小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

力の均衡による殺人計画

INDEX|14ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

 彼女は、レストランのウエイトレスであったり、ドラッグストアーの店員などをしていたという。
 さらに、その前は、水商売のようなこともしていたというが、体調を崩して辞めたのだという。
 ただ、それは、本当は言い訳で、実際には、
「嫌な客に、粘着されたことで、精神的に、病んだ部分があって、水商売から、足を洗ったのだ」
 というのだ。
 水商売の頃は、
「イケイケ」
 という雰囲気だったが、今は清楚な雰囲気で、それが、本当に板についていた。
 そのついている板を見つけたのが、息子で、その中の部分を実際に、剥がすことができるのが、旦那なのかも知れない。
 それを思うと、
「私は、ここにいることで幸せになれる」
 という思いがあったのも事実だが、
「いつの間にか、何かが狂ったかのような気がする」
 と感じたのだが、その理由は、
「あの義母のせいかも知れない」
 と、感じるようになったのだ。
 だから、その意味もあって、
「盗聴を始めた」
 のであった。
 義母に対して、疑問を抱いたのは、実際に、自分たちといる時と、義父と二人きりの時で雰囲気が違う」
 ということであった。
「雰囲気と言えばいいのか」
 それとも、
「声のトーンが違う」
 というのか、部屋から聞こえてくる声を耳を瞑って聞いていると、義父の顔は想像がつくのだが、義母に関しては、まったく想像がつかない。
 部屋から出て、家族と一緒にいたり、食事の時などは、まるで、
「借りてきた猫」
 のようであった。
 その様子を感じていると、その時の顔は目を瞑って想像すれば、浮かんでくるのだが、義父と二人基地の時に聞く、その声は、
「まったく、顔の想像が浮かんでこない」
 ということであった。
「そんな、借りてきた猫」
 であったり、
「部屋の中では、存在感が、一気に倍増するかのような雰囲気の違いは、まったく別人のように思えて仕方がない」
 のだった。
 ただ、そんな夫婦が、
「あれで、よくうまくいくな」
 と感じていると、思っていたが、
「ははぁ、なるほど」
 と思える部分があった。
 しかし、それは、実は幸恵にとって、我慢のできることかどうか、最初は分からなかった。
 というのも、
「二人の夫婦生活」
 にあったのだ。
 二人の生活は、最初だけを見ていると、まるで、
「義母に洗脳され、いいなりにされているかのように感じられた。
 しかし、ベッドの中に入ると、二人の立場は完全に逆転する。
 何と、あの義父が、義母に対して、罵声を浴びせているのである。
 しかも、
「メス豚」
「この淫売」
 などとなじっているのだ。
 普通なら、
「何をいう」
 と逆らうであろう義母が、この時は、
「悦びの声」
 を上げるのだった。
 しかも、よく聞くと、
「ムチでしばいている」
 というような音まで聞こえる。
「ああ、いや」
 と、甘いネコナデ声を上げている母親は、普段の様子でも、先ほどまでともまったく違う。
「二重人格」
 などという、甘っちょろいものではなく、本当に多重人格のようだ。
 そんな様子に対して、義父はたまらないと思う性癖を持っているのだろう。
 それを思うと、
「女というのは、実に恐ろしい」
 と感じるのだが、同じような血が自分にも流れるというのは、分かっていた気がした。
 その時、幸恵は、
「私はまさか、義父を愛していたのではないだろうか?」
 と感じたのであった。

                 異常性癖

「確かに、夫を愛しているのは間違いないと思っている。でも、義父への思いを感じると、その気持ちが少し揺らいでくるのだ」
 と感じた時、幸恵は、
「これって同情なんだよな?」
 と自分に言い聞かせているのだった。
 ただ、人の愛情らしいものをあたえられずに育ってきた彼女にとって、この家での家庭を、
「これが、普通の暖かい家庭だ」
 と思っていた。
 しかし、実際には、昔からの、
「家の伝統のようなものを引きずってきているのだった。
 そもそも、息子の孝弘が、幸恵を、
「自分の妻に」
 と望んだのも、こんな家で育ってきたことから、家庭にウンザリしていたので。
「家庭に縛られることのない」
 という家庭を理想としているので、幸恵に、
「そんな家庭を築けるような嫁さんになってくれるだろう」
 という望みを掛けてのことだった。
 だが、実際に、そこまでできるわけはないと思っている。
「新参者にできるくらいなら、自分にだってできるはずだ」
 と思うのだが、それができなかったのは、自分が、すでに昔から、
「あきらめの境地」
 にいたことで、
「できるものもできない」
 ということを感じるようになったのではないだろうか?
 そんな中において、今度は、義父が今の嫁さんを連れてきた。
 その行為は、まるで、息子の孝弘を、
「挑発しているのではないか?」
 と思うほどだった。
 しかし、孝弘は、それを屈辱だとは思っていないようだ。屈辱でもなければ、
「諦めの境地」
 でもない。
 どちらかというと、
「一度、自分の中で、カッと燃え上がった気持ちが、緩むこともなく、どちらかというと、徐々に収まっていくという、熱しやすく冷めやすい性格というものを、醸し出しているかのようだ」
 と感じるのだった。
 それを、彼は、自分の中だけで、表に出すことはなかった。
 だから、皆、彼のことを、
「いつも冷静だけど、どこか冷徹に見える」
 ということで、
「頼りがいがあるが、好きになるのが怖い相手だ」
 と、女性からは思われているのかも知れない。
 人から頼られるということが、どういうことなのかということを、、今少しずつ感じてきているのではないだろうか?
 というのも、幸恵が見て、
「義父のような人が、人から頼られるオーラを一番持っているのだろう」
 と思っていた。
 その感情は、少しではあったが、水商売をしていたことがあったので、その時、身に着いた感情だった。
 というか、身に着いたわけではなく、元々から潜在していたもので、それを、自分なりに、
「冷静に感じることができるようになった証拠ではないか」
 と思うのだった。
 幸恵が、そんな神里家に嫁に来たのは、今から一年くらい前だった。
 夫の孝弘は、医者である。
 元々、医者だった父親の背中を追いかけるように、子供の頃から医者を目指していたという。
「親父に褒めてもらいたい」
 という気持ちが大きかったという。
 褒めてもらうというのか、
「親父は、自分にも、親族にも厳しい人で、強制のようなことはしなかったが、決して、家族を褒めるということはしないんだ。きっと、褒めたりすると、図に乗ってしまったりして、それが甘えを引き起こすのではないかと思っているんじゃないかな?」
 と、孝弘は、結婚前にそう言っていたようだ。
 だからこそ、娘の嫁である幸恵には優しく、孝弘を褒めるとすれば、
「幸恵さんのような素敵な嫁を見つけてくれたことくらいか?」
 といって笑っていたが、その横で孝弘も笑っている。
「なるほど、こういうことか」