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生きてはいけない存在

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 それは、警官としての経験でもあるし、実際に犯罪や事故が起こったとしても、その時に通報から、初動捜査として、出かけていくことはあっても、実際に捜査をするわけではない。その場において、立ち入り禁止のロープの前に立って、
「人が入ってこないようにしたり」
 あるいは、
「交通整理などをしたり」
 ということを行うだけの、ただの雑用係でしかなかった。
 それは、
「巡査である以上、これ以上のことはない」
 ということになるのであった。
 ただ、この時は、事故の遭遇者として、自分たちも立ち合いということになる。
 正直、大橋巡査は、
「何をどうしていいか分からない」
 というのが本音だった。
 通報があって、初めて出動ということだったので、そこから先の作業に関しては、大体身体で覚えてきたが、自分が、目撃者や発見者になった時の対処方法は、今までにあるわけもないし、
「警察学校で教えてもらえることもなかった」
 ということになるのだった。
 竹下巡査の場合も、実際に、自分が発見者になるなどということは実際になかったし、事故の場面を目の当たりにするなどというのも初めてだった。
「こんなにひどいんだ」
 と心の中で感じていたが、このような衝撃的な場面に出くわすと、
「警官でありながら、どこか他人事だと思ってしまうことに、嫌悪感を感じていた」
 と思っている。
 もちろん、
「他人事だ」
 と思う方が、
「捜査に私情を挟まない」
 という意味の、
「私情」
 というのが、自分の人間としての感情だと思うと、
「ここでは、ある意味。非情にならなければいけない場面なのかも知れないな」
 と感じるのだった。
 それを考えると、
「捜査というのは、一体、普段から何を考えていないといけないか?」
 ということを自分が思っていることに不思議な感じがした。
 刑事が、実に事務的に捜査をしているのを見て、
「何か、人間としての感情が感じられない」
 と思ったこともあったが、それも、
「冷静にならないと、やってられない」
 ということなのだと思うようになって、初めて刑事という人たちと、自分たち警官が、
「同じ目的に対して、仕事をしているんだ」
 ということに気付くようになったのだ。
「事故にしても、事件にしても、その内容の大小にかかわらず、何を目指すのかということがお互いに分かっていないと、実につらいだけの仕事になってしまう」
 というものである。
「勧善懲悪」
 というものが刑事に残っているかどうなのか、竹下巡査には、よく分からなかった。
 轟音は、一瞬したような気がした。
 しかし、その音も、正直、かき消された気がしたのだが、それはきっと、
「乾いた線路の、キーという軋むような音が、耳に残っていることから、轟音が、かき消されたのではないか?」
 と思うのだった。
 その轟音が響く中ではあったが、その後に訪れた、耳鳴りがしてきそうな、まるで、
「真空の空間」
 ができたかのような雰囲気に、耳の奥がマヒした気がしたのだ。
 耳がマヒした気がするからなのか、時間まで真空状態となってしまい、その先を見ていると、何も見えない状態を、
「空気が黄色く見える」
 と感じた時、
 その時以降、
「必ず、どこかの感覚がマヒしてしまったような気がする」
 ということであった。
 特に、耳の感覚がマヒしてくるように感じるのは、その音が、
「まるでブラックホールのような気がするからだ」
 と思うからであって、そのブラックホールというのが、聞こえない空間の中で、
「時間までもが吸い取られてしまっている」
 と感じるのだった。
 そういえば、
「相対性理論」
 という考え方の中で、
「光速で進んでいると、時間がゆっくりになる」
 というのをご存じであろうか?
 昔あった、SF映画の中の、最初のところで、
「宇宙空間を数年光速の状態でいたわけだから、普通なら、数百年の時間が経っている」
 ということで、辿り着いた惑星が、度の星か分からないが、
「数百年先の、この星の文明だ」
 ということで理解していれば、
「実はそこは、数百年後の地球だった」
 というオチの栄華があったではないか。
「時間という概念に、速度が絡むことでそうなるのだが、逆に、速度に温度が絡むということもある」
 これは、光速で飛んだ場合の発想であったが、
「その中は凍り付いてしまう」
 ということで、これが
「一種の冷凍保存」
 という形で、
「凍り付いた世界は、光速で動いたことで発生する」
 と考えれば、
「時間が凍り付いた」
 と考えれば、光速で、時間の進みが遅いというのは、
「こういう解釈で解決できるのではないか?」
 と考えられる。
 これはあくまでも、突飛な考えであるが、
「相対性理論というものであっても、それが本当に正解なのか、どうなのか? 誰も証明した人はいない」
 ということではないか。
 証明はできても、その証明に対しての回答がなければ、難しい。どこまでが、その正解だと捉えるかということも、誰が判断するのかと思うと、
「誰が正解なのか?」
 と考えることで、
「理論を考える人」
 そして、
「それを解決できる人」
 その繰り返しが、
「タマゴが先か、ニワトリが先か?」
 という理論に結びつき、
「果てしなく繰り返されることになる」
 と言えるのではないだろうか?
 凍り付いた時間、さらに、静寂を破ったのは、パトカーと救急車のサイレンだった。
 誰が、呼んだのか、警官の目の前で起こったことなのに、警官二人ともに、連絡どころか、現場の生理もできていなかったのは、
「落ち度」
 だといってもいいだろう。
 まだ若い大橋巡査であれば、
「しょうがない」
 という、情状酌量もあるだろうが、先輩として、しかも、警官歴としては、十年以上が軽く経っている竹下巡査には、言い訳は通用しないといってもいいだろう。
 そんな状態において、さすがに、
「空気が凍り付いて、何もできませんでした」
 などと言えるわけがない。
「空気が凍り付いた? 何寝ぼけてるんだ」
 と言われて終いである。
 そんな状態において、たぶん、車が踏切で立ち往生している人が、スマホを使って知らせたのだろう。
 もちろん、
「正義感から」
 というのもあるだろうが、もっと実質的に、
「このまま何も進まなければ、自分たちは何もできない」
 ということからきたに違いない。
 その手配がよかったのか、警察がやってきて、事情聴取などを始めると、やっと二人の巡査も、我に返って、報告に行った。
「お前たちがいて、何をしていたんだ」
 と、上司から大目玉を食らったが、それは、
「自分たちが悪いんだ」
 ということが分かっているので、もちろん、言い訳などできるはずもなかった。
「君たちは、聞き込みをしてくれ」
 ということで、初動班の刑事と一緒に聞き込みに回っていた。
「まさか、人間だと思わなかったので。ビックリです」
 というので。刑事が、
「あn人が一人で踏切に入っていったんですか?:
 と聞かれたので、聴かれた人が、
「いやぁ、正直見ていませんでした」
 というので、そこで、竹下巡査の出番だった。
作品名:生きてはいけない存在 作家名:森本晃次