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マトリョシカの犯罪

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「自分の中で、絵を描く理屈というものを考えてみたからだった」
 それは、
「絵を描けない理由を自分で考えてみて、そこから、どうすれば描けるようになるか?」
 ということを考えることで、
「何とか、克服しよう」
 と考えるようになったのだ。
 まず、絵を描けない理由の一つとして、
「どこから描き始めるかが分からない」
 ということであった。
 その理由に、まず、
「絵のバランス感覚が取れない」
 ということが原因だと思った。
 例えば風景画などであったら、
「水平線や、地平線をどこに持って行くか?」
 ということであった。
 風景画とすれば、
「山と平地」
 あるいは、
「海と空」
 さらには、
「湖に映った山」
 などという、独特のパフォーマンスを描こうとするならば、
「水平線と地平線」
 というものをどこに置くかということが決まってくる。
 それは、天橋立で見るような、
「股潜り」
 とでもいえばいいのか、逆さから見た時に感じる水平線や地平線の位置というのは、相当違っているという錯覚を感じることになるであろう。
 さらに、今度は、
「遠近感」
 というものが問題になってくる。
 遠近感というのは、
「立体感」
 といっておいいだろう。
 絵というのは、平面に描くものだが、
「それをいかにして、平面ではない、立体に見えるかという手法が、絵というものの、醍醐味だといってもいいだろう」
 油絵などであれば、キャンバスと絵具の角度によって浮き上がらせることもできなくもいないが、鉛筆デッサンでは、単色ということなので、その濃淡でしか、表すことはできないのではないだろうか?
 ということになるのだ。
 そんな油絵ではできないことを、鉛筆デッサンでしようというのだから、
「油絵よりも、実は結構難しいのかも知れない」
 と感じるのだった。
 ただ、会社で狭いところでやるのだから、油絵などのようなキャンパスを使うことなどできるわけもない。
 やはり、鉛筆デッサンしかないのだ。
 ただ、
「最初のどこに、鉛筆を落とすか?」
 ということは、ある意味考えすぎだった。
 というのも、意識さえしなければ、いつも落とす場所は同じだからである。
「気にするから意識することで、先に進まないだけだ」
 ということになると、意識せずに、その通りに描いていくと、意外と簡単に描けるものだったのだ。
 そして、今まで描けなかった一番の理由が、
「人物画ばかりを書いていたからではないか?」
 と思った。
 そこで、最初は、
「建物にしよう」
 と思ったのだ。
 しかも思い立ったのが、
「難易度が最高に高い」
 と思われる、
「日本の城郭」
 だったのだ。
 天守と呼ばれる城であり、日本建築の粋を生かした、
「芸術中の芸術」
 といってもいいものである。
 ただ、一つ思ったのは、
「城のような難しいものを描いてみて、うまく行かないだろうから、どこがうまく行かないのかという理由が分かるのではないか?」
 と感じたのだ。
 そこで、最初に、
「日本の代表的な城はどこだろう?」
 と考えた。
 普通であれば、思い浮かぶのは、大きく分けて二つであろう。
 一つが、
「姫路城」
 であり、もう一つが、
「大坂城」
 だと感じた。
 姫路城は、正直、城の中でも難しい部類である。
 いわゆる、
「連立天守:
 と呼ばれるもので、それらを漏れなく描こうとすると、結構大変なことになってしまうことだろう
 しかし、
「大坂城」
 であれば、連立でもないし、天守のバランスから言っても、姫路城と比較しても、
「ダントツで、描けるような気がする」
 と感じたのだ。
 実際に、バランスを見ていると、かなりキレイだし、破風と呼ばれる屋根のバランスもよかったのだ。
 特に正面から見たところだけではなく、横から見ても恰好いい。
「見れば見るほど、大坂城の魅力に魅了される」
 といってもいいだろう。
 大坂城というのは、ただ大きいだけではなく、都心部にあるということからも、まわりからの景色や、まわりを含めた景色、それぞれに、格好の良さが漲っているのであった。
 昔行った大坂城の壮大さを思い出してみると、
「今まで見た城の中でもダントツだな」
 と思うのだった。
「何と言っても、天下人の城」
 さらに、今も大都市になっている
「大阪の街に聳えている偉大な城」
 というイメージが強い。
 姫路城も、
「劣ることのない偉大さを誇っている」
 とは思うが、あくまでも、個人的感想という意味では、
「姫路城よりも、大坂城」
 という雰囲気だ。
 もっとも、子供の頃に見た怪獣モノの映画で、怪獣が、
「大坂城を叩き壊す」
 というシーンがあって、格好よかったのだ。
 姫路城はそうもいかない。実際に、建った時からずっと、壊れることなく、空襲にも燃えずに、数少ない、
「現存天守」
 なのだから、いくら映画でフィクションだとはいえ。
「姫路城を叩き潰す」
 などというのは、許されることではないということになるに違いない。
 戦時中など、
「爆弾は落ちたのだが、不発弾だった」
 ということで、ただでさえ、
「奇跡の城」
 と呼ばれているのだ。
 今や、国宝であり、世界遺産ともなっている城だ。
「いくら映画でも許されることと、許されないことがある」
 というものである。
 そんな意識で、大坂城を描いてみると、自分で想像していたよりも、結構うまく描けた気がしたのだ。
 そのおかげで。事務所では、昔の写真を持っていき、それを元に描いてみたのだ。
 お城に関しては、学生時代に、結構好きだったので、よく見に入ったりしたものだ。
 友達も結構、城が好きなやつがいて、近くは結構何度もいってみたりしたが、遠いところでも、夏休みなどは、アルバイトで稼いだ金を、
「城廻りの費用」
 として貯めておいて、友達と一緒に行ったものだ。
 城廻りの一環として、温泉旅行も兼ねることで、自分としては。
「充実した旅行だった」
 といえるだろう。
 その頃は、
「絵が苦手だった」
 ということで、写真を撮りまくった。
 といっても、写真自体もそんなに好きではない。自分が写ったり、普通の風景などには、写真として撮ることに、一切の興味もなかったのだ。
 しかし、城だけは違った。その建築形式に、興味を持ったから、余計に、
「画像に残したい」
 と思うようになったのだった。
 お城を写真に撮っていると、
「角度によって、写りの違いが、まったく違うということが分かってきた」
 それが実に、格好よく見えるのだ。
 それまで、
「写真が嫌いだ」
 と思ったにもかかわらず、途中から、
「城の写真に限っていえば、その限りではない」
 と思うようになっていた。
 その時は、よく、旅行先で知り合った女の子と仲良く鳴ったりしたものだった・
 というのも、
 大学生になると、
「彼女がほしい」
 という気持ちが大きかった。
 しかし、好きな女の子と仲良くなれるわけではなく、クラスメイトの女の子に声を掛けるのも苦手だった。
 男子の友達をたくさん作ったところに持ってきて、好きな女の子ができてしまったとして、
作品名:マトリョシカの犯罪 作家名:森本晃次