石ころによる家畜の改造
というものを、会社の行事である、
「忘年会」
などで、茶を濁したくないと思うのであった。
そういう意味で、正直、
「忘年会など、慰安でも何でもない」
と思っている。
まだ、昔の人の話のような、
「俺の酒が飲めんのか?」
というようなことがない分、まだマシだといえるのではないだろうか?
そんなことを考えると、
「嫌なら行かなくてもいいんじゃないか?」
ともいえる。
中には、
「強制ではない」
ということで、行かないという人も多かったりする。
言ったとしても、酒が苦手な人であったり、車で来る人は当然、飲酒できないので、ある意味、
「呑まなくてもいい作戦」
ということで、わざと車で来る人もいる。
これは、上司からすれば、
「あかあらさまな上司への批判」
であり、部下はそんなつもりはなくとも、却ってそう思われるという、弊害だってないとはいえない。
確かに、今の時代は、
「コンプライアンス違反には厳しくなっては来ているが、だからといって、ブラック企業が姿を消すということはなく、下手をすると、もっとひどくなっているのかも知れない」
といえるだろう。
下手をすると、
「相手が変わっただけ」
といういじめ問題と同じで、ターゲットを変えただけの、一種の、
「いたちごっこだ」
といってもいいだろう。
それだけ、
「上下の関係も複雑になり、関係性が難しくもなってきた」
といえるのだろう。
そんな問題がある中で、男は、女将に話したところによると、
「仕事は適当ですよ」
と話したという。
ただ、気さくな性格ではあるようだが、相手を選んで話をするということのようだ。
嫌いな人間というのは、人それぞれに、一人はいても、不思議はない。
だが、彼に関していえば、
「一定数の嫌いな人はいる」
といっていた。
特に、会社で話をする人は好きにはなれないということであった。
「皆、コンプライアンスに怯えて、パワハラ、セクハラは、少なくなったようだけど、影で、何も言えない人をターゲットにして苛めていることがあるんですよ」
と言った。
それこそ、
「闇」
と呼ばれるもので、本当は笑い事ではないと本人は言いながら、
「病みが闇に引っかかる」
といって、笑っていた。
その表情は引きつっていて、心底笑っているわけではない。
女将はそれを分かっていて、同じように、引きつって笑っていた。それが、返す返事としては、正解だと思っていたのだ。
秋月という男は、会社では、システム関係の仕事をしているという。
「本当なら、もっと機密の部署で働けば、出世もできるんだろうけど、自分から、出世は望まずに、システムといっても、
「それぞれの部署のシステムを開発する」
というような、そんな仕事をしていたのだ。
以前は、
「アウトソーシング」
のようなことをしていたようだが、
「内部で開発できる人がいないと、何かあった時に、即座の対応が遅くなる」
ということで、このような部署が新設されたのだという。
そもそもであれば、アウトソーシングでも、よかったのだが、例の、
「世界的なパンデミック」
のせいで、
「テレワーク」
が多くなったことで、事務所に詰めてるわけではなく、自宅から直接赴くということになってから、会社がかなり遠くなったのだ。
しかみ、彼の会社は、夜間も稼働しているので、夜間にトラブルがあると、致命的な問題になりかねない。
しかも、仕事内容が、
「加盟店のシステム開発を請け負っている会社なので、その保守を行う必要がある」
ということになるのだ。
そのため、機械トラブルがあれば、即行で対応することになるので、そのため、実際に、このパンデミックの機関というのは、
「数回、いや、年間で数回のトラブルが発生し、その都度、賠償金問題が発生していた:」
というのだ。
しかも、これが続くようであれば、
「システム関係の会社を他に変える」
とまで言われていた。
会社にとっての一番の得意先である、この加盟店から切られると、
「会社の存続問題となりかねない」
というところであった。
それを考えると、
「フットワークが軽そうな社員を数名、必要とする」
ということで、数名が、システム開発から、そちらの、
「保守に回る」
ということになったのだ。
「一人でできる」
ということで、自分から立候補した。
「もし、できない時は、自分の判断で、メーカー保守を呼んでいい」
ということだったので、引き受けたのだった。
そんな彼は、最近の仕事にいろいろと疑問を持つようになった。
会社というよりも、仕事に対してであり。
「自分でなくてもいいのではないか?」
という思いが強かった。
本当は彼としては、
「開発の仕事」
の方がよかったのだが、少し身体の怖し、病院に行くと、
「これは精神的なものから来ている可能性が高い」
ということで、精神科の病院で診察を受けてみると、何やら、難しい名前の精神疾患だった。
「体調が悪いというよりも、やる気が出なかったり、人と絡むことを嫌に感じるというのは、その病気のせいです。その病気は薬の登用は不可欠なので、お出しする薬は必ず、服用してください」
ということだった。
「あなたも場合はまだ軽いので、お仕事もできますが、ひどい人は、仕事もできずに、障害者年金で生活する人もたくさんいるですよ」
ということであった。
そして、もう一つ言われたのが、
「どうしても、薬ですから、副作用も起こりやすいです。もし、薬を飲み始めて、何か今までになかったことが起これば、服用をやめず、私に相談してください。場合によっては、薬の種類を変える必要があるかも知れませんからね」
ということであった。
そういわれて呑み始めた薬だったが、案の定少し副作用があった。
「とにかく、薬を飲んで、一時間もしないうちに、眠くて仕方がなくなり、仕事どころではなくなってしまうんですよ」
といって相談にいくと。
「わかりました。薬を変えましょう」
ということになった。
「それに、最近は、人といるのが億劫になり、一人でいることが多くなったんですよ。ほんとは人といることも嫌いではないんですが、これも病気の影響で消火?」
と聞くと、
「そうですね、それが、病気の本来の反応ですね。とりあえずは、今の心境に逆らうことなく、一人がいいと思っているのであれば、そうすればいいですよ。たぶん、今の感覚は鬱状態なのではないかと思うので、何をするにしても、身体が重かったり、何もしたくない。あるいは、何もできないという状況に陥っても、無理もないことですからね」
ということであった。
会社には、精神科に通っていることは言っていない。
それは、彼のプライドというものもあるが、
「謂れのない差別」
と受けるのが嫌だった。
というのは、
「もし、自分が逆の立場だったら、まわりに精神病の人がいると、鬱陶しいと思わないとは限らない」
と思ったからだ。
「差別をしてはいけない」
と思いながら、チームで仕事をしているのであれば、足を引っ張るやつに、いくら病気であっても許せない気持ちになるというものだ。
作品名:石ころによる家畜の改造 作家名:森本晃次