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後味の悪い事件(別事件)

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「通勤する人が少なくなった」
 ということは、会社の近くで飲み屋であったり、カフェなどを営んでいるところは、絶対的な客が減るわけだから、
「大きな痛手」
 と言ってもいいだろう。
 特に、飲み屋などの、
「夜の飲食店」
 というところでは、
「休業要請」
 であったり、
「時短要請」
 などということが、平気であった。
 しかも、
「休業要請中」
 というのは、
「酒類の提供はしてはいけない」
 というものであった。
 しかも、時短中は、
「午後九時まで」
 などということを時短要請されてしまうと、
「開店時間が午後七時なのに、これでは、営業時間は2時間ということになる」
 というものである。
「客の回転はありえない」
 ということになり、客の方も、
「午後九時までというのであれば、何も会社の帰りに呑んで帰ることもない」
 ということで、
「家呑み」
 というのが、主流になってくるというものだ。
 それが、当たり前のこととなり、残業などありえないのだった。
 ただでさえ、
「仕事に必要な最低限の人しか出社しない」
 というわけなので、
「9時まで店を開けるくらいなら、休業して、支援金を貰った方がいい」
 ということになるのも、当然と言えただろう。
 そんな店が多い中で、やはり、常連客を持っている店は強かった。しかも、
「夜の店」
 という形のところは、どうしても、
「酒類販売」
 というものを制限していた時期があったことで、どうしても、その期間、
「ないなら、しょうがない」
 ということで、
「ちょっとの時間でも、寄ろう」
 という人であれば、
「時短解除」
 となれば、店で呑もうと思うのだろうが、
「家呑み」
 あるいは、
「ネット飲み会」
 なるもので満足できるようになると、わざわざ会社の帰りに寄ろうということもないだろう。
 それまではそこまで意識していなかった、
「帰宅時間」
 というものが、遅くなればなるほど、自分も億劫だし、家族としても、
「予定が立たない」
 ということで、不満があったことだろう。
 しかも、何と言っても金がかかる。
 毎日、数千円かかっていたものが、家呑みであれば、つまみ代と合わせても、数百円で楽しめるとなれば、
「外で呑むのは、たまにでいい」
 ということになる。
 さすがに、びったりと辞めてしまうことはなくなるだろうが、回数をグンと減らすことで、それだけ、店の客は、激減してしまうということだ。
「そろそろ潮時」
 ということで、店を閉める人も増えてきて、
「飲み屋街も、閑古鳥が鳴くようになった」
 と言ってもいいだろう。
 ただ、そんな中で、昼間の営業は、却って盛況だった。
 昼間に時短もなければ、アルコールの提供もないので、まったくと言っていいほど、営業体制に問題はなかった。
 しかも、商店街の打ち合わせも、数人であれば、この店を使ってやるということも可能だった。
 ランチタイムさえ外せば、ゆったりと会議ができる。店もありがたいし、商店街も助かるというものだった。
 さらに、商店街の会合に使ってもらえるということで、他のサークル的なものの会合にも使ってもらえるようになり、一種の、
「アフタヌーンミーティング」
 というような形も多くなってきたのだった。
 中には、ここで、
「合コン」
 のようなものをする人も出てきて、時々、貸し切りで、行うようになり、流行出したのだ。
「今は、こういうことができるお店は減ってきましたのでね」
 ということで、マスターとしても、
「これまで、経営方針を変えずにやってきてよかった。
 という感じになってきたのであった。
 確かに、今主流のカフェでは、数人であれば、会合はできるだろうが、
「イベント」
 ということになると、まずは、できないだろう。
 何と言っても、
「客の回転数」
 というものが、そのまま収益に関係してくるのだ。
 十名前後くらいの客で数時間貸し切りにするなど、カフェからすれば、
「ありえないことだ」
 ということになるだろう。
 こんな喫茶店に、最近アルバイトで入った女の子が、実に転身欄間な女の子だった。Mスターの娘も同じように天真爛漫だったので、
「まるで双子みたいだな」
 と言われていたが、実際にそんなに似ているというわけではなかった。
 名前は、
「新宮かすみ」
 という女の子だったが、彼女には、一つ問題があり、
「アレルギー体質だ」
 ということであった。
 ナッツのようなものにアレルギーがあるようで、
「大丈夫ですか?」
 と、面接の時に聞くと、
「大丈夫です。摂取しなければいいだけですから」
 ということであったので、マスターも彼女を雇うことにした。
 当然、自分がアレルギー体質だということを認識しているということもあって、そのあたりの常識は、ちゃんと分かっていて、その分、人にも教えられることから、
「アレルギー関係のことなら、かすみちゃんに聞けばいい」
 という話もあったくらいだ。
 もっとも、マスターも、喫茶店を営む上での基礎知識としてある程度は分かっていたが、さすがに、リアルに危険と背中合わせの相手ほど、真剣に付き合っているわけではない。
 そうなると、やはり、詳しい話になると、かすみに聞くのが一番だったのだ。
 喫茶店では、店内では、それほど汚いところはないが、いくら綺麗にしているとはいえ、厨房は、どうしてもアレルギーがまったくないという場所ではない。
「アレルギーって、いろいろなものにあるから、気を付けないといけないのよ。医者から、一つのアレルギーを言い渡されていても、アレルギー性の高いとされているものには気を付ける必要があると思うんです。たとえば、乳製品であったり、フルーツ、さらには、ゴム製品もそうですよね」
 と、かすみはいった。
「フルーツや、ゴムまで?」
 と、マスターの娘がいうと、
「そうですよ、。フルーツアレルギーであったり、ラテックスアレルギーなどというものがあって、気を付けなければいけないところなのよね」
 というではないか。
「そうなのね、でも、私は、アレルギーというわけではないんだけど、一つ恐怖症のようなものがあるの」
 というではないか。
 普通恐怖症というと、
「高所、閉所、暗所」
 などと言われる、
「三大恐怖症」
 と呼ばれるものがあるが、彼女の場合は、どうもそれらとは違っているようだ。
「どういうものなの?」
 と聞くと、
「そうね、私、実は、今回の世界的なパンデミックで、ワクチンを一度も打っていないのよ」
 というではないか?
「確かに、3回目以降は、若い人はそのほとんどが打っていないという事実があるが、1、2回目というと、ほぼ8割くらいの人が打っている」
 という話を聞かされていたので、
「まぁ、1、2回目までは、たいていの人が打っている」
 という印象があった。
 それにも関わらず打っていないということは、
「注射が怖い」
 ということか?
 ということを考えれば、ぞこで自ずと浮かんでくる、恐怖症というものが頭に浮かんできたのだった。
 そう、あれは確か、
「先端恐怖症」
 というものではないか。

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