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可能を不可能にする犯罪

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 そこで早速、門倉刑事は、この悪徳企業に赴いてみるのだった。
 会社は、
「芸能プロダクション」
 ということだったので、当然、俳優やアイドル、その他の有名な人が所属している、それなりのところだろうと想像していたが、まったくその期待(?)を裏切られたのであった。
「名前は、川久保プロダクション」
 ということで、格好はいいのだが、どうも、事務所に行っただけで、胡散臭さ満載のところであった。
 まず、ビックリさせられたのが、事務所が入っているビルだった。
 芸能プロダクションが入っているビルにしては、あまりにもお粗末だ。
 入り口の集団ポストは、マンションのそれという感じよりも、戦後の住宅事情が悪かった頃に作られた、
「公団」
 という、いわゆる、
「団地」
 のそれに近いものだった。
「まるで汚いな。蜘蛛の巣が張っていそうじゃないか」
 と感じた。
 しかもプロダクションのポストからは、郵便物が溢れんばかりにポストに突っ込まれていた。
 ただ、それは、よく見ると郵便物ではなく、お店や、会員募集というチラシのようなもので、ポスティングによるものが、
「これでもか」
 と言わんばかりに、ポストに突っ込まれているのだった、
「一体どういうことだ?」
 と半分、嫌な予感を覚えたが、ビルのエレベーターの前に行ってみると、企業の看板が見えた。
 金融会社であったり、怪しげな探偵事務所のようなものであったりと、本当に胡散臭そうな名前が並んでいる。
 それは、
「このビルが、もっときれいなビルであっても、いや、綺麗なビルであった方が余計に、胡散臭さを感じるというものだ」
 と門倉刑事は思った。
「こんな胡散臭い連中が入るなら、こんなビル」
 という意味では、
「これほどふさわしい場所はない」
 ということであり、だんだん、嫌な予感が的中してくるのを感じた。
 その嫌な予感というのは、二つあった。
 一つは、中に入るや否や。明らかに警察というものを毛嫌いし、まったくといっていいほどの、
「警察には、非協力的な連中ではないか?」
 ということであった。
 そして、もう一つは、
「幽霊会社なんじゃないか?」
 ということであった。
 これだけのひどいビルであれば、家賃も安いだろうし、何かの目的をもって幽霊会社とするのであれば、
「そこに、何か詐欺のようなものが潜んでいるのではないか?」
 と感じたのだ。
 その詐欺というのは、家賃を払ってでも利益が出るのだろうから、それなりに、
「危ない橋なのかも知れない」
 というものであった。
 その危ない橋というものに関して、今の時点で想像もつかなかったのだ。
 門倉刑事はエレベーターで目的に階に着き、表に出ると、案の定、通路は暗かった。電気がついていないということは、
「嫌な予感が当たったか?」
 と思うが、そのどちらも嫌ではあったが、
「避けて通れない」
 ということに間違いはなかったのだ。
 門倉刑事が、そのまま通路を進むと、ゾッとする気持ちが、悪寒に変わり、捜査でなければ、気持ち悪くて帰りたくなることだろう。
「刑事の俺たちまで気持ち悪いと思うんだから、普通に訊ねてくる人が本当にいるんだろうか?」
 ということであった。
 となると、ますます、嫌な予感が絞られてくるようで、行ってみると、
「これは、どうしようもないな」
 と入り口から見える扉についた、すりガラスからは、光が漏れていなかった。
 実際に、呼び鈴を押してみたが、中から誰かが出てくる気配がしない。
「やっぱりな」
 と門倉刑事は、少しそこに佇んで、誰かの反応がないかを待ってみたが、誰も出てくる気配もない。
「幽霊会社なんだろうな」
 と、最初に感じた思いの、
「悪い方の嫌な予感」
 というものが的中してしまったことに、失望を隠せなかった。
 しかし、分かっていたことではあった。
 そもそも、社長が失踪して、その捜索願を出すのは、本当なら、会社の人なのだろうが、それもされていない。
「となると、幽霊会社なのか?」
 と思うべきだろうが、そうなると、疑問が山ほど出てくる。
「じゃあ、いつから幽霊会社なんだ?」
 ということだ。
 この会社がいつから、会社として機能していて、少なくとも、松重そらが所属していた時は、その実態があったというのは、十分にありえる。
 しかし、そのくせ、
「枕営業」
 という、それこそ、
「胡散臭いことをしている」
 ということなので、その仕事内容は、どうしようもないということであり、その胡散臭いことになったことで、坂道を転がり落ちるというようなことになったと考えられるのではないだろうか?
「ということは、社長の失踪というのは、
「会社が傾きかけたから」
 というよりも、会社の問題ではなく、個人の問題なのではないかと感じたのだが、それは、松重そらが、枕営業をさせられて辞めたという時期から、結構経っているからではないだろうか?
 いったん、傾きかけると、潰れることになるまでは、結構、坂道を転がり落ちるというたとえのように、どんどん加速していき、最後には、影も形もないほどに、粉砕されるということになるのではないだろうか?
 それを考えると、
「この会社、ずっと昔から、幽霊だったのではないか?」
 と感じた。
 門倉刑事は、早速、その場を離れると、彼が、内偵に使っている男に連絡を取り、その男に、この会社のことについて探らせてみた。
 すると、案外早くそのことは分かったようで、
「旦那、あの会社、かなり前から、幽霊会社になっているようですぜ」
 という。
 分かっていたこととはいえ、
「それは、どういうことで、なくなってしまったんだい?」
 と聞くと、
「あの会社は、方々にいい顔をして、それで何とか資金を調達していて、それを運営として回すだけの会社だったんですよ」
 という。
「それじゃあ、あっせんだけの会社で、実際に、会社でアイドルを抱えていたというわけではないと?」
 門倉刑事が聴くと、
「ええ、ただあくまでも、所属はプロダクションになっていたんですが、何か悪いことをやろうとすると、その間に、変な会社が挟まってくるのは当たり前ということで、その隠れ蓑のような会社として運営したのが、このプロダクションというわけです。だから、ここの取締役になっている連中は皆、幽霊のようなもので、会社組織を作るだけのために、存在してただけなんですよ。そういう意味で、ここの社長も本当に胡散臭く、ある意味名前だけを貸していたようなもののようですね」
 というと、
「でも、この事務所に所属していて枕営業を強制された女の子が辞める時に、面会しているはずだが」
 と聞くと、
「だけど、本人だったかどうか。誰も分からないでしょう? きっとやくざまがいの探偵や、表に出られないような悪徳な弁護士などが、やっていたんでしょうね。もっとも、弁護士という商売は、そもそも、そんなうさんくらい連中が多いということになるのだろうから、そうであっても、別に不思議には思いませんけどね」
 というのだった。
 なるほど、弁護士というのは、
「勧善懲悪」
 なわけではなく、彼らの本質は、
「あくまでも、依頼人の利益を守る」