小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

自己バーナム

INDEX|10ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

「ネットの世界だけで付き合ったと思っている人の方が、別れた時のショックが大きく、本当に付き合っていたという感覚になるのだ」
 というものであった。
 確かに、
「人を引き寄せる力は強いのかも知れない」
 この思いは、高校生の頃からあったのだ。
 付き合うまではいかないが、
「お前は話しかけやすいんだろうな」
 友達がいうことで、まず、女性に話しかける役目は、いつも、日下部だった。
 日下部が、話しかけると、仲良くなるまでは、別のやつ、そして、いつもおいしいところを持っていくやつ。ということで、
「俺は貧乏くじだな」
 と思っているのだが、途中で、
「それも悪くないか?」
 と思うようになった。
 実際に、仲良くなった女の子のグループの中で、いつも長続きをするのは、日下部だった。
 他の人は、実際に深い仲になるようなのだが、日下部は、
「友達関係まで」
 ということが多かった。
 本当は、
「もっと深い仲に」
 と思うのだが、相手が、
「日下部さんとは、お友達のままがいい」
 と言われる。
 正直、これは、
「あなたのことをお友達以上には思えない」
 という、
「交際を断る時の常套文句であるが、これはあくまでも、ずっと友達でいた相手に告白する場合である」
 最近友達になった相手に、
「友達の関係で」
 ということを言うのであれば、それは、
「本当に好きかどうか、まだ分からない」
 ということであり、だから、日下部は、
「友達のままで」
 と言われても、
「うん、分かった」
 といって、縁を切ろうとはしなかった。
 他の人は、
「最初から、彼女にするという目的をもっているから、仲たがいをすれば、そこで修復ができないと思うのか。それとも、修復させるよりも、放っておいて、他に行く」
 と考えるからなのか、結構あっさりと、仲が切れるということが多いようである。
 それを考えると、
「最初から友達のようなゆっくりとした関係の方が長く続くのではないか?」
 と考えるようになった。
 友達の中には、最初から、
「好きだ」
「愛している」
 などという、
「甘い言葉を並び立て、相手をその気にさせて、様子を見る」
 というやつもいるようだ。
 というのも、
「相手の出方を見る」
 ということから始めないと、気が気ではないと思うのだろう。
 要するに。
「こちらのペースに巻き込まないと、気が済まない」
 ということである。
 相手のペースに引き込まれたりすると、ロクなことはない。
 日下部が、離婚してから、二人目に付き合った人がそんな感じだった。
 その人は、軽い精神疾患を持っていた。
 鬱病のようなのだが、何でもかんでも、悪い方にばかり考えてしまう人で、一緒にいて話をしていると、
「こっちまでおかしくなってくる」
 という風に思っていた。
 しかし、実際に、話をしてみると、ロクでもない人だったりする。
 特に、
「言っていることが、毎回違っている」
 ということが一番気になった。
 前の日には、ボロクソにある人のことを話していたと思えば、次の日には、庇うような言い方をして、
「一体、どういうつもりなんだ?」
 ということで、こちらは頭が混乱するではないか?
 特に、日下部という人間は、
「人の言葉に左右されやすい」
 というところがあり、
「その人に、洗脳された」
 と感じることが、その頃から結構あったのは、その人の影響が、結構後まで残ってしまったからなのかも知れない。
 その人と話をしていると、
「どこまでは本当なのか分からない?」
 という思いが結構あった。
 だから、
「俺は覚悟を決めて、彼女と向き合う」
 と思うようにした。
 元々、
「彼女がほしい」
 というほどの時期ではなかったこともあり、
「そこまで気にしないようにすればいいだけなので、気が楽なはずだ」
 と思っていた。
 しかし、最初に相手から。、
「好きだ」
「愛している」
 などというキラーワードを並びたてられると、さすがに、その気はなくても、悪い気はしないということで、どうしようもない。
 そんなことを考えていると、
「好きでもないのに、好きになってしまうということはあるんだな」
 と感じてしまうのだった。
 そして、彼女が特に、精神疾患があるということで、同情してしまうと、相手はどうもその気持ちの隙に入り込んでくるようだった。
 こちらは、
「覚悟」
 を決めて相手をしているつもりでいるが、
「相手はその覚悟を、洗脳に変える」
 ということであった。
 相手に対して、どうしても、同情的になることで、
「相手の身にならなければいけない」
 と思う。
 そのため、相手が、毎日のように、いろいろなトラブルに巻き込まれて、
「今日は、ネットで誹謗中傷を受けた」
 あるいは、
「ストーカーのようなやつに狙われている」
 あるいは、
「友達から責められて、パニック障害を起こした」
 などというのが、毎日である。
 こっちは、状況が分からないことで、いろいろな感情を抱いてしまい、
「どうしていいのか分からない」
 ということになるのだった。
「私、あなたしか頼る相手がいないの」
 などと言われると、放っておくわけにはいかなくなる。
 しかも、
「俺に任せておけ」
 と最初に言った手前、覚悟もしたこともあり、
「乗り掛かった舟」
 ということで、その場をやり過ごすことはできないのだった。
 それを思うと、
「相手のいうことを真剣に信じてしまう」
 しかも、それにお金が絡んでくると、
「完全な金ずる」
 ということになる。
 確かに、お金は、貯金から食いつぶせばいいのだろうが、とは言っても、
「いつ何があるか分からない」
 と思って、ずっと貯めてきた金だった。
 いくら、覚悟を決めたとはいえ、女に、しかも、実際にまだあったこともない、ネットだけの知り合いに、いろいろ援助するというのは、そもそもが狂っているといってもいいのではないか?
 考えてみれば、最初に相手は、住所を教えてきた。
 そして、好きなものを、普通に言ってくれば、
「今度送ってあげる」
 という言葉くらいは普通に出るだろう。
 最初の頃は、嗚咽するかのように喜んでいたのに、途中から、どんどん、
「ねだる」
 になってくるではないか。
 それを聴いていると、
「俺って、やっぱり、金ずる?」
 としか思えないのだ。
 覚悟という言葉で片付けていいものだろうか?
 そのうちに、送ってもらった時だけお礼をいうだけになってしまった。
 そもそも、今から思えば、よく話していた時というのは、
「いろいろあって、相談する相手が欲しかった時ではないか」
 そして、それが少し落ち着いてくると、
「医者から、ネット依存はいけない」
 と言われたとか、
 友達から、
「毎日のように挨拶をするのは、気持ち悪い:
 言われたとかいうのだった。
 それは、完全にこちらを洗脳しようとしているのではないか?
 とも考えられるのだった。
 ということを考えていると、
「金ずるとしては、相手のことを考えているとはいえ、自己満足のようなものもあるので、自分も悪い」
 と考える。
作品名:自己バーナム 作家名:森本晃次