生きてはいけない存在
つまり、政治家というのは、そんな当たり前のことを知らないのだ。
自分たちが知らないから、いくらでも、理不尽なことを口にして、庶民の反感を買うのだ。
それでも、
「俺たちが政治を動かしている」
というおごりがあるから、何も反省をしようともしないのだ。
それだけ、自分の身が可愛いというだけで、政治家としての、モラルや、考え方の欠片もない連中が多いということである。
そんな状態だから、介護士がつくことになる。その相手が、
「犬飼佐和子」
だったのだ。
今の時代、とんでもない介護士もいるようで、特に最近問題になっているのは、施設などで、介護士が、入所者に苛めを加えたり、虐待しているという事実である。
「どうして、そんなことが起こるのか?」
ということであるが、
「それだけ、介護が必要な人に対して、介護士が少ないので、その分、無理が来ていて、精神的に病んでしまっている」
ということなのかも知れない。
「病んでいる人を何とかしないといけない」
ということで、いるはずの介護士なのに、その人たちが苛めを行っているなど、本末転倒もいいところだ。
まるで、
「ミイラ取りがミイラ」
である。
問題は、一つだけではなく、いくつかの問題が絡んできているのであろうが、一番の問題としては、考えられることとして、
「やはり、人員不足」
というのが、問題であろう。
どうしても、人だけを集めようとして、本来なら、介護士失格ともいえるような適正の人間でも、雇わなければいけないくらいになっているのであれば、大きな問題である。 今は介護士だけではなく、ドライバーであったり、教師であったりと、専門的なことをする人間が、慢性的に減っているのだ。
「少子高齢化になれば、もっともっと深刻になるだろう」
といえる。
金銭的な部分ばかりがクローズアップされているが、それ以外のところで、いろいろ言われるようにこれからもなってくるだろう。
政府は、そういう教育を行おうともせず、安易に、
「外人どもが安いからやらせればいい」
と思っているのだろうが、教育もできていないどころか、日本をよくも知らない連中に、できるわけはないというものだ。
大団円
しかし、犬飼佐和子は、警察が捜査する中で、あまり悪いウワサを聞くわけではなかった。
「介護センターの上司、同僚、さらに、実際に介護を受けたことのある人に訊ねる限りは、変な話はありませんね」
ということであった。
「だけど、実際に、横山惟子が事故にあってから、犬飼佐和子の姿を見ていないというのは、おかしなことですよね?」
と一人の刑事は言った。
「そうなんだよ。実際に竹下巡査も、一種のことだったという話ではあるが、彼も、被害者以外は誰もいなかったといってるんだよ、そのあたりがどうにも納得のいかないところだよね? それに、何も後ろめたいところがなければ、特に自分が介護している人がなくなったということを分かっているのだから、出てきて普通だよな」
と、吉塚刑事が言った。
「まさか、介護センターぐるみで何かあるんじゃないでしょうかね?」
ともう一人の刑事が言い出したが、
「滅多なことをいうもんじゃない」
と、吉塚刑事は、諭したが、言いながら、
「それも一理あるんだよな」
と、もう一人の刑事にいわれるまでもなく、気にしていたのだ。
そもそも、自分の担当である相手が、
「事故で亡くなった」
ということは当然、センターから聞かされているはずだ。
まさかセンターから、
「今お前が出てくると、ややこしいことになる」
などといって、出てくるのを、止めていたというわけでもあるまい。
そんなことを、吉塚刑事が考えていたが、彼は、
「もう一度、現場に行ってみるか?」
ということで、今回は、
「竹下巡査を伴って、やってくることにした。
二人は、踏切に止まっていた時の状況を再現してみようというわけだ。
とはいえ、同じ時間で同じようにやると、交通妨害にもなる。
それに、これは単独での捜査になるので、もちろん、
「警察の国家権力」
というものを振りかざすことはできない。
そんな状態だったので、
「今回は、しょうがない。できるところまでやってみよう。もし、一般市民に迷惑を掛けることになるようだったら、この検証は、即座に中止する」
ということになったのだ。
これには、大橋巡査は連れてくることはできないし、もう一人の刑事も使うことはできない。
ただでさえ、捜査方針を曲げてのことなので、自分たちの独断だったのだ。
この話は、ほとんど、
「事件」
として捜査される。
一番の理由は、やはり、
「横山惟子」
という女性が、行方不明になっていて、姿を現さないということからだった。
それを考えると、
「横山惟子って、本当に生きてるのか?」
という妄想すら抱いていた。
それは、皆。
「俺だけが抱いている妄想だ」
と思っているようだが、実際には、自分だけでなく、皆同じことを考えているようだった。
それをウスウス感じているのは、吉塚刑事だけのようだった。
そんなことを考えていると、吉塚刑事の予感が的中した。最初は誰の死体なのか分からなかった。何しろ顔を潰されていて、誰なのか、まったく分からなったからだ、
「いわゆる顔のない死体」
だったのだ。
しかし、
「おかしいよな:
と吉塚刑事が言いだした。
「何がですか?」
と同僚刑事がいうので、
「だって、この死体は故意に、顔を傷つけられている」
というので。
「それがどうかしたんでsか?」
「だって、今の時代であれば、DNA鑑定で、ある程度容易に、死体を特定することができる。特に捜索願が出ているのを探せば分かりそうなものだからね。これじゃあ、まるで、死体が発見されて、身元がバレるのはいいのだが、それまでの何か時間稼ぎにしか見えないじゃないか?」
と吉塚刑事はいうのだ。
この吉塚刑事の勘が当たっていた。この死体の身元は、
「十中八九、犬飼佐和子に違いない」
ということであった。
そして、もっと不思議なこととして、分かったことがあった。
「えっ、そんなバカな」
と同僚刑事は、驚いていたが、それを聞いた吉塚刑事と、竹下巡査は、さほど驚いていない。
どちらかというと、心の中で、
「やはりな」
と答えているかのように思えるのだった。
「わかっていたんですか?」
と同僚が聞くので、
「そういうこともあるかと、思っていたのさ。犬飼さんは、たぶん、殺されたんだろうね?」
と、吉塚刑事は言った。
「どうして、そう思うんですか?」
と聞かれたので、
「聞き込みをしていく中で、横山惟子の主治医に聞くと、彼女は、双極性障害と一緒に、幻聴、幻覚を見るというような病気を持っていると聞いたんだ。そこで、この事件を、最初から、横山惟子が、自殺だったんじゃないかと思ったんだよ。見るからにそうだったわけだろう?」
という。
それを聞いて、同僚は頷いているが、
「でも、何か死にたいという理由でもあったんですかね?」
ということを聞くと、
作品名:生きてはいけない存在 作家名:森本晃次