力の均衡による殺人計画
という、そういう動きはないようだ。
そのおかげで、下馬評として、
「ほぼ、今のソーリの続投が決定しているようなものだ」
ということで、
「出来レースではないか?」
と言われているほどだった。
それでも、候補は数人いて、ただ、誰もソーリの器としては、
「帯に短したすきに長し」
ということであった。
とは言っても、
「一番、ソーリとしてふさわしくないのは、今のソーリ」
ということなのだが、
「それ以外には、誰を押していいのかということが分からない」
つまりは、
「すべてにおいて、消去法なのだ」
ということだ。
「誰がふさわしいのか?」
ということではなく、
「誰でなければいいのか?」
というところから考えていき、
「誰でなければマシだ」
というところから入って、結果、ソーリの椅子を捕まえるということになるのであった。
今回、そんな中で、一人、総裁候補の人がいた。
この人は、正直、
「父親は、ソーリ経験者、祖父もソーリ経験があり、その代わり、やったといっても、当時のソーリが病気がちのため、代理というような形でのソーリだったのだ」
おかげで、父親からの選挙基盤を頂いたことで、票に関しては安定していた。
しかし、祖父gは、父親ほどの力があるわけではない。
一番の問題は、国会議員の間に、
「自分の地盤を広げた」
というようなことをしたことはなかった。
保守的に、自分のところを守るということで、特に先代の基盤を切り崩さないようにしようとする気持ちに表れだった。
確かに、家系が完全な、
「政治家の家系」
であり、しかも、党の中心人物で、いかにも、そのサラブレッドの血を受け継いでいたのだ。
しかし、問題は、今の時代に、
「サラブレッドであって、問題ないのだろうか?」
ということである。
そもそも、今度のソーリ候補は学者肌であり、政治家というわけでもなかった。
「変わり種」
ということで印象が深いが、それでも、勉強して、成績がトップクラスであることで、学校関係者からの用は大きかったのだ。
与党の総裁選は、ほとんど、競争相手も今回はいなかったので、現職のソーリが、そのまま総裁となった。
しかし、それはあくまでも、
「党の総裁」
というだけで、
「国の首相」
というわけではない。
そのためには、衆議院議員選挙で、過半数を取って、政権を取らなければいけない。
確かに、与党が、圧倒的に有利なので、
「さすがに、政権交代はありえないだろう」
というのが下馬評であるが、逆に、
「圧倒的有利」
と言われているだけに、蓋を開けてみると、
「接戦で、実際には危なかった」
などということになると、今度は党内で、
「あのソーリで大丈夫なのか?」
ということになるのだ。
そうなると、
「ソーリ下ろし運動」
というのが巻き起こるかも知れない。
前回の、
「オリンピックソーリ」
のように、また、元老が出てきて、
「君は、もうここで後進に譲りなさい」
などということになりかねないだろう。
せっかく、総裁選に勝ち残ったのだから、ここまでくれば、それも嫌だと思うことだろう。
そうなると、自分の派閥だけでは、どうにもならないので、他の派閥の取り込みも視野に入れることになるだろう。
だとすれば、さすがに、元老たちも、それくらいのことは分かっているだろうから、
「ソーリが言ってきても、協力はしないこと」
と、先に手を打っているに違いない。
こうなってしまっては、八方ふさがりになり、辞めざるを得ないだろう。
しかし、そうなると、
「後を誰が引き継ぐのか?」
ということになり、下手をすると、
「老害」
と言われる一度引退した人たちが、自分の言う通りになる、一種の、
「傀儡」
をつくることで、政府を牛耳ろうとすることだろう。
昔から日本は、
「傀儡」
というものを作るのが得意で、特に、満州国などがいい例であっただろう。
それをいいことに、北京の近くにもたくさんの傀儡政権を樹立したのは、
「シナ事変」
の時だったのだ。
その傀儡を、政府は作り上げて、再度政権の座に着こうなどという老害もいるかも知れない。
実際に、そんな政権を維持するだけの力が、今の政府にあるかどうかは、疑問である。
「傀儡をつくるといっても、それだけ力もいれば、金もいるだろう」
ということである。
作れば作っただけ、維持することも大切だからだ。
だが、実際に今は黙っている元老のような、
「老害連中」
は、何を考えているのか不気味だったが、とりあえず、衆議院選挙までは、老害たちの目立った動きはなかった。
「このまま、とりあえず、様子を見ながら推移するのだろうか?」
と少し不気味さを感じさせながら、問題の衆院選に突入するのであった。
今回は、やはり、
「与党が圧倒的に有利」
ということで、野党側は、正直もたもたしていたのだ。
この街、K市にある、選挙事務所が、
「閑静な住宅街」
にあった。
自殺?
その場所は、平成の頃に整備された、
「新興住宅地」
にあったのだ。
K市では、いくつかの選挙事務所が乱立していた。
「K県の第七選挙区の中心地」
となっていたのだ。
ここでは、従来だったら、政府与党が、ずっと幅を利かせていたのだが、その幅を利かせていた人は、前述のような、
「政治家家系」
として、サラブレッドだったのだ。
実はこの地区では、そういうサラブレッド的な人が多く、野党側にもそういうところが多かったのだ」
この野党第一党の事務所は、元々、世襲ではなかった。ただ、叩き上げでここまで来た人で、政治家としても、今まで何期も、政治家として、貢献してきた。
この人が強かった理由としては、
「地元を大切にする」
ということが強かった。
衆議院議員としては、3期目になるのだが、これまでは、極端なほどの、
「地元ファースト」
を貫いてきた。
さすがに一期目は、なかなかやりたいこともできなかったようだが、自分がやりたいことを貫いていくうちに、結果を出せるようになってきた。その状態が、実によく、地元民に写っていて、今では、
「世襲の政権与党」
の人を脅かすほどの票を集めていた。
だから、この選挙区からは、2名が国会議員に選出されるのだが、選挙前から、
「当選確実」
といってもいいほどだった。
ある意味、
「一騎打ちなのだが、問題は、票差がどの程度か」
というだけで、それによって、中央での、
「微妙な位置関係が変わる」
という程度で、地元では、
「二大政権」
ということで、ほとんど、どちらが上ということはなかったのだ。
そういう意味では、政党の位置関係は、平和であった。だが、それぞれの事務所においては、
「白黒つけたい」
という思いが強いのか、そのままで、
「どちらが強い」
ということがないので、それぞれに、士気が下がるというのか、お互いの立場が分からないことで、モヤモヤとしたものがあった。
どちらの事務所側には、
「名参謀」
と呼ばれる人がいる。
昔から、特に戦国時代などでは、
「名参謀」
作品名:力の均衡による殺人計画 作家名:森本晃次