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マトリョシカの犯罪

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 しかし、
「それは、いつも、誰もが同じ場所だとは限らない」
 あの人は、
「こっち」、
 この人は。
「あっち」
 ということになるはずである。
 そんな時、親身になって、相談に乗ってくれたのも、この二人だった。
 おかげで、何とか、引っかかる部分を乗り越えることができて、そこから
「プログラムの習得」
 までは、結構早かったといってもいいだろう。
 一生懸命に勉強をしているつもりだったが、それでも、さすがに前の二人に追いつくのは結構難しかった。
 それでも、何とかなったのは、持ち前の、
「何かを作ることが好きだ」
 という思いからだ。
「自分で作ったのがオリジナルだ」
 と思うと、
「最初の頃、まったくプログラムというものが何なのか分からなかった頃が懐かしく感じられる」
 というくらいだった。
「営業にならなくて、本当によかった」
 と感じた。
 営業というのは、相手が人間なので、
「どれほど理不尽なことを言われても、聴かなければいけない」
 というような話もあった。
 今の時代であれば、そんなことがまかり通ってはいけないだろう。
 パワハラになってしまうからだ。
 それは、相手が得意先の社員であっても、同じことで、社内で、
「取引先の営業の人に無理強いしない」
 ということが、コンプライアンスと言われている。
 何と言っても、
「営業に対してのバイヤー」
 という立ち場を利用して、相手に対して、
「お前のところの商品を買わない」
 という無言の圧を掛けることで、優位な立場に誘い込み、理不尽な行動に入り込んでしまう。
「相手だって、自分がされたら、どうなるか?」
 ということくらい分かりそうなものなのにな。
 と、立場が分かると見えなくなるものがあるのではないだろうか?
 そんな会社ではあったが、バブルが弾ける前からあった構想の中に、
「全国展開」
 という事業があった。
 それは、そのもそ、親会社が、
「元財閥系」
 というところで、それぞれの業界ごとに、地元企業を買収することで、バブル時代までは、大きくなってきた。
 実は、この財閥グループだけではなく、他の財閥グループも同じようにして大きくなってきたのだ。
「今は、先を行く、他の財閥グループに、追いつけ追い越せという感じで、社内の合併が続けられていた。
 そもそも、森山の会社は、
「食品問屋」
 という部門であった。
 まずは、全国チェーンの前に、東京関係の会社と、九州の会社の合併が行われていた。
 ここのグループの、食品問屋と言われる企業の子会社は、7社をもっていた。
 ほぼ、それぞれの地域に一つという感じであろうか。
「北海道、東北、関東甲信越、中部北陸、関西。四国中国、そして九州沖縄という地区が、それぞれの地区で、
「地元大手」
 ということで君臨していたのだった。
 他の財閥関係も同じで、元々は、財閥関係や金融関係だけの企業だったが、今はいろいろな業界に進出するのが当たり前となっていた。
 戦前などは、
「財閥が力を持っていた」
 そんな連中が、幅を利かせ、軍国主義の日本を支えていたということから、戦後に、財閥解体が行われたのも、無理もないことだった。
 しかし、母体自体は生き残り、今の企業の基礎を築いていた。
 だから、財閥系の企業は、
「ぼ愛は生き残っていたが、まわりを固める企業がなかった。
 しかし、高度成長期を境に、占領軍も次第に撤兵していく中で、地元企業の買収を進め、それぞれの地区の企業を使い、
「財閥系の食品問屋」
 という形式で、進めてきたのだ。
 だが、やはり、
「全国共通」
 という形が理想であることは間違いない。
 そこで、合併の話が持ち上がるのは当たり前というものだ。
 この合併というもの、実は結構難しい。
 社員の問題や、給与問題という総務や人事の問題であったり、営業のやり方の統一化。さらには、一番難しいのは、
「システムの統合」
 であり、下手をすれば、運用がまったく変わってしまうということで、得意先や仕入れ先などに、いろいろな手間をかけるに違いなかった。
 それも分かっていることであり、一つの地域の合併というのだけでも、数年はかかるだろう。
 そうなると、一気に全国を統一する。
 などということは、不可能に違いない。
 なぜなら、
「それだけの対応を行う絶対人数がいない」
 ということである。
「時間差で同時に」
 ということは、2,3社だったら無理でもないかも知れない。
 しかし、
「本番を同じ時期に」
 というのは、実質的に不可能であった。
「最悪なことばかり口にして、ネガティブになるということは、あまりいい傾向ではないだろう」
 といえるのだろうが、実質的にはそうもいかない。
 そういう意味で、システムの人間は、
「絶えず最悪のことを考える必要がある」
 ということであった。
「もし、入れ替えに失敗したら?」
 ということになると、入れ替え前の状態に戻し、滞りなく、業務を翌日からもおこなっていく必要があるということだ。
「そう、システムの人間は、絶えず最悪の事態を想像して動かなないといけない」
 ということは、
「何かがあり、システム移行ができなくなった場合、何時であれば、システムを復旧し、元の状態で、業務ができるかということを逆算し、ある時点で、移行を断念し、そこからは、移行以前の状態に戻すことに全力を尽くす」
 ということになるのだ。
 もちろん、
「元の状態に戻してからの動作確認も必要なので、そこまで計算に入れてのことである」
 ということになるのだ。
 実際に元のままに戻すことで、
「また、他の日に行わなければいけない」
 ということで、2度手間3度手間ということになり、神経をすり減らすというものであった。
 もちろん、最初にしなければいけないのは、
「どうしてうまく行かなかったのか?」
 ということの原因究明であり、この作業にどれだけ掛かるかというのが、難しいところであった。
 実際に調査にどれくらいの時間が掛かるのか? それが分かるくらいであれば、ひょっとすると、あの場で解消できたのかも知れないが、あくまでも、運用重視、システムの検証に、顧客を引っ張り込むわけにはいかないのだった。
 さて、だが、その時の、九州と東京の企業の合併はうまくいった。
 システム移行にも問題はなく、比較的、スムーズに行った。
 ただ、各部署内で、あるいは、各部署間での
「意思の疎通」
 は、難しかったのだった。
 元々それぞれの会社のやり方に誇りを持っている社員が多いということで、
「どっちかのシステムに変えてしまう」
 というよりも、お互いに歩み寄る形での方がいいかも知れない。
 という意見の元に、そういうやり方を行うことで、
「不公平もないだろう」
 ということであったが、その理屈を分かっているのは、システムと、一部の住宅連中くらいであった。
 だから、どちらの会社も、
「相手の会社に、こっちが合わせてやっている」 
 というような不満を抱いていた。
 特に東京の本部では、
「立場的にはこっちが上なのに、何で、向こうに合さなければいけないんだ?」
 としか思っていない。
 それこそ、
作品名:マトリョシカの犯罪 作家名:森本晃次