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表裏の「違法性阻却」

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 真面目に更生しようとしているやつは、
「これで、あいつとの腐れ縁もなくなるだろう」
 ということで、
「何とか更生しようと思うことができた自分を褒めてやりたい」
 という考えにいたったのだ。
 それを思うと、
「彼に限って、ひどいことはない」
 と思うのだった。

                 大団円

 この更生できた男であるが、彼は名前を松橋という。
 そう、串木野の同僚である、松橋だったのだ。
 松橋が串木野と、どちらかというと腐れ縁になったのは、串木野という男が、
「緊急避難」
 の話を最近よくしていて、同じ、
違法性阻却の事由」
 の一つである、正当防衛というもので、
「あの時、もし、自分の番だったとすれば、俺が殺されていたことになるんだ」
 と感じたからである。
「だから、あいつは、人を殺しておいて無罪になったというのが、どうにもたまらない。確かに俺たちは、あの男に殺されていても仕方がなかったのに、本人は無罪。理不尽だ」
 と思った。
「俺たちだって、暴行の共同正犯で、暴行未遂ということで、罪を償ったな」
 と思うから、もう一人の男が、
「完全に、足を踏み外した」
 というのも分からなくもない。
 それを思うと、
「俺は、どうしていいのか分からない」
 ということになる。
 もう一人が何を考えているのか分からない。
「あいつだったら、復讐くらい考えそうだ」
 といって、
「誰に復讐?」
 と考えると、
「無罪になったあの男」
 ということになる。
 しかし、松橋とすれば、
「復讐したとしてどうなるんだ? やつは、精神を病んでいるというではないか、そんなやつに復讐というのもお門違い。自分たちが何もしなければ、何も起こらなかったと思えば、それだけのことではあないか?」
 と思うのだ。
 そのうちに、その男から松橋のところに連絡があった。
 何を言われたとしても、何かができるわけではない。
「しょうがない。無視するしかないか」
 ということであるが、それだけで済むだろうか。
 あの男とすれば、
「俺が更生していることに、恨みがあるかも知れない」
 と思えた。
 明らかに、あいつの思いは、逆恨みであり、相手に対してもそうだが、ましてや、俺に対してというのは、
「見当違いも甚だしい」
 と言えるだろう。
 そんなことを考えていると、
「俺にとって、今何をすべきなのか?」
 ということを考えていると、ちょうどそんな時、串木野の存在を知った。
 今まで、松橋はあまり、人とかかわりを持つようなことはなかった。
 というのも、
「俺は一匹狼だ」
 というよりも、一人でひっそりということだったのだ。
 もっとも、あの時二人にそそのかされて、婦女暴行などに走らなければ、
「一匹狼」
 としての人生を送ってきたのではないだろうか?
 そんなことを松橋は思っていて、
「恨んでも仕方のないことだ」
 という思いをずっと持ち続けようと感じるのだった。
 だが、恨みを持っているといっても、やつの恨みは、完全な逆恨みである。やつのことだから、
「警察は俺に対しての動機ということで捜査は進めるだろうが、これをまさか恨みと思うことはないだろう」
 という考えかも知れない。
 とはいえ、
「動機のない殺人」
 ということだからとはいえ、衝動殺人ということにもできないだろう。
 ただ、動機がないというのは間違いない。
「殺された男に、罪を擦り付けておけば、自分は助かる」
 ということで、やつは、前回の事件では、
「共同正犯」
 ということで、松橋と一緒に、
「刑に服した」
 はずなので、何を今さら、何かの行動をとらないといけないというのか?
 ということを考えると、
「今回の殺人は、前の殺人とは関係がないのだろうか?」
 ということも考えにくいがありえなくもない。
 今回の被害者は、天草という。彼女を襲われ、自分たちの人生をめちゃくちゃにされたことで、衝動的に殺人を行ったが、無罪となった、あの男だった。
 当然すぐに、松橋と、一緒に刑に服した八代という男が、刑に服され、事件はすべて片が付いたはずだった。
 にも拘わらず、裁判で無罪になった男が殺された。
 彼が殺される理由はどこにもない。
「人間だから、少々の恨みを買うということは普通にあるだろう。だけど、殺したいとまで思う人は、今のところ見当たらない」
 というのが、捜査線上での話だった。
 それを思うと、どうしても、過去のこの事件ということになる。
 殺人事件において、一番最初に疑われるのは、
「今度の犯行で、誰が一番得をするか?」
 ということであり、
「彼が死んだことで得をするという人物が果たして誰なのか?」
 ということになると、
「誰も、刺したっていない」
 というのであった。
 もっといえば、過去のあの事件で、彼が死ぬことで得をする人はいないが、
「殺された男のまわりにいたかも知れない」
 ということで、捜査が行われるのは当たり前だった。
 だが、なぜか、石で殴られた男の味方になるような人物はいなかった。家族の方でも、
「あんな放蕩息子、死んでくれて助かった」
 というくらいで、
「ああ、あの非情なまでに冷酷な暴行のようなことが平気でできるというのも、こんな家族に育てられたからではないか?」
 と言えるのではないだろうか?
 つまり、家族が彼の仇を取りたいということもない。
 そのうちに、捜査が行き詰ってくると、今度は、
「犯人と名乗る男が自首してきました」
 というではないか?
「自首 どんな男だ?」
 と聞かれた慶事は、
「かつて、婦女暴行を行った男を、殺したということで、一度罪に問われたけど、犯行を
犯したけど、襲われている彼女を助けるということで、無罪になった人物です」
 という話だった。
 もちろん、
「弁護士の腕」
 ということであったが、本当のところは、正直分からなかった。
 無罪になったその裏に、
「何かがあるのではないか?」
 ということが言われているという話はあったが、正直、その謎は、今でも謎のままであった。
 だが、この犯罪の話を、実は串木野は、自首する前の松橋から聞いていた。その時、串木野は、
「この事件の裏には、何かが暗躍しているような気がするな。それも、この事件だけではなく、前の事件でもそんな気がする」
 と串木野が言ったのを聞いた松橋は、身体が震えたような気がした。
「この、串木野という男。しっかりとした見解を持っているわけではないが、何か、動物的な勘のようなものを持っているのではないか?」
 ということをである。
「それはどういうことですか?」
 と、松橋が聞くと、
作品名:表裏の「違法性阻却」 作家名:森本晃次