サナトリウムの記憶
の時代には、存在していないはずのものだ。
それを考えると、
「戦前の小説や歴史資料を見ておくことが戴せないである」
といえるであろう。
大団円
湿気のある陰湿な部屋は、今までの感覚からいけば、最悪の世界であった。
しかし、明かりが見えてくるようになると、その部屋は、実際には、そこまで嫌だという雰囲気ではないように感じられたのだった。
その場所にいると、ベッドに寝かされているのを感じ、先ほどまで陰湿で冷たいと思っていた印象が、実はそうでもないと思われた。
最初は、まるで、監獄にでもいるような感じで、牢屋の中では、トイレもベッドも一つだけで、まるで、
「捕虜にされたかのようだった」
それを思うと、大日本帝国を思い出した。
「戦陣訓」
における、
「虜囚の辱めを受けず」
というが、確かに捕虜になるということは、
「何をされるか分からない」
ともいえるのだ。
昔の満州国で存在した部隊の中で、
「丸太」
と呼ばれる捕虜が、陸戦協定で決められた捕虜に対する扱いに対して、
「常軌を逸した」
かのような状態になっているので、
「捕虜になることを思えば」
ということも、あながち、ウソだということはないのではないだろうか?
だからといって、
「玉砕」
や、
「特攻隊」
のようなことが許されるというわけではないが、少なくとも、
「今の日本国民には、想像を絶する世界だった」
といってもいいだろう。
実際に、
「捕虜に対しての、ひどい扱いは、日本芸に限ったことではない」
そもそも、明治時代の日本は、戦争において、
「これほどない」
というくらいに、捕虜に対しての扱いは、慈悲に満ちていて、
「国際法を遵守する」
という意味で、これ以上ないというくらいの、
「素晴らしい軍隊だった」
といっても過言ではないくらいだった。
しかし、他の国でも、
「軍隊が民間人を虐殺する」
などというのは、ざらにあったこと、日本も、南京事件などを大げさに言われるが、どこまで、
「盛っている」
といっていいのか分からない。
何といっても、
「相手が公表している被害者の数が、当時の、南京市民よりも、はるかに多いというのはどういうことであろうか?」
要するに、
「語るに落ちる」
とはこういうこと、
「巨大なブーメランが飛んでくることになる」
といっても過言ではないだろう。
それを思うと、
「大日本帝国」
というのは、
「他の帝国主義国家に比べても、マシだったのかも知れない」
と感じるのだ。
まさに、
「勝てば官軍」
とは、このことであろう。
戦争というと、時代的にも、いろいろな問題がある。終戦とともに、敗戦国に限らず、勝戦国であっても、
「証拠隠滅」
のための、工作が必要になったりする。
そんなことを考えると、大日本帝国にあった、特殊工作部隊であったり、特殊部隊などというものは、
「証拠隠滅」
に躍起になっていたことだろう。
「証拠がないのが、その証拠」
といってもいい。
「ポツダム宣言を受け入れる日を決めておいて、そこから、証拠隠滅に走る」
だから、ソ連が、満州に攻めこんで、その日から1週間ほどでの、終戦ということになるので、それまでに、すべての証拠を隠滅しなければいけない。
一番の問題は、
「生存している捕虜の始末」
ということだっただろう。
言語を逸する言葉なので、ここでは、公表できないが、一人として、残してはいけない。
ただ、抹殺するだけでなく、
「穴の中に葬らなければいけない」
というわけだ。
何といっても、莫大な、実験結果の資料。
「それの焼却だけで、焼却炉がいくつもあったにも関わらず、全然足りない」
という話を聴いたことがあったが、そんな状態で、よく、
「証拠隠滅」
ができたものだ。
「某国が絡んでいる」
というのも、なまじウソではあるまい。
といえるだろう。
そんな中で、これは、史実び残っている、部隊ではないのだが、別の部隊として、こちらは、まったくの、
「根も葉もないウワサ」
と言われているが、その部隊というのが、
「記憶喪失に追い込む研究」
だというのだ。
それだけの日本軍の行ったことを、捕虜や、関係者に喋られてはいけないわけだ。
そのために、殺害するとしても、数の多さは、いかんともしがたい。
だから、抹殺するのではなく、
「記憶から抹消してしまえば、何も証言ができない」
ということで研究されていたという。
表向きは、
「ロボット開発」
のようなものだったという。
実際に、最初は本当に、
「ロボット開発」
だったのだ。
それだけ、ロボット開発を真剣に考えていたのだろうが、戦争状態が怪しくなってきたことで、軍の方とすれば、
「敗戦した時のこと」
というのを、真剣に考えなければいけなくなった。
それを思うと、
「証人になりそうな人の記憶を消す」
ということと、さらにその先には、
「人間を機械的に洗脳する」
という研究も並行して行っていたようだ。
そのために、
「マルタ」
の一部をこちらにもらい受け、実際に、研究していたという。
終戦時は、こちらの証拠隠滅も大変だったようだが、そもそもウワサにもなっていないのだから、そこまで慌てる必要はなかったのであろう。
「ここのサナトリウムがどういうところなのか?」
ということは、最初は秋元には分からなかった。
そして、いろいろ考えてみるところで、
「そういえば、以前、何か似たような小説を読んだことがあったな」
というのを思い出した。
小説というのは、正直恐ろしいもので、それが、真実を示していれば、
「これほど、恐ろしいことはない」
といえるようなものだった。
それこそ、
「戦時中の、人体実験を行っていた施設が、不条理なことを行ってはいたのだが、結果それが、今の時代に受け継がれ、必要とされる研究」
あるいは、
「やむを得ず」
というべき研究に、
「携わっていたのだ」
ということになると考えると、その恐ろしさは、考えられないといってもいいだろう。
時代的には、戦後から、高度成長時代にかけての社会派小説っぽくて、その元となるのが、
「戦勝中における、秘密研究所」
ということで、まさに、例の
「証拠はないが、限りなくブラックな、組織的研究所」
ということをテーマに描いたものだった。
それをプロローグで説明し、そのまま、
「あたかも、実際にあったことであるかのように、実しやかに囁くような書き方をしていた」
というのである。
そして、その本では、明らかに証拠がないことを、
「某国も関わっている」
と書いている。
そうでなければ、
「これから、敗戦を迎える」
という大混乱の中、あそこまで鮮やかに証拠を消し去るなど、敗戦国だけで、そんなことができるわけもない。
そのため、