交換幇助
だが、そんな中でも、小説を書くことに面白さを感じ、残ったごくわずかな人たちと、それまで小説をいうものを、本当に趣味として、あるいは、プロを真剣に目指していた人たちは、まだまだ、諦めてはいないだろう。
だが、発表する場がなくなってしまっては、いくら趣味でも、モチベーションが落ちてきて、継続は難しいだろう。
「新人賞に応募し続けるしかなかった昔に戻っただけだ」
という人もいるが、実際には、
「一度、詐欺商法とはいえ、自分たちの本を出すという道があっただけに、昔とは違うんだ」
という人もいるだろう。
確かに、昔も今も、
「ただ、本を出す」
というだけであれば、本屋に並べるなどということがないだけで、
「全額自費で出版して、友達に配る」
ということもできるだろう。
しかし、最近ではそれ以外に、
「フリーマーケット」
という手もある。
自分のブースを確保して、そこで自分の手で売るという手である。
しかも、最近では、
「本に特化したフリーマーケット」
というのもあるようで、それができるようになったのも、きっと、
「本を出したい」
という気持ちの元に集まった、有志によるものではないだろうか?
そんなことを考えると、
「小説を書く」
という趣味は、まだまだすたれたというわけではない。
そのうちに、今度は、ネットというもので、何でも販売できるようになってきた。
そのおかげで、一長一短があり、評価は難しいところなのだろうが、それが、
「無料投稿サイト」
というものである。
もちろん、機能がもっと充実した、
「有料のサイト」
というものあるのだが、今は無料でもたくさんの人が投稿し、それらを読む人もたくさんいる。
無料投稿サイトに関しては、本当にタダなのだ。
無料で、会員登録しておくと、好きな時に、書いた小説をアップしておくと、読者の人たちや、他の作家の人が見てくれるという感じである。
そして、サイトによって、機能は違っているのだが、レビューを書いてもらえたり、感想がもらえたり、作者が日記のようなものを書くことができたり、さらには、プロット作成機能まであったりする。
プロットというのは。
「小説のせっけいず」
であり、それを作っておくことで、書きながら、迷走することはないといえるであろう。
もちろん、決まった書き方があるわけではないので、好きに書けばいいのだが、まだ書き始めて日が浅い人は、どのように書いていいのか分からないだろうから、テンプレート的なものがあれば、それを利用するのが一番いいだろう。
それを思うと、
「無料投稿サイトに、プロット機能がついているのは、ありがたい」
といえるだろう。
無料投稿サイトも、さまざまな種類がある。
無料ということで、なかなか運営も難しいのか、
「新しいのができる端から、どんどん昔のところが消えていく」
ということを繰り返しているようだった。
高杉は、そんな時代の話をおじさんから聞き、今の無料投稿サイトが、
「そんな悲惨な過去の教訓で生まれるべくして生まれたサイト」
ということで、十分に利用できるものだと感じていたのだ。
文芸サークル
高杉は、大学2年生の春、キャンパス内で、サークルの出店の中を歩きながら、それまでは、
「いまさらどこかのサークルといってもな」
と思っていたのだが、やはり、どこかに所属したいと思うようになっていた。
二年生でありながら、サークルの出店の間を歩いていると、自分が新入生だった時のことを思い出し、あの時は、
「ゆっくりサークルを探せばいい」
という程度で時間に余裕を感じていたのだが、そのうちにダラダラになってしまい、結局、サークルを決めかねてしまったのだ。
そうこうしているうちに、次第に、出店も少なくなり、キャンパス内は静かになっていく、すると、高杉の中でも、サークル熱が、まったくといって言うほどに、消えていくのだった。
サークルへの思いが、
「アルバイトをして、金を稼がないと」
という思いに変わり、
アルバイトが、まるで、サークル活動であるかのように思えたのだ。
何しろ、
「お金が絡んでいるのだ」
と思うと、
「サークル活動したって、お金が入ってくるわけではない。それだったら、アルバイトをして、金を稼いだ方がいい」
と思うようになり、一年生の間は、アルバイトに明け暮れたのだ。
しかし、アルバイトをしてみれば、
「自分が好きなようにできない」
ということに、いまさらながら気づかされた。
これは、
「プロになったら、好きなように書けない」
と言っていた、おじさんの言葉を彷彿させるものだった。
確かに、アルバイトとは厳しいもので、社会の現実を教えてくれる。そして、その代償がお金だということは、当たり前すぎるくらいに分かっていることだった。
だが、実際にやってみると、最初は、
「お金を稼ぐ」
ということで、その代償が嬉しかったのだが、それはあくまでも、
「代償がなければ、やってられないよな」
ということであり、よくよく考えてみると、
「こんなことは、社会人になれば、嫌という程やらないといけない」
ということなのだ。
だったら、何を貴重な大学4年間を、これから山ほどある時間として過ごさなければいけないことを、好き好んで今しなければいけないのか?
ということなのであった。
実際に、就職するということを、2年生の今から考える必要はないのだが、よく考えてみると、すでに一年を棒に振っていた。
無為に過ごしたわけではないので、
「棒に振った」
というのは言い過ぎだろうが、実際に、そうではない。
だが、2年生ともなると、少し焦りを感じた。
「気持ちを一年生に戻さなければいけない」
というところに、大学は新入生を迎える体制が整っていたのだ。
それを考えると、
「俺も、新入生の気持ちになって。サークルを探せばいいんだ」
ということを考えながら、過ごすには、
「サークルの出店が建ち並んでいるキャンパス内は、実に気持ち的には十分なものだ」
といえるだろう。
やっぱり、気になったのが、
「文芸サークル」
だった。
これだけの、サークルがあれば、その中に文芸サークルというのも結構あるというもので、中には、
「機関誌」
のようなものを発行しているところもいくつかあり、過去の機関誌をもらってきて、それを参考に文芸サークルを前提に、
「どこかのサークルに入ろう」
と思うのだった。
まず、基本的に、
「機関紙を発行していないようなところは、最初から、論外だ」
ということであった。
貰ってきたのは、三つの機関誌、その三つを見比べてみることにした。
一つのサークルは、ポエムが中心で、小説というよりも、メルヘン的な、そして、女性的な雰囲気が多く、後で聞いてみると、
「やはり、女性が多い」
という話であった。
それはそれで、大学生としては大いに魅力でもあったが、やはり、小説を書くということでは、
「そこまで興味があるわけではなかった」
と言えるだろう。
もう一つは、
「ノンフィクションや批評のようなもの」