力の均衡による殺人計画
部屋関係だけではなく、被害者の身辺を洗っているっと、暴力団関係者とつながりがあることも分かった
実際に使用していたスマホに残っていた発着信履歴や、連絡先には、暴力団関係者や、事務所が頻繁にあったのだ、
そこで、
「組関係のいざこざかなにかに巻き込まれた?」
ということも視野に入れ、捜査が行われた。
だが、この事件で、最大の疑問が、
「辻褄の合わないことが多い」
ということであった。
一つ言えることとしては。
「今回の事件で、ほとんど怪しい指紋は検出されなかったということが一つ」
だったのだ。
つまりは、犯行は、手袋をしていたという可能性に、さらに、いろいろふき取った跡があった、
しかし、これは矛盾していることで、
「手袋をしていることで、十分であり、下手に指紋をふき取るのは、却っておかしいのではないか?」
ということであった。
さらに、指紋には気を付けていたくせに、スマホをそのままにしておいたこと。
もっとも、警察が殺人事件のためということで、令状でも取って、開示を求めれば、その情報は、取得できるだろう。
何と言っても、持ち主は殺されているわけで、
「被害者の無念を晴らす」
という意味では、開示が当たり前だと言ってもいいだろう。
そんなことを考えていると、
「この事件には、すべてが、中途半端な気がする」
と、捜査員の一部にはそういう気持ちがあり、
「このことを分かっていないと、事件はお宮入りする」
であろうし、
「逆に分かっていることで、事件は案外すぐに解決するかも知れない」
と考えるのであった。
そんなことを考えていると、
「今回の、議員殺害事件というものが、こちらの事件に何かを及ぼしているということは、議員の死体が発見されても、すぐには結びつくものではなかった」
と言えるだろう。
「奥さんの不倫相手ではないか?」
ということも、議員側の捜査から分かったことで、それも、完全な内部リーク、つまりは、
「タレコミ」
だったのだ。
出どころは、
「議員の嫁である幸恵」
だったのである。
議員の事件が、まだ、
「自殺か、他殺か?」
ということで、捜査本部を開くかどうか、考えていたところであったが、
「すみません。今日お話しした刑事さんにお話があるんですが」
ということで、電話が掛かってきたのだ。
どうやら、
「家の中からではまずい」
ということで、どこか表から掛けているようだった。
「はい、どうしました?」
と、最初に若夫婦から話を聴いた田所刑事が、電話に出た。
「あの、実は、先ほどお話できなかった件がありまして」
と言って切り出したのだが、
「私、本当は告げ口するようで嫌なんですが、実は奥さんが浮気をしていた可能性がああるということをお教えしたいと思ってですね」
と言い出した。
「どうしてあなたがそれを知ったんですか?」
というと、すると、
「一度、お父さん夫婦の部屋の前を通りかかった時、中から罵声が聞えたんです」
というではないか。
「その罵声とは?」
と聞いてみると、
「お父さんが、奥さんを怒鳴っているんです。この浮気者ってですね」
というではないか。
「その相手が誰だか聞きましたか?」
というので、
「ええ、その相手というのが、村上信夫だっていうじゃないですか? この間新聞で、見た記事の殺された男の名前だったので、嫌な予感はあったのですが、まさかこんな形で結びついてくるとは」
というので。
「まあ、まだ二つの事件が、何か関係があるとは言えないですが、有力な情報として、こちらも真摯に捜査されていただきます」
と話しておいた。
電話はそこまでだったのだが、それぞれの事件をいかに考えるかであった。
捜査本部でこの話をすると、
「これは縦横な問題ですね。しかし、浮気相手は、半月苗に死んでいるのだし、今回の被害者は、奥さんではなく、御主人だったんですからね。それに、あの若奥さん、、情報をくれたはいいか、信憑性はあるんだろうか?」
というと、
「どうしてですか?」
と田所刑事がいうと、
「いやね。旦那が死んで、奥さんが犯人ともなれば、遺産相続の件で、一人減れば、遺産がもらえる額が増えるわけだろう?」
と、少し濁していったが、それでも、なかなか簡単には口にしていいものなのか、難しいところである。
そんあことを考えていると、
「この二つの事件が、どこかで関わってくるかも知れないが、今は。まず、地道に、被害者の身辺を探ってみることにしよう」
ということで、議員関係で、恨んでいる人も多いだろうから、そこから調べるだけでも厄介に思われた。
しかに、実際に調べてみると、被害者を、
「殺したい」
と思っている人が、そこまでいないのも不思議だった。
「議員は憎まれて何ぼだ」
ということは、迷信なのだろうか、
政治関係に詳しい人に聞いてみると、
「汚いことでも何でもありの昔と違って、姑息なことをすれば結構バレるし、必要以上に大きな問題とするのも、無理なことではないかと考えるのだった。
そんなことを考えていると、
「捜査すればするほど、殺そうとまで考える人は本当に数人に絞られ、そのアリバイを探ると、皆にアリバイがあるのだった」
それでも、
「数人からは、情報を引き出すという意味で、話をしてなければいけないんだろうな」
ということで、数人に話を聴くことになった。
選挙関係の人間が多いので、なかなか捕まらない人もいて、そんな中には、
「やくざ関係者」
もいて、それらの中に、
「奥さんの不倫相手の、あの殺された男の関係者もいるんだろうな」
ということで、調べてみると、そのような人はいなかった。
「じゃあ、若奥さんが言っていたように、偶然聞いたという話はウソではないということであろうか?」
という話になるのだった。
とりあえず、あちらも事件の邪魔にならないように、こちらの捜査も行うということになったのだ。
愛すること
そんな奥さんのことであったが、これは後から分かったことであったのだが、奥さんが、その時、
「偶然聞いた」
というのは、実はウソだった。
いや、ウソというと、語弊があるが、要するに、
「目的以外のところで、聞こえてきた」
という話だったのだ。
その目的というのは、一種の、
「性癖」
であった。
本来であれば、犯罪である。
いくら、家族同士とはいえ、
「ありえないこと」
と言ってもいいだろう、
しかも、血のつながりもまったくない関係で、旦那も、血のつながりのない義母なのである、
さらに、年齢は、義父よりも、はるかに自分たちに近い。
「友達」
と言っても、いいくらいであった。
そんな女性が、一つ屋根の下にいるわけだ。幸恵が、自分の性癖を行おうとしても、それは無理もないことだが、それだけに、犯罪という意味では、余計に重たいものだという意識はなかったのだろうか。
作品名:力の均衡による殺人計画 作家名:森本晃次