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洗脳と洗礼

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 だが、それでも、まだ、
「好きになる」
 という感覚はなく。
 どちらかというと、
「少し気になる」
 という程度になってきたという感じであった。
 だから、
「却って、その複雑な心境の正体を知りたい」
 と思うからなのか、気になるという感じであった。
 しばらくすると、彼女は、
「どうやら俺のことを好きになっているんじゃないか?」
 と感じた時があったが、その時に、自分の中で、
「爆発的に、雰囲気が変わった」
 と感じた時であった。
 そういえば、
「女性というのは、誰かを好きになると、これほどきれいになるということはない」
 と聞いたことがあったが、まさにその通りなのではないかと思うのだった。
 といって、
「可愛い系なのか、キレイ系なのか?」
 どっちなのかということをすぐには感じなかったようだ。
 どちらかというと、
「可愛い系」
 が好きな山岸だったが、あいりに関しては、可愛い系というよりも、
「キレイ系」
 だと思うのだった。
 今までキレイ系というと、どこか、避けているところがあったが、あいりにだけは違っていた。
「どういう心境の変化だ」
 と言えばいいのだろうか?
 どうやら、
「正面からであったり、斜め前くらいからの角度よりも、彼女に関しては、その横顔にドキリとする感覚があるからではないか?」
 と感じたのだ。
 それは、確かに鋭い感性のようなものだと思ったが、どちらかというと、
「当たりとも遠からじ」
 ということであり、どこか、無難な見方を自分がしているのではないか?
 と感じるところであった。
 そのおかげで、
「気になる」
 ということがどういうことなのかということを、今になってから、感じるようになったのだった。
 知り合った時から、少しだけ、
「何やら怪しい」
 という感覚を持っていた。
 これは、前に付き合った
「つかさ」
 には、感じたことなどない感覚だったのだ。
 つかさの場合は、お互いに、ド直球と言っていいほど、お互いをぶつけた気がした。だからこそ、しょっちゅう喧嘩にはなっていたが、それだけに、付き合い方も激しかったのだと思うのだ。
 だが、つかさと別れてから、しばらくは、放心状態になっていて、
「もう、こんな思いをしないといけないのであれば、誰とも付き合わない」
 と感じていたのだ。
 それだけ、
「燃えつきた」
 という感覚で、
「燃え尽き症候群」
 なのではと感じたのだが、実際につかさと一緒にいた時間を、
「あれだけ長かった」
 と思っていたはずなのに、今となってみれば。
「幻のようだ」
 としか思えないのは、それだけ、実際と後では、感覚が違っていたと言っても過言ではなかったということであろう。
 ただ、つかさという女を最後は嫌いになったわけではない。だが、相手から、
「あなたの顔も見たくない」
 と言われた瞬間に、
「これまで、これ以上分かり合える相手はいない」
 と思っていた相手から、完全に違う人に変わってしまったと思うことで、
「一番、会いたくない人間」
 ということになってしまったのだ。
 そんなつかさとはまったく違った雰囲気を醸し出しているのが、今回知り合った、
「あいり」
 という女性だった。
 確かに、最初の頃のように、まったく関心なかったと思っている女性であったのに、再会すると、今度は、それまでとまったく違う女性に見えてくることで、まるでその反動であるかのように好きになってしまうというのは、
「往々にしてありだ」
 と言えるのだろうか?
「自分にとって好きな人というのは、どういう人なんだろうか?」
 とよく考えるが、確かに、あいりという女性を見ていると、今まで自分が好きになってきた女性とも違っている。
 というほど、たくさんの女性を好きになったわけではなく、中には、テレビタレントなどに勝手に、
「恋をした」
 ということも含めての話である。
 恋をするということが、どういうものなのか、
「つかさとの間で分かっていたはずだったのに」
 と考えるが、どうも、そうではないようだ。
「自分の中で、愛情というものを理解しようとすると、まずは、相手の懐に入らないといけない」
 ということを考えていたくせに、どちらかというと、そういう感覚というよりも、
「好きになったから、好きなんだ」
 という、これほど単純なものではないといえるようなこともあるというべきなのか、自分でも分かっていないのだった。
 だが、
「今回だったら分かるかも知れないな」
 と思ったのは、最初から、あいりという女性が、神秘的すぎて、その正体を探りかねるというような感覚で、
「こういうのを、本当の愛情というのだろうか?」
 と、勝手に考えてしまうのだった。
「今まで、好きになった女の子のパターンが変わったことはなかったのにな」
 と思っていた。
 と言っても、好きになったり、気に入る女の子のパターンというと、一つではない。好きになる最初のパターンとして、
「いつも清楚で、どこか、影があるような、とてもおとなしい女の子。そして、そういう女の子が、自分のことを慕ってくれる」
 と思うようなそんな女の子のパターンと、
「身体が小さくて、可愛らしく、実際に声もアニメ声で、そして、いつもニコニコ笑っているような女の子、どちらかというと天然で、照れ屋な女の子であれば良き」
 という感じである。
 特に後者の女の子であれば、
「絶対に自分を裏切ることはない」
 という確証があるくらいで、前者であれば、
「裏切られることもあるに違いない」
 と感じるのだった。
 あくまでも、自分の勘にしかすぎないが。この気持ちが、いかに証明されるかということは分からないが、少なくともつかさは、
「前者だった」
 と言えるだろう。
 だからこそ、つかさとの別れには、
「彼女に裏切られた」
 という思いが付きまとうのだ。
 確かに、裏切られたというのは言い過ぎかも知れないが、せっかく、仲良くなって、まわりも、
「二人を見守っていこう」
 というところまでは来ていたので、いきなり、
「あなたについていけないわ」
 と言われた時はショックだった。
 だからといって、
「はい、そうですか」
 と引き下がるわけにはいかない。
 確かに思い出してみれば、付き合い始めてからしばらくの間。山岸が、自分で思っているよりも、
「まさか、こんなに俺のことを信じてくれなくなるなんて」
 と思うほどに、前の日までと違って、
「豹変した」
 という感じだった。
 しばらく黙って見ている時もあれば、必死になって説得することもあったが、つかさは、何も言わないことが多く、黙ってこちらを見ていたが。いつもある程度興奮状態が収まってくると。
「ごめんなさい」
 と誤ってくる。
 その時に、山岸はいつも、
「この子は、何ていとおしいんだ」
 ということで、それまでの苦労が報われた気がしてくるのだ。
 だから、何でも許せてしまう。しかも、
「すべては自分の手柄だ」
 という風に感じるのだった。
 だから、
「どんなに精神的に荒れていても、最後は俺のところに戻ってきてくれるのだから、少々のわがままは許してあげよう」
 と感じるようになったのだ。
作品名:洗脳と洗礼 作家名:森本晃次