力の均衡による殺人計画
そもそも、性癖というのは、そういうものなのかも知れない。自分では、我慢できない。抑えられないところがあるのが、異常性癖だとすれば、これは、リアルにも、道徳的にも、許されることではないと言ってもいいだろう。
その性癖というのは、
「盗聴」
であった。
実は密かに、幸恵は、自分の家にいる時から、そんな性癖があった。
彼女には兄がいるのだが、
「アニキは、隣に妹がいるのに、平気でAVを、音も下げずに聞いている」
ということであった。
妹とすれば、我慢できずに、自慰行為に走ったとしても、無理もないことだろう。
だが、今から思えば、
「アニキも、私にそれを聞かせて、興奮していたのかも知れない」
と途中から思うようになると、
「兄妹で、異常性癖だとすれば、私が悪いわけではない」
という、勝手な自分への正当性を並び立て、
「盗聴だって、別に悪いことではない。どうせ、向こうだって聞いてもらいたいんだ」
という、理屈を並べて、自分を正当化するようになったのだ、
「アニキは、確かに、その気が本当にあったのだろう。なぜと言って、彼女ができてから、家で、AVを見せて、彼女がその気になったら、そのまま初めてしまう」
というような、マジで、異常性癖と言われても仕方がないところまで来ているかのようだった。
それを感じた幸恵は、やはり、
「あんなアニキにこんな妹があり」
ということで、
「この癖は治らない」
と自分で思うようになった。
しかも、結婚してからでは、
もう、若い子を見ているだけでは、しょうがない」
と思うようになった。
「だから、義父と義母のような、年の離れた男女のセックスに、興味を持ったのだ」
ということである。
「それも、この家自体に流れている、異常な分に気が醸し出しているおかも知れない」
と感じるようになった、
実際に、自分の性癖について、
「異常なんだ」
ということで、自己嫌悪に陥っていたが、しかし、そう思えば思うほど、
「異常性癖である自分の、何が悪いというのか?」
ということで、
「異常性癖と言われていることでも、病気として認識され、必死に治そうと、努力している人だっている」
ということである。
もしそれを、
「犯罪だから、許されることではない」
ということになると、
「薬物依存」
であったり、
「ギャンブル依存」
の人たちと、どう違うというのか?
薬物も、ギャンブルも、
「いけないことだ」
という認識はあるものの、警察から、病院や施設へと転用されたりして、
「病気」
ということで、治療に専念させるということになるのだが、
「性癖」
というものであっても、盗聴などの犯罪に絡むところは、さすがに警察から病院に送られることもあるだろうが、どこまでの治療が可能なのか、分からないだろう。
しかし、犯罪とまで行っていないが、そこに近いところまで来ているとすれば、
「ちゃんと、病気として認識し、治す算段をするくらいのことがあってもいいのではないか?」
と言えるのであった。
そんな性癖を、幸恵は、最初こそ、
「人に知られたりしたら、私、生きていられない」
と思うようになっていた。
しかし、そのうちに、
「私がそうなんだから、他にも、異常性癖なんていっぱいいるわ」
と思うようになった。
何といっても、異常性癖を感じる前は、
「私ほど、真面目で清楚な女性はいない」
と思っていた。
確かに、
「真面目で清楚だから、異常性癖ではない」
などというのは、何の根拠もないことであるが、本当にそればかり考えていてもいいのだろうか?
ということであった。
その異常性癖というと、どのようなことが出てくるというのだろう?
一つは、
「露出狂」
と呼ばれるものが多いだろう、
たとえば、昔であれば、裸にコートを着て、暗闇で、女性一人が歩いている時など、胸をはだけて。
「そーら、見てごらん」
といって、目のやりどころに困って、困惑している女性を見て、興奮するというものが代表的であろう。
これは刑法上の、
「公然わいせつ罪」
と呼ばれるものになり、れっきとした、
「刑法上の犯罪」
である。
ただ、同じ、異常性癖による犯罪として、さらに
「卑劣」
と思われるもので、
「痴漢」
というものがある、
これに関しては、刑法上の犯罪ではなく、基本的には、
「都道県指定の迷惑条例違反」
ということで、自治体で定める法律ということになる。
ただ、基本的な異常性癖で捕まる場合、中には、
「出来心」
などという、突発的な場合もあるだるうが、考えられることとしては、常習性があり、そうなると、刑法犯になる場合もあるだろう。
もちろん、余罪を調べたりして、
「過去の犯罪が露呈したら」
ということになるだろう。
だから、警察も、余罪を調べることをするのだ。
特に、痴漢であったり、盗撮というのは、
「グループ」
があったりする。
一番グループで動く犯罪というと、一般的なものは、
「スリ」
であろう。
普通は、
「余罪アリ」
ということで、警察もその線から捜査をする。
基本的に、
「余罪ありということから、そのグループを一斉摘発を狙っているからだ」
と言えるだろう。
「ザコを一人や二人捕まえたって、何にもならない」
ということで、犯罪グループの一斉摘発を狙うのが、警察の仕事であろう。
そういう意味でいけば、
「基本的に、集団で行う犯罪は、罪はそれほど重くはないが、常習性という意味ではたちがわるい」
ということだ。
下手をすれば、
「暴力団の資金源」
になったりするからだ。
また、痴漢などの犯罪は、
「被害者面をすることで、痴漢に仕立てあげる」「
ということをする連中もいる。
気弱そうで、いかにも痴漢でもしそうなサラリーマンの近くに、女性が近づき、
「臆病で触れない」
という状態であっても、誰か一人が、男の手を掴んで、
「この人痴漢です」
と叫べば、言い逃れなどできるわけはない。
見ていない人でも、状況から判断して、
「推定有罪」
ということにされてしまう。
そうなると、警察に突き出すふりをして、男を数人で人のいないところに連れていき、女の子が泣いているふりをしながら、
「金の要求」
をするのだ。
「俺たちが、お前を警察に突き出してもいいんだぞ」
と言われてしまうと、いくら冤罪であっても、捕まった時点で、
「人生が終わり」
ということになるだろうと思うと、男は、やつらのいいなりになる。
「10万円でいいや」
などと、最初はそこまではないかも知れないが、もしそこで払ってしまうと、どんどん金を無心され、総額で、
「数千万円」
などという金を脅し取られることになる、
途中で警察に事情を話しても、何もしてくれないだろう。
下手に、警察に話したことが分かると、
「密かに消されかねない」
と思うのだ。
これがいわゆる、
「美人局」
というものだ。
「美人局」
というものは、一度金を渡したら最後、一生食いつかれるこっとになるというものだ。
しかし、美人局も相手を間違えると大変なことになる。
作品名:力の均衡による殺人計画 作家名:森本晃次