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ゆずは

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「ゆかりに対して、自分の気持ちが一つ吹っ切れた気はしたが。どうしても拭いきれない思いがある」
 というのも事実のようで、
 それがどういう気持ちから来ているのかということを、正直分かっていないといってもいいだろう。
 一つ言えることは、
「ゆかりは二度と帰ってくることはない」
 ということであり、それによって、
「言いたかったこと、聴きたかったことが、永遠に封印されてしまったのだ」
 ということであった。
 それを思うと、
「俺にとって、少なくとも言いたくても言えなくなったことが残ってしまった」
 ということは、
「これから、俺が恋愛できるかできないか」
 という運命も今の状態では、想像することもできないでいたのだった。
 とりあえず、今は、何とか立ち直ろうと思いかけていた矢先の、
「ゆかりの死」
 という知らせは、少なからずのショックを植え付け、そのショックが、自分の中で、永遠に消え去るものではないということであった。
 そもそも、優柔不断だと思っていた、板倉だったので、帰らぬ人を目の前にして、
「優柔不断」
 ということが、
「いかに自分の致命傷になるか?」
 ということを思い知らされた気がした。
「ゆかりという女性を忘れることはできなくなった」
 というのが、正直な気持ちだったのだ。

                 風俗嬢と板倉

 板倉が、ゆかりの、
「呪縛」
 から、何とか逃れられるまでに、もう一年を費やした。
「もし、彼女の死がなかったら、もう少し早くm、呪縛から逃れられただろう」
 という思いと、
「いや、そもそも、呪縛などなかったが、死があったことで、復旧にまで、半年以上が掛かったということは、自分でも、
「無理もないことではあるが、ただ、仕方がないという言葉で、片付けてもいいものだろうか?」
 ということを考えたのだ。
 板倉が、約三年間、彼女がいなかったというのは、少なくとも、ゆかりとの別れが尾を引いているといってもいいだろう。
 しかし、
「板倉にとって、この三年間が長かったのか?」
 と聞かれると、
「実際のところ、自分でもよく分からない」
 ということだろう。
 この三年間は、
「なるべく波風が立たないような期間にしたいものだ」
 と考えていたが、それは間違いなかった。
 板倉にとって、この時に起こった、
「センセーショナルな出来事」
 というのは、彼女ができたということだった。
「あれだけ、ゆかりへの思いが残っていたのに」
 と思ったが、何かの変化があれば、気持ちも、そして、過ごしてきた時間も、百八十度変わってしまうというのも無理もないことだったのだ。
「ゆかりへの思いが残っていた」
 というよりも、
「思いではなく、呪縛と言い換えられないだろうか?」
 とも、いえるのだったが、新しい彼女ができたことで、こんなにも、これまで少してきた、あれだけ長かったと思っていたあの期間、まさか、
「あんなにも近く感じられるなんて」
 という思いが大きかったのだ。
 そんなことを考えていると、
「俺の時間の感覚というのは、意外と他人から左右されることが大きいんだ」
 と感じた。
 しかも、そのほとんどが女性によるものだ。
 そもそも、
「男の自分に時間を左右されてたまるものか?」
 という思いが大きかった。
 親友とは、今は連絡を取っていない。
 少なくとも、ゆかりが死んだことを、すぐに教えてくれなかったのだ。
 結果がよかったのか悪かったのか、この際関係ない。自分に教えなかったというのは、明らかに、親友としての権利を放棄したと思えてならなかったのだ。
 そんな中において、新しい彼女ができたのは、誰かのおかげでもなく、しいていえば、
「相手が好きになってくれたのだ」
 ということで、
「俺自身の手柄」
 と言ってもいいだろう。
 相手が好きになってくれたことを、自分の手柄にするというのは、どういうものかと思うが、
「それも、自分の日ごろの心掛けがよかったからかも知れない」
 と真剣に感じた。
 少なからず、ゆかりとのことがあったからだというのは、大げさなことではないだろう。
 自分をいかに見つめていくか?
 ということが、結果としていい方に結びついたのだろう。
 以前に、会社に入った時の同期と、話をした時、急に怒られたことがあった。
 その人は、どちらかというと、フェミニストのようで、板倉も、自分では、
「フェミニスト」
 と思っていた。
 ただ、その二人の間に、何か勘違いとなるようなものがあるようで、話をしている時、しばしば、女性の話題になった時、同期の人間が、急に怒り出すことがあるのだった。
「だったら、女性の話題をしなければいいじゃないか?」
 と言われるのだろうが、二人の間に、共通の話題があるわけではなく、そのため、気がつけば、
「女の子の話」
 になっているのだった。
 それが悪いというわけではないのだが、どうも、友達には、
「キラーワード」
 があるのだという。
 どこに触れればまずいのか、今のところ分かるわけではない。それを思うと、
「本当は、友達の縁を切りたいんだけどな」
 という思いに駆られてしまった。
 だが、縁を切れないのには、
「やつには、女の子への大きなパイプがあるようだ」
 ということで、彼といると、女の子と知り合える機会が増えるということだった。
 以前に連れていってもらったスナックで知り合った女の子がいた。
 同僚の知り合いの女の子だということであったが、その子と一緒に来ていた子が、気になったのだった。
 見た目は派手そうな女の子で、服もミニスカワンピースが似合う、
「スタイル抜群」
 の女の子だった。
 今まであれば、そういう派手めの子は苦手だった。
 というのも、板倉には、コンプレックスがあり、
「商売女性のような相手だと、バカにされてしまう」
 という意識があったのだ。
 一番の原因が、風俗だった。
 板倉は、最初の相手は、風俗で、
「筆おろし」
 をしてもらった。
 今の若い連中であれば、珍しくもないことで、それだけ、
「草食系男子」
 が増えているということだろう。
 特に、
「女性にバカにされたりすれば、そのままEDになってしまい、自分に自信を失くしてしまうということが、往々にして起こってしまうだろう。
 さらに、風俗というものに、偏見を持っている人もいるかも知れない。
「お互いの癒しになればいい」
 と思えばいいのだろうが、なかなか近寄りがたいものがある。
 特に一人で行くとなると、度胸もいる。ただ、今はネットやスマホで、女の子を事前にチェックすることもできて、お店も、事前にチェックすることもできる。
 昔はそれができなかったので、コンビニで、風俗雑誌を買うか、風俗街にある、
「無料案内所」
 に聞くか、
「うろついていると、キャッチに引っかかるか」
 のどれかであろう、
 さすがにキャッチは、最悪でしかない。言葉巧みに、提携しているお店に誘い込み、
「フリー要因:
 の女の子にくっつけることで、女の子にも、店にも売上として面目が立つというものである。
 たいていの場合、
「本当はもっと高いんだけど、端数はいらない」
作品名:ゆずは 作家名:森本晃次