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一触即発の謎解き

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「ああ、もちろん、そうだね? まずは、何もしていない。ただ、普通に死んだ人間の死体の隠し場所だよ。つまりは、よく昔からいわれるような、「顔のない死体のトリック」などではないということだね?」
 と、川崎はいう。
「顔のない死体のトリック?」
 と飯塚は、このあたりの話になると、よくわかっていないようだ。
「ああ、死体のないトリックというのは、昔の探偵小説の中で、よく言われてるうちの、殺人トリックの一つなんだけど、いわゆる殺害方法別の殺人の方法というものだというべきなんだろか」
 という。
「そんなにいろいろあるのかい?」
 と聞くと、
「ああ、いくつかあるかな? 密室トリック、一人二役トリック、アリバイトリックなおと、探偵小説の中にもいくつかある。その中にこの、顔のない死体のトリック。いわゆる、死体損壊トリックというのがあるんだよ」
 と川崎は言った。
 それを聞いた飯塚も、
「なるほど」
 と答えたが、
「それって、犯人と被害者が入れ代わるっていう公式があるトリックのことじゃないの?」
 と横から、少し乾いた声が聞こえてきた。
 聞き覚えのある声ではあるが、
「まさか、ここでこの声が帰って来ようとは?」
 ということで、川崎だけでなく、飯塚も驚いた。
 そう、その声の主は、
「いちか」
 だったのだ。
 いちかは、ニコニコしながら、ハトが豆鉄砲を食らったかのような表情をしている二人の男性に対してニコニコしている。
「よく知ってるね?」
 というと、
「うん、私、学校で、ミステリー研究会に入っているから」
 というではない。
 そう、確か、いちかは、この近くにある大学の学生だということだった。
 なるほど、ミステリー研究会であれば、これくらいのことは分かっていても不思議ではないだろう。
 話を聴いていた、いちかの方でも、その答えを考えようとしていたようだ。
「じゃあ、死体損壊トリックを除くということは、ほぼ、死体には、被害者を判別できないほどの、傷はないということになるのね?」
 ということであった。
 それを聞いた川崎は、
「そうだね。いちかちゃんの言う通りだ」
 と聞いて、いちかも納得したようだった。
「ところで、さっきの、公式って、あれはどういうことなんだい?」
 と、飯塚は聴いた。
 すると、川崎は自分で答えるのではなく、いちかを制したので、それに気づいたいちかが、おもむろに話始めた。
「顔のない死体のトリックというのは、まず、どういうことなのかというと、さっきも言ったように、被害者が誰なのか分からなくするために、死体を損壊させるのよね。例えば、首なし死体にしてしまったり、顔をメチャクチャに切り刻んだり、顔に硫酸をぶっかけたりしてね。そしてその時に、忘れないように、指紋のある手首を切り取っておく必要はあるんだけどね」
 ということであった。
「それでどうなるの?」
 と飯塚が聞くと、
「だって、死体の身元を分からなくしておいて、犯人は逃げ去ってしまえば、誰が殺されたのか分からないわけでしょう? もし、その時に一緒にいたのが誰なのかということが分かっていれば、普通なら、その人が犯人だということは、一目瞭然でしょうけど、被害者の身元が分からないということであれば、被害者は、二人いたうちの一人で、犯人もそのもう一人だということだけしか分からない。
 つまり、被害者が誰か分からないということは、犯人が誰か分からないということと同じで、捜査するにしても、大変でしょう?」
 という。
「じゃあ、どっちも探せばいいんじゃあない?」
 と飯塚がいうと、今度は、川崎が答える。
「確かにそうなんだけど、警察というのは、指名手配をするとしても、どちらかしかできないだろう?」
 というと、
「どうして? 二人とも指名手配すればいいじゃないか?」
 という。
「それって、要するに、同じ事件で、二人を指名手配するということだろう? 共犯がいて、その共犯も一緒に、手配するというのであれば、分からなくもないけど、その指名手配は、明らかに、犯人を特定できていないということであり、そんな手配をすれば、即座にマスゴミの餌食になってしまうだろうね」
 というのだ。
 それを聞いて、飯塚は、
「ドラマなんかでよく、縄張り争いのような、醜い争いがあるようだけど、警察って、そんなメンツまでも気にするところなんだね?」
 というので、
「そりゃあ、そうさ。ちょっとでも間違えたりすると、すぐにマスゴミの餌食さ」
 と呆れたかのように、川崎が言うと。
「本当に情けないもんだな。警察って、もっとしっかりしたものかって思っていたよ」
 というが、そんなことは、
「今も昔も変わりない」
 というのは、誰もが認めることであろう。
 そもそもが、
「公務員」
 警察と言えども、やっていることは、お役所仕事、
「なんといっても、我々の税金で生活しているということは、動かすことのできない事実なんだからね」
 というではないか。
 なるほど警察も役所仕事も、ロクなことはない。
「警察は弱いものの見方だ」
 などという、
「お花畑」
 のような話を聴いたことがあったが、そんなバカなことがあるわけはない。
 警察というところは、
「朱に交われば赤くなる」
 というところであり。
「長い物には巻かれる」
 というところの代表選手なのであった。
 さて、そんな警察であったが、それはさておきという意味で、
「でも、今は昔の探偵小説時代のトリックも、なかなかできなくなってきたというのが事実なので、ミステリーにおいても、殺人トリックは、だいぶ減ってきたといってもいいのかも知れないな」
 と、川崎は言った。
「というと?」
 と相変わらず、飯塚が聞いた。
「今のように、科捜研などの登場と、科学の発展で、死体が損壊していても、DNA鑑定というものを行い、肉親との家族関係などを調べれば、ある程度正確に、被害者を特定できるんじゃないかな?」
 と川崎は言った。
「なるほど、そうだな」
「さらに、アリバイトリックなどにおいても、今のように、これだけたくさんの防犯カメラや、WEBカメラなどというものがあって、下手をすれば、衛星カメラで上から捉えている場合もある。そんな状態で、そう簡単に、犯行をごまかしたりはできないんじゃないかな?」
 と、川崎は言った。
 そうなると、この問題も難しいかもしれない。
 だが、あくまでも、想像でのことなので、どちらかというと、なぞなぞという要素もあり、そう考えるのも面白いかも知れない。
 そう考えると、飯塚も、
「自分にだって、答えが出せるかも知れないな」
 と思っていた。
 飯塚は、
「俺は、ミステリーというのはあまり読んだこともなく、ピンとはこないが、ある程度絞られてくると、そこからのひらめきには、それなりに自信がある」
 と思っていた。
 つまりは、
「なぞなぞ的なものは得意だ」
 と思っているようだった。
「ちなみに、この発想は、探偵小説時代の発想でいいんだよな? 今のような科学捜査が発展していない時代の発想だよな」
 と飯塚がいうので、
作品名:一触即発の謎解き 作家名:森本晃次