意識を強く持てば持つほど、自分の意思とは正反対の結果になってしまうことで、自信喪失を加速させてしまう」
 ということになるのだった。
 それを思うと、
「俺が、こんな精神疾患になった原因というのは何なのだろう?」
 と考えるのだ。
「病気なんだから、しかも、これが精神疾患となると、自分でも分かりそうな何かがあるはずだ」
 と考える。
 しかも、それは、まわりの人に分かるものではなく、先生にも分からない気がしていた。
「もし、分かるとすれば、催眠療法でもして、俺の潜在意識か何かに訴えなければいけないんだろうな」
 ということであった。
 そんな精神疾患を感じるようになって、実はしばらくは本人にも分かっていなかったのだが、
「石ころのように、存在感を消すことができるようになったのかも知れない」
 ということであった。
 これは、きっと、潜在意識のなせるわざであり、やはり、
「夢うつつの中にいる」
 ということなのかも知れない。

                 モンスターピアレント

 ゆいかは、宴会が終わると、今度は、
「滝が見える露天風呂がある」
 ということをきいたので、行ってみることにした。
 友達を誘ったが、
「怖そうなので、私はやめとくわ」
 というのであった。
 誘ってはみたが、本当は、
「一人で行ってみたい」
 という気持ちだったので、ゆいかの中では、何となく一安心という気持ちだったのだ。
 本当は、怖いところではないという話だったが、ゆいかが意識的に、
「その場所は怖いところであるかのような」
 そんな話し方をしたのだった。
 ゆいかは、
「一人になりたい」
 ということよりも、
「友達と離れて一人でいたい」
 ということの方が強かった。
 だから、そこに誰かがいても、それはそれでよかったのだ。
 しかも、この滝が見える露天風呂は、
「混浴だ」
 という。
 友達は、とにかく潔癖症なところがあるので、
「混浴など、もってのほか」
 と思っていたようだ。
 だから、もし、
「怖いところ」
 というのが通用しなければ、
「混浴なんだけど」
 といえば、最終的についてこないと思ったのだ。
 そこまで、この時のゆいかは、友達と離れて、自分がどんな心境になるのかということを考えてみたかったのだろう。
「その心境がどういうものなのか?」
 ということを自分で分かったわけではない。
 分かる分からないは別であるが、余計なことを考えずに、ゆっくりするには、
「友達の存在」
 というものが、邪魔だったといってもいいだろう。
 一人になったゆいかは、
「あの露天風呂は、他の露天風呂から比べても遠いので、夜は、あまり行かれる方はいませんね」
 ということを、女将さんからも聞いていたので、一人になるにはちょうどよかった。
「獣が出てきたりとか、怖くないですか?」
 と聞くと、
「それは大丈夫です。まわりから、動物が入ってこれないような仕掛けはしています」
 ということであった。
 ゆいかは、女将さんの話を信じて、それで行ってみることにしたのだった。
 時間的には、午後9時くらいだった。
 普段であれば、
「まだまだ宵の口」
 というくらいであった。
 都会に住んでいれば、これくらいの時間は、まだまだ明るいし、どうかすれば、電車も座れないほどの乗客であったり、道も、やっと、帰宅ラッシュが落ち着いたといえるくらいの時間なのではないか?
 と言われる時間だった。
 しかし、ゆいかは、数か月前まで、駅の階段から足を踏みはずして、数週間の入院を余儀なくされたことで、
「ちょうど病院だったら、消灯時間だわ」
 ということを思い出すのだった。
 消灯時間になっても、入院当初は、
「眠れるわけないわよね」
 と、なかなか、病院の時間に慣れるまでに、苦労があった。
 食事の時間も決まっていて、夜は、5時間には食事が出てくるというものだ。
 だから、夜中にお腹がすく。
 特に、病気というわけではなく、骨折した脚以外は、ほとんど、何もないのだ。
 そうなると、健康な胃袋で、年齢的にも、腹が減る世代なので、空腹は耐えられなかった。
 病院内の、売店で、売店が開いている間に、食料を購入し、密かに食べていることもあったのだ。
「身体は健康なのだから、しょうがない」
 と看護婦も、
「見て見ぬふり」
 というのをしてくれているという状況だった。
 それでも、その状態において、次第に慣れてきた。
 一週間もしないうちに、午後9時くらいになると、眠くなってくるというもので、
「私って、こんなに順応性が高かったのかしら?」
 と感じた。
「夜中に何かを食べたくなる」
 ということも減ってきた。
 一応、食料はキープしているのだが、
「お腹が減ったら、食べるものがある」
 ということを分かっているからなのか、安心していた。
「別に食べなければ食べないで、我慢できないということもなくなった」
 と思ったことで、眠気もしてくるのであろう。
 それを思うと、病院に入院している間の数週間は、病院のリズムに、しっかりと順応していたのだった。
 リハビリを経て、退院すると、少しの間、会社にもいかなかった。
「足手まといになる」
 ということを分かってもいたし、会社にも、焦っていくこともないと思っているのであった。
 ゆいかは、正直、この会社に未練があるわけではなかった。
「何も自分がいなくても、別に何かが変わるわけではない」
 ということを考えるようになったからだった。
 だが、それでも、会社にいるのは、
「気心知れた友達。そう、今回一緒にいる友達がいるからだった」
 彼女とは、同期入社で、部署は違ったが、相談事があると、遠慮なく話ができる相手だったのだ。
 どちらかというと、相手の相談の方が多かった。
 そして、その内容の深さも、彼女の方が、深刻だったといってもいいだろう。
 そんな彼女であったが、最近、相談事が減ってきた。
 最初は分からなかったが、どうやら、
「彼氏ができた」
 というのが、その理由のようだった。