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自己バーナム

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「我々の税金で賄っているのだから、市民をどんなことをしても守るのは、当たり前のことではないか?」
 というのも、正論であろう。
 しかし、裏で政治にかかわっていたり、政治家と関わっていることで、身動きが取れないということがある。それは言い訳としても、許されることではないが、これが裁判などになると、
「公正さ」
 ということを考えなければならず、警察は、犯人をただ逮捕すればいいというわけではなく、基本的に、
「犯人を逮捕」
 し、犯人の供述や証拠などから、
「その場で何が起こったのか?」
 という真実を明らかにすることで、それを調書として作り上げ、検事が起訴することで、後は裁判に任される。
 検事と弁護士が、それぞれ持ち寄った情報で、さらに、事実を明らかにしていこうというものだが、実際に検察側から提出される情報の中には、警察での取り調べや、刑事による捜査によって得られた証拠が提出され、さらに、弁護士側から、情状証人であったり、被告が、不利益にならないための証人が用意されたりする。
 ちなみに、弁護士というのは、その仕事の主旨としては、
「依頼者の利益を守る」
 というのが最優先である。
 勘違いされがちではあるが、弁護士というのは、
「正義を追求する」
 というのが仕事ではない。
 ということは、
「犯人が明らかに犯行を犯していると分かっていても、あらゆる証拠を用いて、法律の穴を探して、無罪に持っていくのが、仕事だ」
 ということになるのだ。
 下手をすれば、
「どんな手段を用いても、合法であれば、人情であったり、モラルや道徳よりも、依頼者の弁護を引き受けた時点で、被告の利益を守るのが、最優先となる」
 ということである。
 被害者に非がないとしても、非があるかのように少しでも見える第三者の証人を探してくるなど、原告側からすれば、あるいは、
「傍聴している人たち」
 あるいは、
「裁判を見守っている第三者」
 から見ても、明らかに許されないと思えることでも、弁護士の仕事は、
「依頼者の利益を守る」
 という意味なので、いくら世間を敵に回しても、
「裁判で勝たなければ、弁護士としての立場はない」
 ということになるのだろう。
「弁護士というものが、どういう仕事なのか?」
 ということ一つを考えても、どうも、裁判制度や、警察の捜査や、
「市民を守る」
 ということを考えれば、
「どこまでが、正当なことなのか?」
 と考えれば、
「警察や、弁護士など、信用できない」
 という人がいるのも当然のことである。
 どうしても、日本の法律は、
「被害者側に対しての配慮に欠ける」
 とずっと昔からいわれ続けているのは、法律の問題なのか、それを扱う、
「行政」
 であったり、
「司法」
 の問題なのか、実に難しい解釈となるであろう。
 そんな司法、行政も、どうしても、お金がかかる、
「弁護士」
 を雇ったり、
 そもそも、加害者側の家族が金持ちで、会社経営をしていて、その顧問弁護士と昵懇ということであったり、
「顧問弁護士が、その力を、日ごろから、その家族のために発揮している」
 というようなところなのでは、
「またか」
 ということで、金が動いて、弁護士がまたしても、暗躍するということになるのだ。
 うまく示談にまとめたりするのだろうが、そもそも、犯罪をもみ消すということなので、家族も、
「そんな理不尽なことはできない」
 といっても、結果としては、被害者が、
「裁判に出頭し、聴かれたくもないことを聴かれ」
 本来であれば、
「早く忘れたい」
 と思っているようなことを、思い出さされ、下手をすれば、
「心的外傷後ストレス障害」
 いわゆる、
「PTSD」
 なるものを発症しかねないというわけである。
 PTSDというのは、
「悲惨な経験で、子悪露に深い傷を負い、その時の不安や恐怖がよみがえってくる」
 という病気である。
 まさしく、今回の事案は、これになりかねないものであり、それだけに、
「慎重に対処しなければいけない事例」
 なのである。
 その時の感情に任せて、結果として、被害者を必要以上に苦しめてしまうことを思えば、ここで、金をもらい、ある程度の保証を付けた示談にしておらった方が、下手に裁判を起こし、
「早く忘れたい」
 ということを、またしても、
「被害者を火中に投じるようなマネをしてはいけない:
 と言えるだろう。
 特に、
「性犯罪」
 ともなると、相手の弁護士から、どんな質問が出てくるか分からない。
 何といっても、その現場での事実解明から、罪の確定を行うのが裁判なのだから、告訴した時点で、被害者として、証言をする義務が生じるのだ。
 相手は、無罪に持っていきたいということで、
「こちらが、合意の上だった」
 ということを何としても証明したいだろう。
 そうなると、ちょっとしたことでも、
「こちらも、覚悟ができていた」
 というようなことを引き出そうと、生々しい記憶を引き出そうとする。
 被害者としては、思い出しただけでも、パニックになりそうな状況を作り出しただけでも、相手側は、
「成功だ」
 と思うだろう。
 まわりが、被害者のことを、どんなに、
「可愛そうだ」
 といっても、被告側も、罪に問われたり、弁護士としての失敗を咎められるわけにはいかないので、必死になるというものである。
 必死になったとしてっも、裁判的には仕方のないことで、事実がすべてにおいて一番強い、加害者側が、
「事実だ」
 と認定されれば、それが事実だということになり、有罪となっても、十分な情状酌量となるだろう。
 被害者が、そんなにまでして起こした裁判で、何かを得られたとしても、裁判での苦痛に比べれば、まったくたいしたことではないのは明白だ。だから、こういう犯罪は、ほとんどが示談となり、裁判にまで発展しないということが、多かったのだ。
 日下部が離婚したのは、まだ、新婚気分が抜けないと思っていた時期だった。
 離婚を言い出したのは、女性側からのことで、当の本人である日下部には、完全に、突然のことであった。
「どうしてなんだ?」
 と聴いても彼女は何も言わない。ただ、その目はこちらを睨んでいた。
「何とか説得しないと」
 と思って考えているうちに、彼女は実家に帰ってしまう。
「実家でも、説得してくれているだろう」
 と思い、実家のご両親に一縷の望みを賭けてみたが、それで話が好転するはずもない。
 むしろ、向こうの家族では、日下部は敵状態だったのだ。
 なかなか帰ってこないので、迎えに行くつもりで、彼女の実家を訪れた。
「出てきた手前、迎えに行かないと、帰りづらいんだ」
 と思っていた。
「きっと彼女は、こちらが迎えに行ったことで、口実ができて、戻ることができる」
 というくらいに思っていたので、
「迎えにいくと、喜ばれる」
 などという、
「お花畑」
 のような発想を持っていたのだった。
 普通なら、そうは思わないだろうが、日下部がそう信じて疑わなかったのは、
「自分には離婚の理由が思いつかない」
 つまりは、
「離婚される理由なんかないんだ」
 という思いがあったからだ。
作品名:自己バーナム 作家名:森本晃次