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ゆずは

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「人間というのが、一人一人違うという、当たり前のことも理解できていないと、この苦悩は、果てしのないものになってしまうだろう。
 人と付き合う。その中でも、
「女性と付き合うということは、知り合って付き合うようになるわけで、付き合ってから、その後のことをキチンと考えるということは、付き合うということでは、必然性のあることになってしまうだろう」
 と考えるのだ。
 ゆかりと付き合っていた時、
「どこか、フワフワした感じがあったな」
 ということを感じることがあった。
 というのも、
「俺は、ゆかりのあの声が好きだったんだ」
 と感じることがあった。
 最初にゆかりのことが気になったのが、彼女の発する声だった。
 声が聞こえてきてから、何をいうわけではなく、
「ただ、そばにいると思っただけで、これほど嬉しいことはない」
 と思っていた。
「声フェチ」
 ではないというと、語弊があるが、声を聴いているだけで、
「寝落ちしてしまいそうになる」
 という人がいるくらいに、その清涼感に、癒しを感じさせられるのが、ゆかりだったのだ。
 ゆかりというと、
「大学時代の親友とライバル関係を制して手に入れた」
 ということだったので、正直、最後別れなければいけないということになった時、当然のように、親友のことが頭をよぎった。
 もちろんのことなんだけど、
「親友に、顔向けできない」
 と思ったり、
「顔向けできない」
 などと感じたりもしたものだった。
 そう思っていたのだが、どうも、親友は、板裏との勝負に敗れた後、少しおとなしくしていたようだったので、気にはなっていたのだが、その表に出てこなかった時 普通に知り合った女の子と、仲良くなったようだった。
 どちらかというと、自分いいいことがあったら、宣伝したいタイプの人だったので、その彼が、
「何も言わないということは、何もないんだな」
 ということだったのだ。
 だが、実際には、そういうことではなく、
「相手の女の子のために必死になって頑張っていた」
 ということであった。
 その女の子は、実に、
「よくできた女の子」
 ということのようで、いつも二人で気を遣い合っているというような間柄ということであった。
 だから、親友も、かなり神経を遣って、付き合っているようである、
 気を遣っていると言っても、
「相手が気を遣わないから」
 ということではない。
「むしろ、相手は気を遣ってくれているので、こっちも同じように気を遣う」
 ということからであった。
 これは、親友から聞いた話だったが、
「あの子は、実は今まで、ロクでもない男とばかり付き合っていたらしいんだ。付き合っているというよりも、利用されているといってもいいくらいの想いをしてきたので、この俺が何とかしてやろうと思ったのさ。そりゃあ、女性としての魅力ということでいえば、ゆかりさんの方が、よほど、大人のオンナという感じさ。だけど、それだけに、俺じゃなくてもいいのさ。だから、俺は、ゆかりさんにはできなかった、そして伝わらなかった思いを、今の彼女に精いっぱいの気持ちで答えてあげたいと思うんだ」
 というのだ、
 それを聴いた時、
「こいつ、こんなにもすごいやつだったんだ」
 と感じるのだった。
 そんなロクでおない男ばかりを相手にしていたことで、何をしていいのか分からなくなっていた彼女が、板倉と知り合ったのは、大学祭の頃だった。
 大学祭で、その模擬店を、サークル別にやっていたのだが、その開催前に、
「大学のどの場所で店を開けるか?」
 ということを、大学の自治委員の方で、くじ引きで決められるのだが、その時の代表として出ていったのが、自分のサークルからは、板倉であり、そのそばで控えていたのが、ゆかりだったのだ。
 二人は席が隣だったこともあって、抽選前から世間話のようなことをしていたが、実際に抽選ともなると、二人が、その抽選を終えた時に、ビックリしたのが、
「模擬店の会場でも、隣り合わせだ」
 ということであった。
 それに二人はビックリして、
「ああ、何と、お隣同士じゃないですか?」
 と、板倉がいうと、ゆかりの方も、
「まぁ、そうですよね。ビックリしちゃったわ」
 というのだ。
 お互いにまさか隣同士になるなど、想像もしていなかったことで、板倉の方が、
「なんと奇遇な」
 ということで、感動していたのだ。
 さすがに最初はその感動がなかったゆかりだったが、次第に板倉の感動する姿を見て、
「この人の言う通りだわ」
 と思うようになったのだという。
 それを考えると、
「これほどの偶然があるわけはない」
 ということになり。その思いを、ゆかりは、付き合い始めてしばらくして、そのことを話してくれた。
「あなたのあの驚き方が、私には新鮮だったのよ。おかげで、普段は信じないようなことでも、何でも信じられるという風に思うようになったの」
 というではないか。
 それを聴いた板倉も、
「そうだろう? 俺だってあの時に、何と言う偶然なんだって、思ったもの」
 というではないか。
 それに乗じるかのように、ゆかりも、
「ええ、そうなの、まさしくその通りで、あなたとの運命を感じ始めると、とまらなかった」
 というではないか。
 話を聴いてみると、最初はどちらかというと、板倉の方が最初に感じた感動が大きかったようだ。
 しかし、徐々にゆかりの方が、その気持ちに追いついてきて、
「ええ、確かにその通りだわ。あなたの言う通りだ」
 ということを感じてしまうと、そのことがきっかけになって、
「付き合ってみよう」
 ということになったというのだ。
 その思いを、ゆかりが、感じてくると、それに吸い寄せられるように、板倉も、二人の交際から、その先の結婚という二文字まで考えるようになってきた。
 それが、板倉が、まだまだ先を見詰めていたはずなのに、先にそのゴールのようなものが見えてきたのは、ゆかりの方だったのだ。
 ゆかりは、その気持ちを板倉にぶつけてみようと思った。
 しかし、ぶつけるというところまでは行かなかったのは、
「まずは、自分の中で理解しておかないと、相手から、やり込められた時、自分で言い訳ができない」
 という考えから、なるべく、自分が、余計なことを考えていないつもりになって、前に進んでいないふりをすることで、
「自分が先を睨んでいる」
 という優位性を保つようにしようと考えるのだった。
 それを感じているうちに、ゆかりは、板倉が、
「何かおかしい」
 と考える前に、自分の気持ちをハッキリさせようという考えにいたるのであった。
 そうなると、もう、板倉には収拾をつけるということができなくなるのであった。
 卑怯ではあるが、ゆかりは、というか、女性はと言ってもいいかも知れないが、
「自分が口にする場合は、すでに気持ちは決まっている時だ」
 ということであり、別れる時であれば、これが完全な、女性側の、
「優位性」
 ということになるのだろうが、付き合い始める時も同じことで、その分、前を見るということになるのだろう。
 男にとっては、嬉しいことであるが、それを
「女性の性格だ」
作品名:ゆずは 作家名:森本晃次