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裏表の日本

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「軍隊は、天皇直轄であり。政府であろうとも、軍を掌握することはできない」
 ということである。
 陸軍であれば、
「参謀本部」。
 海軍であれば、
「軍令部」
 というものが存在し、そこが、戦争遂行を決断し、作戦なども、話し合われる、
 戦時下においては、それぞれの参謀本部と軍令部が一緒になって、
「大本営」
 というものを設立しているのだ。
 つまり、
「大本営発表」
 と呼ばれるものは、政府が出しているものではなく、軍が出しているものだ。
 大本営というところは、作戦を立案したりするところなので、セキュリティもしっかいrしている。
 もっといえば、
「戦争を始めるのは、天皇であるが、実際に外交交渉にて、戦争前夜に活躍するのは、政府である」
 ということになる。
 天皇は、そんな政府の意見を、
「御前会議」
 という形で、政府会議で決まったことを上奏される。
 そこで、戦争ということになれば、
「宣戦布告の詔」
 が言い渡されるわけだが、この際、基本的に、
「天皇は政治に口を出してはいけない」
 という、明治時代からの、慣習のようなものがあるのだが、それはきっと、
「軍に対して、絶対的な権力のある天皇が、政治にまで口出すようになると、いくら利権君主とはいえ、憲法の理念に関わることもあり、許されることではないのだろう」
 実際に、かつて天皇が、直接政治に関わってしまったことで、内閣総辞職に追い込まれたこともあった。それが、
「田中義一内閣総辞職問題」
 だったのだ。
 当時、日本が権益のあった満州にて、軍閥の張作霖が乗った列車が、爆発し、張作霖は、爆死したということであったが、当時の首相であった、田中義一が、天皇に事情報告にいった時、
「首謀者には、確固たるバツを与えることになる」
 と豪語していたのに、かなり経ってから、
「あの事件に関東軍は関与していない」
 ということを報告したものだから、天皇の不信感を買った。
「お前のいうことはさっぱりわからん」
 と言わせ、奥に引きこもってしまった。
 側近に、
「やつのいうことは分からないので、自分は苛立っている」
 ということを口にしたという話が、田中首相に伝わり、愕然とした首相は、1週間もしないうちに、
「田中内閣総辞職」
 ということになった。
 その時のことを昭和天皇は、かなり気にして、余計に政治には、
「関与しないようにしよう」
 と感じるのであった。
 だから、天皇が御前会議で発言したのも、一度きり、戦争遂行のための会議が行われていたが、すでに、沖縄も落ち、原爆投下、ソ連の参戦という状況においても、まだまだ徹底抗戦、
「一億火の玉だ」
 などという宣伝文句のように、戦争遂行を真剣に考えている連中もいた。
 そこで天皇は、
「自分はどうなってもいいから、日本民族の滅亡は避けなければいけない」
 ということで、ポツダム宣言受諾の意思を伝えたのだ。
 もっとも、これ以上の抵抗は、
「日本民族の滅亡」
 というのは、誰が見ても明らかなことであった。
 そんな戦争において、開戦時の首相である、東条英機は、すぐにジレンマに陥っていた。
 戦争を始めたのは、天皇であり、戦争指導者ということであれば、他の国からみれば、首相ということになるだろう。
 しかし、実際には、戦争指導どころか、
「政府の人間」
 ということで、
「戦争の立案を行う軍部には、入り込めない」
 のである。
 元々陸軍出身の東条英機なので、
「陸軍軍人」
 ということで知らされるべきなのだろうが、
「政府側の人間」
 ということで、
「首相が、軍の作戦や、現状の勝ち負けなど、報告という形で上がってきてもいいはずであったりする」
 これは、
「陸軍大臣と参謀総長を同時歴任できない」
 ということになる。
 これは、明文化されているわけではないが、慣習として、明治時代から受け継がれていることであった。
 そのため、ジレンマに陥った東条は、苦肉の策として、天皇に上奏し、
「陸軍大臣と参謀総長の同時歴任」
 というものをお願いするしかなかったのだ。
 しかし、その頃には、
「戦争を止められない状況にある」
 ということになっていた。
 そんな状況において、戦局は、完全に連合軍側であった。
 そんな状況において、
「戦闘が起これば、日本はかなりの被害を出し、撤退させられるのであった」
 しかし、戦争によう戦果報告は、大本営であり、
「大本営発表」
 なのだ。
 つまりは、
「大本営発表」
 というものが、いかにいい加減なものか、そんなことを知らない国民は、
「情報統制:
 によって、目くらましに遭い、下手をすれば、
「自分たちの直属の長」
 である、天皇すら、この惨状を知らなかったのかも知れない。
 天皇は、政府に対しては、一切何も言わないが、軍に対してであれば、徹底的にいうことができる。
 だから、226事件においても、クーデターが陸軍青年将校だということで、彼らの鎮圧には消極的だった。
 だから、軍は彼らに同情的であったが、実際には天皇の怒りを買っていたのだ。
 そもそも、殺されたのが、
「天皇の相談役」
 といってもいい連中ばかりだったのだ。
 しかも、天皇はこのクーデターの裏には、
「皇道派と統制派による権力争い」
 といってもいいだろう。
 そのことを分かっている天皇は、反乱軍に同情的であった軍首脳に対し、怒りをあらわにした。
「やつらは、私の大切な相談役を、敵対勢力だということで暗殺した反乱軍だ」
 ということにしたのだ。
 そもそも、軍隊の部隊というのは、
「天皇の軍隊であり、天皇の命令がなければ、勝手に動かすことはできない。
 それは、
「天皇大権に対する越権行為である」
 ということになる。
 いわゆる
「統帥権干犯」
 であるのだ。
 天皇から、
「彼らは反乱軍だ」
 ということで、天皇は、鎮圧に勤めることにした。
「お前たちがしないのなら、私が自ら指揮を執る」
 というくらいの勢いだったのだ。
 つまり、それだけ、天皇の力というのは、偉大なものであり。いかにも、
「天皇による軍に対しての権力は絶対なのだ」
 ということである。
 そんな226事件というものに象徴されるように、天皇は、軍部の直属の長であり、
「天皇しか名乗れない、大元帥」
 という力があるのだった。
 それでも、最後は、
「国家のため、自分はどうなっても」
 といって、無条件降伏を受け入れたのだ。
 無条件降伏を受け入れるということは、その国も運命は、戦勝国にある。
 まずは、
「戦争犯罪人の処罰」
 ということになるのだが、大日本帝国憲法の下では、政府が戦争に参加できないのだから、政府関係者をこのままでは裁くことはできない。
 となると、戦争の範囲をぐっと遡った形にて、
「満州事変」
 から始まったということにすれば、政府に対しても責任を負わせることができるということであった。
 だから、文官と呼ばれる人も裁かれることになったのだが、実際に逮捕される前に、自ら命を絶って人もかなりいる。実際の処刑者が、七人であったが、本来なら、もっと増えていたことは確かだろう。
作品名:裏表の日本 作家名:森本晃次