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自己バーナム

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 だから、パチンコにしても、風俗にしても、日下部と同じように、
「初めて」
 ということで、最初に連れていってもらったという人は少なくなったであろう。
 先輩から、
「今度の木曜日あたり、夕方空いてるか?」
 と聞かれた。
「ああ、風俗のお話だ」
 とすぐにピンときたので、正直ワクワクして、
「ええ、空いてますよ」
 と答えると、
「よし、わかった」
 と一言いうだけだった。
 先輩がそれ以上言わないということは、
「やはり連れて行ってくれるんだ」
 ということが確定したのだと思うと嬉しかった。
「よし、じゃあ、それで計画を立てよう」
 と先輩は、それだけ言って、当日の朝に連絡してきて、
「じゃあ、午後三時に、学校の図書館のところで」
 ということだった。
「そういえば、パチンコ屋に最初に連れていってくれたのも、待ち合わせ場所はここだったな」
 ということを思い出していた。
 先輩は、約束の時間には待っていてくれて、ニッコリと笑うと、
「さあ、行こう」
 といって、自分はさっさと歩き始めた。
 先輩は、こういう時は何も言わない。まるで、
「俺の背中でも見ていろ」
 と言っているように見えて、
「実に頼もしい」
 と感じるのであった。
 歩き始めた先輩の、確かに背中しか見ることはなかった。一言もしゃべらずに前だけを見て歩いている先輩の後ろから、ただついていくだけだった。
 だが、その方が、興奮というのは膨らんでくるもので、ある意味、
「夢にもでも見た」
 といっていいと思う、風俗に、先輩が連れていってくれるというのだ。
 だが、日下部が風俗に行かないのは、別に、恥ずかしさだけのせいではなかった。
 中学生の頃に初めて買った、いわゆるエロ本と呼ばれるもの、本屋え一人で買うことに違和感がなかったほどだ。
 普通だったら、
「恥ずかしい」
 と思うのが当たり前なのだろうが、日下部は、そうは思わなかった。
 実は、友達の中で、真面目で通っているやつが、一人で堂々と買っているのを見たからだ。
「恥ずかしくないのか?」
 とも思ったが、あまりにも、本を買っている姿が、堂に入っているのが、眩しいくらいで、その凛々しさに感動したことで、
「あそこまで堂々としているだけでいいんだ」
 と思い、そういう意識には、違和感がなかったのだ。
 だが、風俗に関しては違った。
「そんなこと、一度もいったことがない人間が感じるようなことは普通はないんだけどな。お前、やっぱり変わってるわ」
 と先輩から言われたが、正直、
「何が変わっているというのか、正直、意味が分からなかった」
 そう考えてみると、
「この先輩から、よくわからないと言われ、変わっていると言われたということは、俺って、喜べばいいのか?」
 と感じたのだ。
「人と同じでは嫌だ」
 と日ごろから思っている日下部という男は、
「いやいや、これで俺も、先輩に求められるような男になってきたのか?」
 と感じたのだ。
 先輩の、
「変わっている」
 という言葉は、相手に尊敬の念を持っていて、リスペクトをしているからだと思ったのは、勝手な思い込みということなのだろうか?
 そんなことを考えていると、次第に、
「初風俗」
 というものへの緊張がほぐれてきた。
「どうして今まで行かなかったんだろう?」
 と真剣に考えたが、その理由は自分でも分かっているつもりでいたのだった。
 その理由というのは、いわゆる。
「賢者モード」
 と言われるものであった。
 この、
「賢者モード」
 というのは、男女の性に対しての、
「満足感」
 あるいは、
「達成感」
 というものに違いがあるからだ。
 これは、
「男女の違い」
 といっても過言ではないだろう。
「女性の場合は、一回のセックスで、何度も達することができる」
 と言われるが、男性の場合は違う。
 一度達して、果ててしまうと、次の波が襲ってくるまでに、個人差はあるが、しばらくかかるというものである。
 そして、次の波が襲ってくるまでに男性が陥るモードを、
「賢者モード」
 というのだった。
 その時の感覚は、
 何やら、
「虚しさ」
 というものを感じるのであった。
「達して、放出してしまうと、男は果てしない脱力感に襲われ、言い知れぬ、罪悪感のようなものが襲ってくる」
 つまり、
「罪悪感に陥る理由もないはずなのに、なぜか理由もなく襲ってくるのだ」
 ということであることと、さらに、肉体的には、
「必要以上に、身体が敏感になっているので、シーツに触れただけでも、何やら気持ち悪さのようなものがある」
 という人もいる。
 心身ともに、そんな感じなので、
「賢者モード」
 という状態の男性は、本当に虚しさに包まれているのだった。
 しかも、これが風俗で、
「お金が掛かっている」
 というわけだ。
 だから、
「こんなことなら来なければよかった」
 と感じたのと同時に、
「お金がもったいない」
 という思いにまで至ったのだとすれば、それは寂しいことである。
「本当に厄介だな」
 と思っていたところに先輩からの、
「お誘い」
 があった。
 先輩からの誘いを断るのは失礼だということを理由にすれば、少しは賢者モードから逃れられるかも知れない。
 という思いと、
「これで念願の童貞喪失ができる」
 と思ったことで、
「これもいい機会だ」
 と感じたのだ。
 最初言われた時はそうでもなかったが、 その日が近づくにつれて、どんどんと楽しみになってくる。
 先輩に連れて行ってもらったお店は、結構キレイで、想像以上だった。
 だが、このレベルでも、高級店ではないという。
「いやいや、俺もそんなに先立つものがあるわけではないからな」
 と照れていたが、それもしょうがない。
 連れて行ってもらえるというだけで、感謝しかないからだ。
 先輩が、自分にあてがってくれた女性というのは、
「童貞キラー」
 ということでは、その筋で有名な嬢だということであった。
「お前にはピッタリだ」
 といって、先輩が連れてきてくれたのだったが、彼女も、
「ああ、あの先輩のご紹介なのね?」
 といって喜んではいるが、結構、こういう機会が多いのか、
「あの先輩には感謝している。そのおかげで、私は、この界隈では童貞キラーと言われ、結構筆おろしに来てくださるお客さんもいてね。しかも、私が最初だったことで、感動した、元童貞君たちが、結構何度かリピーターになってくれるので、これほどうれしいことはないわ:
 というではないか。
「そんなものなんだ」
 と聞くと、
「そりゃそうでしょう。私たちだって、初めて会う男性って、正直怖いもん。接客のし方も手探りだし、下手をすれば、どんな性癖を持っている人か分からないでしょう?」
 というのだった。
「確かにそうかも知れないですね。言われる通り、一度でも相手をした人なら、安心ですからね」
 というのだった。
 どうやら、二度目以降の指名は、
「本指名」
 といって、指名料に若干の追加料金のようなものが発生し、それが、嬢にフィードバックしてくるというシステムの店もあるようだ。
 だからこそ、女の子にとっては、
作品名:自己バーナム 作家名:森本晃次