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誰が一番得をするか?

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 その三人は、実力が拮抗しているからと言って、
「それぞれのレベルが一緒だというわけではない」
 というのだ、。
 ゆずはは、バッティングがよかった。後の二人はそれぞれに、脚が早く、もう一人は、守備がうまかった。
 結局、レギュラーに選ばれたのは、
「守備がうまい選手だった」
 というのは、このチームは、
「元々、打撃のチーム」
 と言われていたので、打撃で売ろうとしても、すでに遅いというわけである。
 守備に難点があり、ポジションとしては、セカンドだったこともあって、
「守備がうまい選手というのは、フィールディングもうまいし、何よりの、セカンドというところは、結構、カバーに走りまわることが多かったりする。
 だから、守備がうまい選手をセカンドにおいて、打順としては、2番くらいを打たせるくらいがよかったのだ。
 二番を打っていると、犠打が多くなってくる。そういう意味で、
「守備のうまい選手は、小細工もできる」
 という感覚から、レギュラーとなった。
 ゆずはの場合は、
「代打の切り札」
 ということで、
「いいところで、ピンチヒッターとして出ていく」
 というポジションがあった。
 もちろん、足の速い選手も、代走として起用されることも多い。
 しかも、脚が速い選手は、、
「器用なところがあるので、マルチプレイヤーだ」
 ということで、正直、どこでも守れるのだ。
 そういう意味で、代打にゆずはが出た後のポジションを、足の速い選手に守ってもらうというような形であった。
 それを思うと、
「今年のレギュラーは、これでいく」
 と監督から聞かされた時、さすがに、レギュラーが取れなかったことはショックだった。
 しかし、足の速い選手は、別にショックというわけでもなく、最初から分かっていたかのようだった。
「私は気にもしていないわよ。だって、分かっていたことですもん。だから、最初から、こうなってもいいように、脚を生かしたやり方で自分をアピールしようと思い、どこでも守れるように、守備に関しては、かなり練習したわよ。内野用も、外野用も、グローブ買ったりしたもん」
 というのだった。
 監督も、
「今年のチームは、いいところ多い。それぞれがそれぞれで、弱いところを補えるようなチームです。それだけに、チーム全体が、底上げされていて、レギュラーでなくとも、それぞれい力を発揮できるところが必ずあるから、皆、そう思って、しっかり練習をしてください」
 ということを言っていた。
 そのせいもあって、実際に、試合によっては、レギュラーですべて、先発メンバーを固めるということはしなかった。だから、ゆずはも、スタメンで試合に出ることもあり、
「大量リードをしている時、レギュラーが、守備固めに出てくる」
 ということも、十分にあったのだ。
 もっとも、その大量リードのきっかけを作ったのは、ゆずはのバットであり、前半で、勝負は決まっていたのだった。
 そんな三人は、
「三つ巴でもあり、三すくみの関係でもあった」
 というのは、
「それぞれに、一長一短あることで、誰かが誰かに強いという関係で、それがキチンと、三すくみを形成していて、お互いに自分を主張できなかった」
 というのだ。
 下手に自分を強く見せると、いつの間にか、自分の長所を消されてしまう。
 そんな関係が強かったのだ。
 というのも、
「三すくみというのは、自分が先に動いてしまうと、結局最後は、自分が食われてしまう」
 ということになる。
 つまり、一人勝ちをするのは、最後に自分を食った方になるので、当然先に動いた方が、負けだというのだ。
 これは、戦争などでもあることで、それを利用した作戦も取られることがある。
 つまり、動いてもいないのに、動いたふりをすることで、自分を狙っているやつが動き出す。
 なぜなら、自分が動いたことで、自分にやられる前に、こちらを狙っているやつを食ってしまおうと、動くからである。
 当然、こっちを狙っているやつは、やられる前にこっちを攻撃しようとしてくるのだが、それが作戦であり、こっちが動かなかったら、最初に動くのは、こっちをやっつけようとしてくるやつになるのだ。
 こっちにばかり集中してしまっているので、自分を狙っているやつに対しての意識は、少しなくなっている。それが狙い目で、自分が動かないことで、自分の天敵を、もう一方が攻撃して、やっつけてくれる。
 そうなると、天敵はいなくなり、自分の、
「餌」
 しか残っていないのだ。
 これが、自分が動かなくとも、動いたふりをすることで、戦場に動きをもたらし、自分の一人勝ちを狙うのだ。
 もし、それができないとなると、
「永遠の均衡が続き、人生を、均衡のまま終わらせることになる」
 ということであった。
 ゆずはは、そんな中において、自分たち三人が、
「三すくみの関係ではないか?」
 ということは、ウスウス感じてはいたが、自分たちが、どの位置にいるのかというのは分からない。
 一つ言えることは、
「自分は、ヘビにもカエルにも、ナメクジにもなれる」
 ということであった。
 ゆずはは、
「自分がヘビだ」
 ということになると、
「カエルと、ナメクジ」
 のどちらが、可愛そうなのだろうか?
 と考えた、
 いくら、
「自然の摂理」
 だと言っても、この関係は、実に気の毒なもので、
「無残で冷酷な運命だ」
 と考えるのだった。
 そう考えると、ナメクジもカエルも、同じくらいに気の毒だと思うと、その気の毒な思いは、自分にもあると思うのだ。
 それが均衡であり、
「三すくみの、三すくみたるゆえん」
 であった。
 しかし、自分がこの均衡を破り、しかも、自分が助かるためには、どうすればいいのかということになると、前述の、
「動いたふりをして、相手を欺く」
 という方法しかないのだ。
 となると、
「カエルとナメクジ」
 それぞれに、均等に可哀そうなフラグを立てるということになるのか、それとも、
「どちらかが可愛そうだ」
 と考えるかということだが、ゆずはとしては、
「確かに助かりたいという一心ではあるが、欺いた直接の相手が、いくら騙されとはいえ、動いてしまったことで訪れた悲惨な運命だ」
 ということを考えると、
「かわいそうなのは、ナメクジなんだ」
 と考える。
 もちろん、いくら、こちらの作戦がよかったとはいえ、動いてはいけない状況で動いてしまったのは、ナメクジだったのだ。
 本来なら、カエルの動きもしっかり見なければいけないものを、少しでも注意を逸らしてしまうと、一気に襲ってくるということを、本当の三匹による、
「三すくみ」
 であれば、
「動いてはいけない」
 ということを、本能が教えてくれるはずだからだ。
 だが、本能というほどのことがない場合は、さすがに動いてしまうだろう。
 それだけ、
「命の危険」
 というものほど、切羽詰まったものはない。
 ということになるのだろう。
 それを考えると、
「本当の三すくみによる、永遠の均衡というのは、命の危険を孕んだ。そして、本能というものを持った動物でなければ、保つことはできない」
 ということになるだろう。
 つまり、
作品名:誰が一番得をするか? 作家名:森本晃次