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 幹事といっても、そんなに何か所も行くわけでない。結局、一か所にとどまって、
「一つ以上の作品を製作する」
 ということを目的にすると、幹事というのは、何もすることはないのだ。
 実際に、バスを手配していくことになったのだが、それも、大人数ということではないので、すぐに手配もできた。
 実際に、その日になって、何も慌てることもなく、時間はスムーズに過ぎた。
 さすがに最初の一日は、皆、慌ただしさからと、移動の疲れからか、その日は宴会でもあったが、結構早い時間に、宴会は終わった。
 中には、
「旅行というだけで、気持ちが高ぶっているので、その分、眠れなかったという人もいたくらいで、まるで、修学旅行のようですね」
 ということを、つかさから聞かされた。
 中には、
「喧嘩になったり、集団行動にはそぐわない人がいたら、どうしようか?」
 ということを考えてみたりしたが、
「損な人もいないようなので、よかった」
 ということであった。
 何といっても、たまに大学でサークル活動をするだけで、普段は、ほとんど話をしないような人の集まりだ。
 一種の、
「烏合の衆」
 といってもいいだろう、
 それを考えると、
「俺たちは、そんなに気にすることなかったんじゃないかな?」 
 というと、つかさも、ホッとした様子で、
「ええ、その通りだわ、私も、気に病みすぎていたのかも知れないわね」
 といって、ホッと胸をなでおろしているようだった。
「ねぇ、ところで、ここなんだけど、街に出るには、かなりきついのかしら?」
 と急に聞いてくる。
「どうして、そんなことを聞くんだい?」
 と高杉が聞くと、
「いえね。このあたりではm、何かあった時、街から来てくれるまでに時間が掛かったりするんでしょうね」
 という。
 どうやら、余計な心配をしているようだった。
「そんなこと心配しなくてもいいじゃない? ここの宿の人に心配なら、明日聞いてみればいい」
 と言った。
 どうやら、朝が早いのか、もう、10時前くらいには寝てしまっているようで、宴会も、「我々幹事で仕切ってください」
 ということだったのだ。
 ここに限らず、田舎のペンションなどでは、これが当たり前なのではないだろうか?
 その宴会も、別に幹事が終了宣言することなく終わってしまった。
 カオスになってしまったわけではなく、次第に皆疲れてきたのだろう。最初は普通に歓談していたのが、次第に声が小さくなってきていて、その声が聞こえにくくなってきていると思うと、中には眠ってしまった人もいた。
 その連中も、酒に酔ってというわけではなく、本当に疲れたようだ。
「皆、宴会に慣れていないんだ」
 と感じ、自分も、幹事という立場でなければ、きっと眠り込んでいたような気がしたのだ。
 さすがにペンションの人は慣れていて、
「とりあえず、このままにしておきますから、起きられたからは、お部屋に帰るでしょうね」
 といって、別に何かをするというわけではなく、ただ、
「毛布は、こちらにありますので、寝入ってしまった人に掛けてあげてください」
 といって、毛布の場所を教えてくれた。
「ありがとうございます」
 といって、つかさは、皆に毛布を掛けてあげた。
 そのまま皆が寝入ってしまったのを見ると、つかさは、
「これでいいかしら?」
 といって、数名に毛布を掛けてあげたが、それ以外の人は、寝入った人には目もくれず、そのまま各々の部屋に帰っていった。
 幹事の二人も部屋に戻っていったが、高杉が時間を見ると、まだ、10時半くらいだった。
「明日からのこともあるし、早めに寝ようかな?」
 と思い、部屋に帰り、就寝した。
 幹事ということもあり、朝は6時起床、普段は、まだまだ寝ている時間だ。10時半でも、少し遅いくらいだと思いながら、中途半端は否めなかったが、それでも、布団に入ると、いつの間にか寝ていたようだ。
 目が覚めてから、ゆっくりとロビーに出てみると、そこにいるはずの、つかさが来ていない。
「眠っているのかな?」
 ということで、少し待ってみたが、返事がなかった。
 6時というと、もうすでに明るくなっていて、ロビーに朝日が差し込んでくる。シーンとしたロビーで待っていると、そこに、一人の男性が駆け込んできた。
「ペンションの人は?」
 というので、
「まだ寝ているんじゃあ?」
 というと、
「いやいや、もうとっくに起きているはずだが」
 というのが早いか、奥からペンション管理の男性が出てきた。
「どうしたんですか? 源さん」
 源さんと呼ばれた男性に、ペンションの人間が声を掛けると、源さんは、
「ここのちょっと先にある森への入り江になっているところに、一人の女性が打ち上げられているんだ。急いで、救急車と警察に連絡をしたんだけど、身元が分からないので、ひょっとしてこちらの宿泊客かと思ってきてみたんだ」
 というではないか。
 どうやら源さんがいうには、その女性はこのあたりでは見かけない人だということだった。
 高杉は急いで、点呼を取る意味で、部屋で寝ている人たちを、半ばたたき起こすような形で、ロビーに集合させると、部員は、それぞれに、キチンといるようだ。
 実際にいなくなった人というと、そう、幹事としての仲間でもある、つかさだけだったのだ。
「高橋さんがいませんね」
 ということを誰かが言い出した。
 高杉は、分かっていたが、それを敢えて言おうとは思わなかった。
 そんな状態において、高杉が言わなかったのには、理由があった。
 つかさには、誰か好きな人がいて、今回の旅行で、その人に告白したいということを言っていたのを聞いていたからだった。
 高杉には、つかさに対して、女性としての興味があったわけではなかったので、
「相手が誰なのか?」
 などという、無粋なことを聞こうとも思わなかった。
 そんなことを聞いてしまうと、今度は、つかさとの間に、幹事としての関係がぎくしゃくしたくなかったからだったが、実際には、昨日の様子もどこか、そわそわしていたのを感じたので
「ひょっとして、今夜、何か行動に移すんじゃないかな?」
 と思っていた矢先、今朝の集合に、出てこなかったのを見ると、
「明らかに、おかしいな」
 と感じ、まさか、入り江に打ち上げられているとも知らず、自分が何を考えていたのか、恥ずかしくなった。
「恋愛感情がなくとも、こんな気持ちになるものなのか?」
 それとも、あくまでも、
「本当は恋愛感情を持っていたのか?」
 という、どちらかだとは思ったが、自分ではそのどっちも違うかのように思えるのは、不思議だったのだ。
 恋愛感情というものが、どのようなものなのか、自分でも正直分かっていない。思春期の時に好きだった人がいたのを思い出しても、あの時とは明らかに違っているということは分かるくせに、あの時の感情がどんなものだったのか覚えていない。それだけ、遠い過去だったということなのか、それとも、その間にまったく恋愛感情というものを抱いてこなかったという証拠なのか、そのどちらなのか、考えてしまうのだった。
「俺って、今まで誰かと付き合ったということあったんだろうか?」
 と、高杉は考えた。
作品名:交換幇助 作家名:森本晃次