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誰が一番得をするか?

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「いくら、三すくみの均衡状態になったとしても、それぞれに、緊張感も違えば、性格も違っている。そうなると、おのずと動く者が誰なのか、最初から決まっていて、その通りになるという理屈が、歴史というものではないだろうか?」
 つまり、歴史のミステリーと言われるような
「本能寺の変」
 であったり、
「乙巳の変」
 さらには、
「坂本龍馬暗殺事件」
 などという謎のある事件だって、実は冷静に考えれば、分かるというものではないだろうか?
 これは、三すくみのような関係を想像し、誰かが動くつもりで動かなかったから、事件として動いてしまい、
「自分だけが悪者になった」
 ということではないだろうか?
 奇しくも、同じ時代にあった、
「川中島の合戦」
 その第四次の戦いの時、武田信玄の軍師であった、山本勘助が考案したといわれる、
「キツツキ作戦」
 というのがあった。
 これは、
「木の穴をくちばしでつつくことで、反対側に出てきた虫を取って食べる」
 というものである。
 謙信は、見破ったと言われるが、とにかく、山を下りて、信玄の前に現れた時は、全軍が、別動隊のいない信玄の前に現れたのだから、
「作戦は失敗だった」
 と言える。
 しかし、戦が長引いている間に、別動隊が、今度は後ろから迫ってきたことで、今度は、自分たちが、
「挟み撃ち」
 にされることで、不利になって、逃げだすことになったのだ。
 結果、引き分けということになるのだが、これは、
「1対1」では成立しない」
 という戦いであった。
 だから、歴史においての黒幕は、基本的に、
「三すくみの関係を作り出し、作り出したその中で、いかに自分の存在を目立たないところに置くか?」
 ということである。
 下手をすれば、
「暗殺された人間と、直接関係がない」
 と目されている人が暗躍していたとすれば、それこそ、
「完全犯罪だ」
 ということになるのではないだろうか?
 それを考えると、三すくみの関係さえ作っておけば、あとは、勝手に動いてくれて、主犯である自分たちは表に出ることはない。
 ということである。
 それでまんまと、殺したい相手は死んでくれ、しかも、殺した相手を、ゆっくりと始末すれば、完全犯罪となる。
 本能寺の変もそう考えると、やはり、一番有力な、
「容疑者」
 は、
「羽柴秀吉」
 ということになるのだろう。
 秀吉は、最後には天下を取った。
 そして何よりも、光秀を一気に倒したではないか。
 結果論で考えれば、
「あまりにも都合がよすぎる」
 と言ってもいいだろう。
 秀吉が直接信長を殺してしまうと、家臣団から総スカンを食らうのはわかり切ったこと。そうなると、誰かをけしかけ、殺させ、そして、そいつを自分で討ち取ることで、天下の取れるし、何といっても、殺させたことでの、
「口封じ」
 もできるということだ。
 皆、
「どうして、こんな簡単なことに気付かないのだろうか?」
 ということである。
 歴史であろうが、ミステリーであろうが、とにかく、動機という意味で一番あからさまに怪しいのは、
「それによって、一番得をする人間ではないか?」
 そう思って。秀吉の行動を見ていくと、
「怪しい以外の何者でもないだろう」
 何といっても、
「秀吉が信長を殺そう」
 という意識があったかどうかである。
 というよりも、
「秀吉の天敵が信長であった」
 とすれば、
「秀吉は光秀に強く、光秀は、信長に強かった」
 といえるかも知れない。
 しかし、信長の方が光秀よりも、位は上、何と言っても主君だからだ、光秀が、そこまでの関係を分かっていたかどうかわからないが、信長は恐れるがあまり、時々理不尽な態度を取っていたのかも知れない。
 そう考えると、光秀に信長を襲わせることは、光秀が三すくみに気付いていないとすれば容易なこと、まず、信長を殺させることで、目の上のたん瘤を葬り去り、そして、
「主君の仇」
 という大義名分をもって、堂々と天下を狙うことができる。
 そう考えるのが、一番理に適っているのであり、電光石火のごとくの作戦が取れたということなのだろう。
 ゆずはも、自分が今会社で三すくみを感じていて、そのうちの一人が、
「三すくみの中にいる」
 ということも分かっておらず、もう一人は、
「三すくみというものそのものを理解していない」
 というほどだったので、実に作戦を立てるにはやりやすい。
 ソフトボールをしていた時のような、三人が三人を生かせるというような立場ではないのだ。
 社会人になる、
「食うか食われるか?」
 という
「弱肉強食」
 の時代。
 問題は、
「まわりに知られることなく、自分の正当性から、この三すくみの関係を壊して、一人勝ちをできるかどうか?」
 ということになるのだ。
 それを考えると、
「誰が一番得をするか?」
 ということが三すくみにもたらす問題の出発点であると、考えるのであった……。

                 (  完  )
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作品名:誰が一番得をするか? 作家名:森本晃次