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バタフライの三すくみ

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「給与水準が、大卒よりも抑えられたからなのかも知れない」
 と感じるほどだった。
 しかも、今では、正社員というよりも、派遣社員の需要が高かったりするので、大卒よりも、専門的に学んでいる人の方が、重宝されるのではないだろうか?
 正直、
「総務」
「人事」
 ではないので、詳しいことは分からないが、専門学生を優遇するところも、実際には結構あるのかも知れないのだ。
 大学生を必要としないわけではないが、専門的な知識を持っている方が、
「そのうち辞められることを思うと、使えるうちに使おう」
 という考えがあったとしても無理もないだろう。
 そんなことを考えると、
「会社が社員を育てても、しょせんは、出ていかれてしまっては同じ、会社は学校ではないんだ」
 ということである。
 それは、プロスポーツ界にもあることである。
 分かりやすいところでは、プロ野球というものである。

                 腐ったミカンの法則

 プロ野球などでは、昔から、
「選手側に選択権」
 というものはあまりなかった。
 例えば、入団する時の、ドラフト制度というのもそうである。
 ただ、このドラフト制度というのは、最初からあったわけではなく、歴史が古いアメリカでも、最初は、
「選手と、球団の、自由契約」
 ということだったのだ。
 それがなぜ、
「ドラフト会議」
 というもので、選手を決めるのかということになったのか、それには、れっきとした理由が存在する。
 そもそも、
「ドラフト会議」
 というのは、どういうものなのかというと、今はだいぶ変わったところもあるが、
「シーズン終了前くらいに、選択指名選手を各球団で決めておいて、それを、会議の中で、指名していく。最初は、いい選手を指名することになるのだが、この順番も決まっていて、
「前シーズンの順位の低かったチームから、選択権があるということになる」
 というのだ。
 選手の中には複数球団が指名するような有名選手では、くじ引きになるのだが、最初に、選択選手を球団で決めてくる時、
「他の球団に指名されれば、その選手は指名を外し、他の候補の選手を指名する」
 ということになる、下手に競合して、くじに外れれば、次の順番が回ってくるまでの間に、その選手が残っているという保証はないのだ。
 ただ、
「もう一人の選手を指名したとしての、一巡する間に他の球団が指名してくれば、それは仕方のないことで、くじ引きは、しょうがない」
 ということになる。
 そういう意味で、
「ドラフト会議」
 というのは、結構頭を使っての
「凌ぎあい」
 ということになるであろう。
「指名順位を、最初の一巡は、シーズンの下位のチームから選び、次の一巡は、今度は逆に、上位からになる」
 ということを繰り返して、大体6巡目から、8巡目くらいの選手を指名することになるのだ。
 ということは、選ばれる選手には、選択権はないということになる。
 だから、選手側からすれば不満もあるだろうが、普通の会社だって、学生が面接に来て、それで合否を決めるのだから、学生に選択権はない。それを思うと、ドラフトで不公平を唱えるのはどういうものか?
「選手というのは、個人事業主のようなものだ」
 ということであれば、その通りなのかも知れないが、果たして、まだ、入ってもいないのに、そこまで言えるのだろうか?
 さて、このドラフト会議がどうして生まれたのかというと、要するに、
「お金」
 である。
「お金に、モノを言わせて、金のある球団が、いい選手をどんどんひっぱってくるのであれば、格差が激しくなる。弱い球団は、いつまでも、弱いままだ」
 ということが一つである。
 そしてもう一つは、これは球団側の問題であるが、自分たちで金を釣り上げておいて、今度は、
「契約金や、年棒が跳ね上がりすぎて、経営が傾いてくる」
 というところも出てくるのだ。
 そういう意味で、球団を公平にして、さらに、上り詰めてしまった契約金などを、普通に戻そうという目論見からであった。
 それが、
「ドラフト会議」
 というものの、元々の目的だったのだ。
 さらにプロ野球界では、このように、ドラウフ制度ができたことで、言われるようになったのは、
「選手の職業選択の自由はないというのか?」
 ということであるが、この場合は、企業の選択ということである。
 つまりは、
「選手にだって、行きたい球団があるだろう。好きな選手がいる。球団の教育方針に心酔している」
 などという考えを持っている人である。
 しかし、理由が、
「企業側の理由と、野球界の発展」
 というものだけに、選手の意向が反映されることはしばらくはなかったが、途中から、
「大学生以上であれば、逆指名」
 という形が許されるようになった。
 その頃になると、プロ野球に興味のなかった人間は、どんなものなのかハッキリとは分からなかったが、
 それによって、選手が球団を逆に指名することで、行きたい球団を、明らかにできたのだろう。
 ただ、問題は、それが叶うかどうかで、
「行きたい球団を逆指名した」
 ということは、それ以外の球団に、
「指名しないでくれ」
 という意思表示である。
 そうなった時、行きたい球団と水面下で交渉ができるのであればいいが、できないのであれば、
「もし、その球団が指名してくれなければ、プロ野球に行くことはできない」
 ということになる。
 下手をすれば、1巡目で指名されるはずだったが、1巡目は、他の選手が指名され、自分は二巡目以下となることも十分にある。
「指名される分、いいじゃないか?」
 ということになるのだろうが、その文、契約金や、年棒に大きな差が出てしまうだろう。
 だとすれば、
「他の球団で、一位指名を受ける方がよかった」
 と言えるのかも知れない。
 しかし、果たして、それでいいのだろうか?
「好きでもない球団」
 であったり、
「練習方法に致命的な問題」
 があったり、
「ドラフトで入団した選手が、皆、活躍せずに、トレードされたり、自由契約」
 になったりと、そんな球団であれば、誰が行きたいと思うだろう。
 それなら、
「少々、年棒が変わってきても、将来ある球団の方がいいだろう」
 と考える。
 また選手としては、その球団事情というものを考える。
 自分のポジションにレギュラーが固定されていなければ、
「今なら、すぐにデビューできる」
 とも考えるだろう。
 しかし、それはさすがに少し落胆的だ。
 ポストシーズンというものは、それを補填するためのシーズンで、フロントは、他の球団の選手に食指を動かしたり、ドラフトで得ようとするだろう。
 そういう意味では、自分が指名される可能性は高いに違いない。
 それを考えると、
「よほど、嫌な球団でもないかぎり、指名されればそのまま行けばいいか?」
 とも考えるだろう、
 だから、
「逆指名するかしないかというのも難しいところで、最悪、どこの球団も指名してくれない可能性だってあるのだ」
 それを考えると、
「実に、逆指名というのは、微妙だ」
 と言えるのではないだろうか?
 そもそも、逆指名というのは、どうなのだろう?
作品名:バタフライの三すくみ 作家名:森本晃次