力の均衡による殺人計画
基本的に、石塀になっていたところを、表に向けた事務所という形にして、表を、コンビニの駐車場のような形にして、数台が停車できるようにした。元々の選挙事務所の駐車場は、敷地内にあり、そこを、選挙カーなどを置けるようにした。そちらは、自家用車と同じところに置くようにしたのだ。
建物の中は、一階部分は、選挙期間は、選挙事務所にして、選挙期間以外は、
「選挙事務所」
を電話連絡として使うだけで、それ以外には、
「デイケア」
などの福祉関係の事務所として使ったりしていた。
二階部分では、地元の社会振興のための事務所として設立した。
彼が、地元の代表として国会議員を行うのは、地元振興のためであり、その最初の目標としては、
「地元産業の新興」
を考えていたのだ。
地元産業を、他県に売り込むための、新興事務所を設立し、そこから、政治家としての人脈などで、売り込んでいこうという方法であった。
その方法では、一定の成果があり、二階を事務所として使っていることも、十分な力になっているということであった。
実際に他県からも、
「この街の特産物を宣伝したい」
という話が舞い込んでいる。
その見返りとして、
「彼らの特産物の販売に一役を買う」
ということで、それぞれにメリットがあり、しかも、特産品も売れるというありがたいことになっているのだった。
そのおかげで、二階部分を、
「他県の名産の特売所」
ということで、特売価格で提供できることから、利用者から、喜ばれていた。
休みの日などにんあると、二階は、特産品を買いもとめる人でいっぱいになり、
「我々の打った特産品も、向こうで、これくらいの賑わいを見せているんでしょうね?」
というと、
「そうですね、売上推移を見れば、かなりのものでしょうね」
と、この企画を始めてから、一気に伸びる売上グラフを見ると、一目瞭然だったのだ。
「今回は、そろそろ選挙が迫っている」
ということで、二階の賑わいだけではなく。一階の選挙事務所としての、忙しくなってきた。
二階部分は、以前から、
「休日のみの営業」
としていたので、それで、何んら問題はなかった。
一階部分の忙しさは、やはり、
「選挙といえば、戦も同じ」
と言わんばかりに、関係者はいきり立っている。
頭に鉢巻きを巻いて、ダルマを用意しているあたりから、次第に、
「選挙という、戦モード」
に入っていくのであった。
投票日は、ちょうど今から一か月後、そろそろ、メンバーも決まっていて、作戦会議が、毎日のように、行われていたのだった。
完全な臨戦態勢というには、まだ少しかかるが、気持ちの上では、完全な臨戦態勢であった。
特に、後援会長ともなると、いろいろな人脈に繋ぎをつけたりと大変である。
もちろん、議員の秘書も大変だろうが、そちらは、
「表の仕事」
であり、裏の仕事は、
「後援会長」
の仕事ということになるのであった。
そんな選挙前夜ともいうべき選挙事務所において、前日までとまったく違った様相を呈するようになったのは、
「そろそろ選挙ムードが、世間でも、ニュースになったりし始めた頃だったのだ」
ということであった。
選挙関連の報道で、マスゴミが来るのであれば、それは当然のことであるが、翌朝やってきたのは、パトカーに、救急車であった。
「何があったんだ?」
と、それは世間でも騒がれることであろう。
何しろ、もうすぐ衆議院選挙であり。
「現職として、続投を目指している」
というのだから、この選挙区では、注目を浴びるのは、当然のことであった。
「夜の静寂をつんざくように、パトカーと、救急車のサイレンが、交差して走ってくる。いかにも、喧騒とした雰囲気は、身体を凍り付かせるだけの十分な力が漲っているかのようだった」
と考えれば、どれだけの大騒ぎになったのかということも分かりそうなものだった。
しかも、問題が、
「選挙を控えている、現職の衆議院議員」
ということもあって、問題は、大きかった。
さらに、何があったのかというと、
「結局、救急車に乗ることはなかった」
ということであった。
というのは、警察が駆けつけた時、救急救命の人が倒れている人を見た時、
「死んでいる」
ということが分かったことで、すでに救急車には、載せられないということになったのだ。
となると、後は警察の問題だった。
状況から、
「自殺なのか?」
「事故なのか?」
あるいは、
「殺人なのか?」
ということになるわけだが、まずは、通報者がいるわけで、その人に話を聴くしかないということだったのだ。
半月前
通報があった時間は、早朝だった。
まだ、真っ暗な時間だったということもあって、時間とすれば、4時前くらいっだったかも知れない。
「そんなに早い時間に?」
と刑事が聴くと、一人の女性が、震えながら、これ以上ないというくらいに、身体を縮めて、
「え、ええ、旦那様は、朝いつも早いんです。たまに、私どもがいる部屋の前を通りかかった、夜の当番の人に、挨拶をしてから、時々、表を散歩されるんです」
と、その女性がいった。
その女性は、どうやら、この家の、家政婦のようで、数人の家政婦が、家政婦の寝泊りできるところで待機しているようだ。夜中も、当番で、起きているようにしているとのことで、朝の散歩はその当番の人が、
「お見送りする」
ということになるようだ。
そのお見送りを今朝は、することはなかったといっているのだ。
「じゃあ、今朝は、旦那さんは来なかったというんだね?」
と刑事が聴くと、
「ええ、そうなんです」
と家政婦がいうと、
「散歩がないというのは、時々あるのかね?」
と刑事は聴いた。
刑事とすれば、
「散歩というのは、毎日続けるから効果がある」
と思っていた。だから、
「たまに、出てこない日があるのは無理もないことだが、それ以上に、あるということになるのかな?」
と刑事がいうと、
「ええ、そうなんです。でも、それも、パターンが分かっていることであって、ご主人様は、いつおもお散歩するとは限りません。たまに、選挙事務所の方で、朝早く起きた時には、お仕事をされていることもあります。これはごくたまにですが、事務所の方で飲酒をされて、そのまま寝てしまっていたこともありました。私たちはそれが怖いので、おご主人様が、いつもの時間に散歩に出られない時は、選挙事務所の方に、出向いていくことにしているんです」
というではないか。
「じゃあ、今日も、選挙事務所を見に行ったというわけですね?」
「ええ、事務所の掃除も私たちの仕事ですから、来なかった日だけ阿、一番最初に事務所の掃除をするようにしているので、それだけのことだったんです」
というので、
「今日ここに来てみると?」
と聞くと、
「ええ、机の上にうつ伏せになって倒れておられたので、これは、てっきり酒の飲みすぎで、倒れているのだと思いました」
というので、
「近寄ってみると、様子がおかしい?」
作品名:力の均衡による殺人計画 作家名:森本晃次