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可能を不可能にする犯罪

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 と称して、子供に取り返しのつかないくらいにトラウマを植え付けるような苛めであったり、もっとハッキリといえば、
「虐待」
 である。
 児童相談所と、自治体が本来であればタッグを組んで、対応しなければいけないのに、
「さすが、お役所仕事」
 というべきか、前々から
「危ない」
 と言われていたのに、情報共有に一か月近くも掛かったことで、本来なら、もっと前に訪問しなければいけない状況の数日前に、
「その子供が親から殺される」
 という事件が起こったこともあった。
 これこそ、警察にも言えることであるが、特に警察は、
「何か事件が起こらないと動かない」
 のである。
 つまり、警察しかその権力がないのに、その警察が動かないのだから、
「本末転倒も甚だしい」
 ということになるだろう。
 それを思うと、
「皆、ただの税金泥棒だ」
 と言われても仕方がない。
 捜査が進んでいく中で、今度は、被害者の交友関係を探っていると、その中で、一人が行方不明になっているのが分かった。その人は名前を川久保武蔵と言った。それを聞いた桜井警部が、
「川久保武蔵?」
 といって、大げさに反応したのだった。
 それには、さすがに、門倉刑事もビックリしたのだった。
「どうかされたんですか?」
 というと、
「ああ、嫌、その名前に聞き覚えがあったからね。そいつはどういう人間なんだい?」
 と、聴かれた門倉刑事は、
「この男は、芸能プロダクションの社長で、かなり、ブラックなことをやっているということです。実は、最重要容疑者である松重そらが、最初に所属していた事務所で、そこで、一時期だけタレントとして所属していたようなんですが、よくある、枕営業をさせられそうになって、それが嫌になって辞めたんだそうです。それで、脚を洗わせるのに、今回の事件で被害者となった神崎と、今の彼氏である細川が、協力して辞めさせたということのようでした」
 それを聞いた桜井警部は、
「なるほど、そういうことでの三角関係ということもあったのかな?」
 と聞かれた門倉刑事は、
「それはそのようですね。というのも、当然、二人とも、彼女に対して、恩を売ったという気持ちになっているでしょうから、必ずどちらかは、少なくとも選ばれないということになるわけなので、お互いに、気まずくなるのは、当たり前だというものですね」
 という話をした。
「だが、表向きはそんなことはなかったわけだろう」
 という桜井警部に、
「それは、もちおん、そうでしょうね。選ばれたのは、細川の方でしたが、だからといって、神崎が、二人から離れて行くということはなかったようです。まわりは、神崎を称えていましたがね。でも男心というのは、そんなに、一刀両断で考えられるものではないですからね。心の底では、何を考えているのか、分かったものではない」
 ということだったのだ。
 それを聞いて、桜井警部も、顔をしかめていた。
「それで、私がなぜ、川久保を知っているのかというと、私が以前、少年課で部長をしていたことがあったんだが、その時にも、川久保の名前が挙がっていて、「悪徳プロダクションのとんでもない社長だ」ということで、内定を進めていたりもしていたんだよ」
 というのだった。
 さらに、一瞬水を飲んで話を続ける。
「川久保に関しては、とにかく悪いウワサしか聞かない。枕営業くらいのことは平気でするだろうし、バックには、当然やくざもついている。やくざを手玉に取るくらいのことは平気でやるやつで、それは、お金を持っていたからなんだよ。その頃のやくざは、任侠というよりも、金に弱かったからな。特に我々警察が、ある事件がきっかけで、世間が騒いだことがあったんだが、警察も、知らぬ存ぜぬでは、通用しなくなってきたので、警察としても、本気で捜査をしないといけなくなったわけさ。しかも、その時、警察と、やくざの癒着というのもあり、それが明るみに出たことで、世間も警察を攻撃するので、最初は、
やってますアピールで茶を濁せばいいと思っていたのだろうが、そうもいかなくなった。だから、やくざも、悪徳会社も、一斉に謙虚だよ。裏で暗躍していた連中も捕まって、しかも、その中には警察が、絡んでいるということもあって、警察は一度隠ぺいを図ったのだが、それが、また明るみに出て、警察の面目は丸つぶれになったうえに、やくざから金も入ってこないばかりか、犯罪者として、二度と警察の仕事ができなくなったというわけだよ」
 というので、
「そもそも、そんな連中が警察内部にいたなんて。しかも、その時の大規模な事件の首領が、今回の事件に関わっているかどうか分からないが、行方不明になっているということは、何か胡散臭いものを感じますね」
 と門倉刑事はいった。
「そうなんだよ。まさか、やつが絡んでいるということになると、マスコミの中には、当然、この名前を憶えている人も多いだろうから、騒ぐ前に、緘口令を敷かないといけなくなるんじゃないかな?」
 と桜井警部はいった。
 何と言っても、今回の事件と、この大物悪徳プロダクション社長が、いかに関わっているかということが大きな問題なのである。
 そんな男が行方不明になっていることが、この事件にどう関係しているのか?
 ということになるのだが、
「実は、この川久保という男の捜索願を出していたのは、今回の被害者である神崎だったんですよ」
 というではないか?
「それはどういうことなんだ? そもそも、捜索願を出したということは、行方不明になられては困るということで、二人を結び付けているのは、どうも、三角関係にあった女性の、松重そらが共通点となっているだろうから、この事件のカギを握っているのは、やはり、この松重そらということになるのだろうか?」
 と、桜井警部はそういった。
「その、川久保という男は、そんなにひどかったんですか?」
 と門倉刑事が聴くが、
「そうだね、本当に殺されても仕方がないと思えるほどで、やつを恨んでいた人は数知れないかも知れない。そういう意味で、やつが死んでいたとすれば、その犯罪捜査は、よほど分かりやすい事件でもない限りは、犯人逮捕は難しいかも知れないな」
 と桜井警部が言った。
「それはどういう意味でですか?」
 門倉刑事が聴くと、
「やつは、結構、法律の網をくぐるということがうまかったんだ。ただ、それは、やつが頭がいいというよりも、その裏にフィクサーのような存在があると言われているんだ」
 と桜井警部がいう。
「影の存在ということですか?」
 と聞く、門倉刑事に対して。
「そうだね、決して表には出てこないが、そんな男の存在があるということは、内偵を進めていると分かったんだ。だけど、正規の捜査というわけではないので、公式に捜査ができないので、それが誰だか分からなかったんだ」
 と桜井警部はいう。
「そんなひどいやつがいたんですね? 今度の捜索願が出ていることで、少しやつのことを捜査できるかも知れないので、少し探りを入れてみましょう」
 と、門倉刑事がいうと、
「ああ、そうしてもらおう」
 と、桜井刑事は、この悪徳会社の社長捜索も、捜査の中に含めることにした。