小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

三つ巴の恐怖症

INDEX|16ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

 だが、ある日、いちかの中で、一つの病気のようなものが発覚したことが、
「いちかの人生の、分岐をあたえた」
 といってもいいだろう。
 彼女の身体が弱いことは、前述でも書いてきたが、その分、彼女には、
「他の人にはない」
 と言われる不思議な力が備わっていた。
 その力は、本人もよくわかっていないほど、的を得ることのできない大きなものだった。
 それは、
「あまりにも近づきすぎると、綺麗に見えるものも、見えなくなる」
 という感覚に似ていて、
「富士山を見る」
 という感覚に似ているのではないだろうか?
 要するに、
「灯台下暗し」
 とでもいおうか、見えているのに、近すぎて見えないという、一種の、
「石ころ」
 という発想に似ているのではないだろうか?
 そして、その石ころという存在こそが、
「相手に自分の存在を悟られないようにする」
 というものであり、その方が、
「曖昧な中に隠すにはいい」
 ということだろう。
 それは、一種の
「保護色」
 のようなものであり、それは、動物の中に、
「防衛本能」
 に結びつく特性ということになるのだろう。
 しかし、人間には、
「防衛本能」
 というものはあっても、そんな保護色のような機能が備わっているわけではない。
 それよりも、
「曖昧さ」
 ということで、相手に悟られないようにして、相手を騙すということで、こちらの身の安全を確保しようとする、
「頭を使ったやり方」
 というものが必要になってくるということであった。
 人間にとっての本能の凝縮のようなものが、
「この街の診療所には、存在している」
 といっていいだろう。
 この街における診療所というところは、そんな曖昧で、相手を欺いておいて、そして、「こちらを見えなくするというか、意識させない、石ころのような存在に見せておいて、何かの計画を暗躍する」
 ということになるのだろう。
 その暗躍というものが、進行していたのかということは定かではないが、その中で、暗躍しなければいけない立場だったものが、表に出てこようとするものの影響で、その機能があらわになってきた。
 それに気づく人は、いなかっただろうが、
「あんなところに、おかしな診療所がある」
 ということを、次第にたくさんの人が意識するようになるのだった。
 というのも、
「最初こそ、本当の石ころであり、目の前にあっても、その存在をまわりに意識させない」
 というような、保護色と照らし合わせても、そん色のないという、そんな存在だったのだが、次第に、そのメッキが剥がれていくように感じられたのだった。
 そのメッキというものがどういうものなのか、それを誰も気にしようとはしない。それが、
「診療所の曖昧さ」
 なのかも知れない。
 どこか、捉えどころのないその雰囲気に、次第に見えているのに感覚がマヒしてきているように思うのは、それは、最初にいきなり強烈なインパクト、いや、快感のようなものを植え付けて、その感覚を忘れてしまいそうになるのを、
「忘れたくない」
 という思いに集中させることで、肝心な部分への感覚をマヒさせるというやり方だってあるだろう。
 人間にとって、強烈な快感は、
「身体の感じる一部に集中させるのが、効果的だ」
 ということである。
 その感覚があるから、
「男と女は、馬鍬うことができて、子孫にその血を受け継いでいかせる」
 ということが可能なのだということになるのだろう。
「そんな快感というものを、いかに持続していくか?」
 ということで、
「人間だけではない、どの動物にも備わっている」
 ということなのだろうが、
「人間のように、反射的に行動するわけではなく、そこに思考というものが絡んでいる」ということで、人間にとって、
「何が大切なのか?」
 ということを考える必要が、きっと、どこかにあったのであろう。
 それを考えず、
「もちろん、考えなければいけない」
 という意識はあったに違いないが、それを考えずにきてしまったため、この診療所というところは、
「どこかで、何かのクーデターなるものでも起こさないと、その存在意義が失われてしまう」
 ということになるのだった。
 だから、このクーデターは、
「起こるべくして起こったクーデターだ」
 といってもいいだろう。
 しかし、クーデターだといっても、実際に、兵器を手にして戦うようなクーデターではなかった。
 内容は、
「軍事クーデター」
 に変わりはないが、やってのけたのは、いわゆる、
「サイバークーデター」
 といってもいいだろう。
 コンピュータサーバーの中に入り込んで、相手のコンピュータに重大なバグを起こさせ、その混乱に乗じるというのが、
「サイバーテロ」
 というものだ。
 だから、ここでいう、
「サイバークーデター」
 というのも、
「サイバーテロ」
 と内容的には、さほど変わるものではないだろう。
「テロが、クーデターに変わっただけだ」
 と言ってしまえばそれだけだが、
「その内容は、実際に起こったこととしては、まったく違ったことになるのかも知れない」
 といっても過言ではないだろう。
 そんな
「サイバークーデター」
 というものに、この街にただ、療養に来ているだけの、一人の女の子が絡んでいるというのはどういうことなのだろうか?
 彼女にはどんな秘密があり、その秘密が、この暗躍するために作られた、
「最重要国家機密扱い」
 というものにされた組織を、クーデターに導くことができるというのは、一体。どういうことなのだろうか?
 実際に、いちかという、
「まったく、診療所とは関係なく、あんなところに診療所なんてあったんだということを後になって知ったくらい」
 という女の子が、果たしてどのような影響を、この診療所に与えるというのだろうか?
 それを思うと、この世界が、どのように暗躍していたのか?
 ということを知ることになるだろう。
 それを示すのは、果たして、
「いちか」
 なのだろうか?
 それとも、この診療所内部からの、
「内部リークなのだろうか?」
 まさか、意外や意外、
「ここをひた隠しにしたい」
 とずっと考えていた、
「国家内の誰か」
 ということになるのだろうか?
 今まで、まったく療養所とは関係ないと思われていたいちかが、なぜ、どうして療養所とかかわりになったのかということは、誰も知らなかった。
 そもそも、今でも、いちかが療養所と関わっているということを知っている人は、ほとんどいないだろう。
 別に隠しているわけではないが、いちか自体があまり目立つタイプでもなく、それだけに、誰も、いちかのことを気にしようとは、思ってもいなかったのだろう。
 それだけ、療養所や、保養所の近くと、それ以外の場所とでは、まったく雰囲気の違ったとことだと言っても過言ではないだろう。
 それを思うと、
「この街に住んでいる人は、他の街とあまり変わりはない」
 ということで、それでも、この街に、こんな施設が偏っているというのは、後にも先にも、考えられることとしては、
「自然環境が整っている」
 というだけのことだった。
 最優先としては、自然環境で、それ以外のところでは、
作品名:三つ巴の恐怖症 作家名:森本晃次