小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

一触即発の謎解き

INDEX|12ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

 と聞かれたので、
「私は、それはちょっと怖いと思ったの。それに、私に宿ったかも知れない、この霊が、本当に怖いものだという気がしなかったので、除霊をしようとは思わなかったということなの」
 というではないか。
「じゃあ、霊の正体を調べようとは思わなったのね?」
 と聞くと、
「ええ、そうね。見たといっても一度キリだから、錯覚だったのかも知れないって、思うようにしようかと思うの」
 というので、
「分かったわ。私も気にして見るようにする」
 ということで、いずれは、祖母がこの鏡を受け継ぐことになる。
 しかし、実際にこの鏡で、祖母の母親が経験したような異常現象は起こったことはなかった。
「合わせ鏡」
 に関することも、まったく起きるわけではなかった。
 何事もなければ、手放す必要も、除霊する必要もない。
 それを考えると、
「子々孫々と伝えていく中で、都市伝説のような話だけは、本当に伝説のように語り継がれているが、次第にその信憑性は疑われていく」
 ということであった。
「2代、3代と、伝えられる間に、普通であれば、話の内容は変わっていくことが多いであろうに、この都市伝説に関しては、それほど変わっている様子はなかった」
 ということのようだ。
 それこそ、
「伝言ゲーム」
 のようなものだが、それだけ、印象的なことだけを拾っていくと、正確に伝わっていくということなのだろう。
 そんなことを考えていると、
「その子孫である、黒崎も、本当は気を付けなければ、いけなかったのだろうか?」
 ということであった。
 とは言っても、もう半世紀以上も前の話。
 しかも、その話は一度きりのことで、その現象が何を暗示しているのかということすら、分かっていないのだった。
 それを、変に意識するという方が、無理だというもので、しかも、変に意識するということの方が、よほど、怪しいことだといってもいいだろう。
 こんな都市伝説の中で、行方不明になった黒崎だったが、最初は、
「失踪した」
 ということすら、誰にも分からなかった。
 結局、無断欠勤が続いたことで、
「黒崎が、借金をしていた相手」
 というのがいて、その人にとっては、
「失踪されてしまってたまるものか」
 ということで、
「捜索願」
 というものを出すことにしたのだった。
 さすがに、彼の家族に、
「金を返してくれ」
 と言ったが、
「さすがに、踏み倒すだけの親」
 ということで、
「子供も子供なら、親も親」
 ということで、相手にしてはくれなかった。
「息子の借金を親に言われても」
 ということであったのだが、それもそうだ。
 近親者である親から、捜索願を出してもらったが、やってくれたのは、ただ、それだけである。
 もっとも、捜索願などというのは、言ってみればただの紙切れ。
 警察が、真面目に捜査などするわけはない。
 警察に出された捜索願で、
「事件に巻き込まれた可能性がある」
 あるいは、
「自殺の危険性がある」
 というような、
「命に係わる」
 というようなことがなければ、警察は動いてくれないのだった。
 しかも、失踪した理由にまったく心当たりはなく、親がいうには、
「まさかと思うが、例の合わせ鏡の祟りでは?」
 ということであるが、そんな話をすればするほど、警察が真面目に話をきくわけもないだろう。
 そんなことを考えると、捜索願など、気休めでしかなく。結果、いつの間にか、
「踏み倒されることを覚悟しなければいけないか」
 という覚悟をしなければいけなくなるであろうことを、
「債権者」
 は考えるのであった。

                 ウミガメのスープ

 ある男が、ある飲み屋で、他の常連客と、話をしていた。この店はスナックで、馴染みの女の子がいるので、結構常連になってから長くその店で飲むことが多かった。
 今年で、すでに4年目くらいであろうか。その馴染みの女の子も、
「川さんは、私がお店に入ってすぐくらいのお客さんだったから、私にとっては、まだまだ新人の頃からのお付き合いということになるのよ」
 というので、
「そっか、まるで一心同体みたいじゃないか。それよりも、腐れ縁と言った方がいいのかな?」
 といって笑うと、女の子も、
「何言ってるのよ、腐れ縁というのは、ひどいわね」
 というが、そんな冗談が交わせるほど、仲良くなっていたのだった。
 そんな中で、ここ1年くらいで一人常連になった客がいたのだが、ここでは、皆から、
「つかちゃん」
 と呼ばれていた。
 川ちゃんと呼ばれている男、
「川崎」
 というのだが、彼も、つかちゃんの名前を知っていた。
 つかちゃんというのは、本名を、
「飯塚」
 といい、お互いに、本名を知っていながら、
「川ちゃん」
「つかちゃん」
 と言い合っている中だったのだ。
 このスナックの女の子の名前を、
「いちか」
 と言った。
 もちろん、本名ではないのだろうが、客のほとんどは、いちか目的で言っているのは間違いないだろう。
 といっても、そんなに客が多いという店でもない。
 いちかのいいところは、天真爛漫で、天然なところがあるが、それがいいところであった。
 それでも、いちかには、一線を画したところがあり、もし、客が口説こうとしても、
「この子を口説くのは絶対にムリだ」
 ということが分かっている。
 だから、客はすぐに諦めて、店に来なくなる。
 ママさんとすれば、
「困ったものだわね」
 といって、嘆いていたが、実際には、そうでもなかったようだ。
 ママさんとしても、いちかの天真爛漫さには、一目置いているようで、
「いちかは、いてくれるだけでいい」
 と思っているようだった。
「お客さんなんて、どうせ、短い周期で入れ替わるものだし、それでも、たくさんのお客さんが、一か目当てで来てくれるのは嬉しい。でも、いちかが変なことに巻き込まれる様子のない女の子だということの方が私には嬉しいのよ」
 というではないか。
 ママさんのその言葉が、いちかに対しての、
「的を得た答えだ」
 といってもいいだろう。
 いちかにとって、この、スナック「カトレア」というお店は、オアシスのようなお店だといってもいいだろう。
 ママさんも暖かく見守ってくれるし、いちかを目当てに常連になってくれた人も数人いる。
 その代表というのが、川崎であり、飯塚ということになるのだろう。
 しかも、最近では、川崎と飯塚が、示し合わせてくるということはないのに、いつもどちらかが来ると、後から、もう一人が来ると言った感じで、このあたりも、
「腐れ縁」
 と言われても、
「まんざらでもない」
 という気分になるのであろう。
 だから、いちかも、
「あっ、今日は二人が揃う日だわ」
 と思うと、気分が高揚してくる気がした。
 いちかも人間である、楽しい人や、顔を見るだけで嬉しいと思えるような人が来てくれれば、とたんに顔に出たり、態度に出たりするのだ。
 だから、二人がたまに聞く、いちかのウワサとして、
「あの子は、塩対応しかしない」
 ということで、
「決まったことしかしない子なんだ」
 と、心の中で、もっとひどいことを考えていた。
作品名:一触即発の謎解き 作家名:森本晃次