小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

自己バーナム

INDEX|16ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

 いや。まったくなかったというのは、ウソになる。それぞれ、最初に、
「その味」
 というものを教えてくれる人がいて、その人がいなければ、いくら離婚したからといって、そっちの道に入り込むということはなかったのだ。
 パチンコに最初に連れて行ってくれた人も、風俗に連れていってくれた人というのも、実は、
「同一人物」
 だったのだ。
 その人は、大学の先輩で、
「ギャンブルや女を知らなかったら、大人になれないぜ」
 という風に思っている人だった。
「まぁ、もっとも、パチンコの場合は厳密には、ギャンブルではないからな」
 といって、
「三店方式」
 というものを教えてくれた。
 一般常識として聞いていたが、よく考えると、それも当たり前のことでもあったのだ。
 パチンコ屋が開店する前の抽選から連れていってくれた。
「ここで、入場の順番が決まるのさ。皆研究して、本気で勝ちに行っている人もいるから、最初の台選びは重要なんだよ」
 と言っている。
「これは、店によってやり方が違う。最初から、先着順というところもあるけど、中には、開店三十分前に一度打ち切って、そこで、抽選するんだ。そこで、入場順が決まるということさ。だから、先着順のように、とにかく早く来れば、一番を狙えるということであり、先着順でなければ、三十分前にさえくれば、抽選が受けられるので、急いでくることもないというわけさ。ただ、一つ言えるのは、ここで、一番に入れたからといって、必ず出るとは限らない。でも、自分で選んだ台だから、諦めもつくということだろうね」
 という話をしてくれたのだった。
「なるほど、分かりました」
 ということで、何事も初めてだったので、ただ、興味津々だったのを思い出した。
 その日は、結構人がいた。
「今日はものすごく多いように思うんですけど」
 というと、先輩が、
「今日は新台入れ替えの日だからな。多いのも当たり前だよ」
 といった。
「新台入れ替え?」
 と聞くと、
「パチンコ屋というのは、どんどん新しい台を導入して、活性化させないと、なかなか客が定着しないと思っているところもあるようで、そのために、新しい台を積極的に導入するところもあるんだよ。もちろん、数か月、台入れ替えをしないところもあるけどね、でも台入れ替えをすると、設定を結構出るようにしている店もあるので、新台入れ替えの時は出る台を求めて、皆来るということさ」
 というので、
「なるほどですね」
 と答えると、
「でも、俺は、新台入れ替えの時には来ないのさ」
 というではないか。
「どうしてですか?」
 と聞くと、
「俺は、前の日や、その前の日、つまり、ここ数日の推移で台を選ぶようにしているので、新台入れ替えされると、それがリセットされるので、統計で考え、台選びをする人間には、新台入れ替えは、却って困る。しかも、新台にはどうしても集中するから、出るかどうか分からない新台は、リスクもあるよな」
 というのだ。
「じゃあ、先輩は新台狙いにはいかないんですか?」
 というので、
「そうだな。俺は新台は狙わないかな?」
 という。
「どうしてですか?」
 とまた聞くと、
「台の特性が誰にも分からないからさ。パチンコやパチスロを知っている人は、台の特性を理解してやることで、辞め時などの計算が立つわけで、いかに負けない立ち回りができるかということが分かるというものだ」
 ということであった。
「なるほど」
 と答えたが、それ以上の答え方もなかったというものであった。
 先輩に言われて、少し台の特性を聴きながら座って、少し打ってみたが、狙うところを教えてもらい、そこを狙っていくと、アタッカーに入ると、液晶の数字が回転し始めた。
「これがそのうちに揃うと、大当たりということになるんだが、それまでに、大当たりするまでの演出があるんだけど、これにもいくつものパターンがあるから、それが面白いのさ。その楽しみを感じるために、パチンコをする人もいる。だから、パチンコは勝ち負けだけを楽しむところじゃないのさ。これは、どのギャンブルにも言えることなんだけどな」
 というのだ。
 そんな先輩の話を聴いていると、回転を結構するようになった。台の特性も少し分かってきて、
「なるほど、アタッカーに入った回転の権利は4回まで補償してくれるんだ」
 ということも分かってきた。
 そこまで分かっていることを先輩も理解したのか。
「例えば一分間で、何回回転するかということを回転率というんだけど、パチンコの台選びは、基本的に、回転率のいい台を優先すればいい。それだけ当たる確率が高くなるということだからな」
 と教えてくれたが、やっているうちに、それくらいのことは分かると思うようになってきた。
 演出も見ていると、
「どんな演出が、熱いと言われるものか分かってきた気がした」
 と感じた。
 数回大当たりを繰り返すと、
「なるほど、二段階か三段階あって、最後までいかないと当たることはないんだな」
 ということが分かってきた。
 そして、それまでのパターンも分かってきて、
「どうやら、大当たりが濃厚と呼ばれるような演出も含まれているんだな」
 ということが分かってくると、
「そうか、さっきの先輩が言っていた、台の特性が分からないと、面白くないといっていた意味が分かって気がした」
 と感じた。
 これを勝ち負けまで考えて打っているとすれば、台の特性を、
「いかに早く理解するか?」
 ということであろう。
「同じ機種でも、台によって、微妙に違う。だから、面白いのであり、昨日出た台が今日出るとは限らないというものなのだろうな」
 と感じるのだった、
 少しだけ、
「パチンコというのも面白いな」
 ということで少し楽しんで打っていたが、自分が好んで打っていた台が、パチンコ屋からどんどんなくなっていった。
 少し特殊性のある台だったので、それを打つ人は、結構マイナー好きの人ということで、途中から、台数も減らされ、位置も、バラエティコーナーに追いやられてしまったことで、次第に、隅に追いやられることになってしまったのだ。
 それを考えると、やはり店から撤去されるのも、時間の問題だったようで、その台を他の店でも見なくなった。
 そうなると、パチンコ自体に対しても興味がなくなり、あっさりと、パチンコを打たなくなっていた。
 だから、その時、ちょっとパチンコを打ったといっても、数か月くらいの間だったといってもいいだろう。
 風俗に関しては、やはり同じ先輩に連れていってもらったのが最初だったのだが、恥ずかしながら、その頃まで、まだ童貞だった。
 大学二年生の頃だったので、本人としても、さすがに、
「まだ、この年で童貞だなんて」
 ということで、焦りのようなものを感じていたのだ。
 実際に、友達の中で、童貞というのは、日下部くらいのもので、それを見かねた先輩が、
「じゃあ、今度連れていってやろう」
 といって、約束してくれた。
 パチンコの時もそうだったが、この先輩は。
「自分から何かを言い出して、約束したことをたがえたことは一度もない」
 ということだったので、仲間からも、後輩からも慕われていた。
作品名:自己バーナム 作家名:森本晃次