記憶喪失の悲劇
「童貞キラー」
という異名があるようで、
「筆おろしには、最適」
ということであろう。
優しい気遣いもできて、先生のような頼りがいもある。そんな彼女を頼もしいと思ったのも、三十郎だけではないだろう」
ということであった。
三十郎は、スタッフに連れられて、入り口のようあカーテンの手前に立つと、何やら、注意事項を聞かされた。
それを聴いていて、思わず、
「んなことは、分かってるよ」
と言いたかったのだが、スタッフとしては、
「これも大切な仕事だ」
と言いたいのだろうが、後で聞いたりしているうちに、
「マジで、こんな当たり前のモラルともいえないようなルールを守れないやつっているんだ」
と思えば、腹が立ってくる。
そして、
「そういう連中のために、真面目に利用している俺たちまで、白い目で女の子に見られるというのは、理不尽だ」
と思う。
しかし、女の子たちからすれば、もっとたまらないだろう。実際にそんなとんでもない連中の相手をさせられて、正直、
「精神を病んでしまう」
ということも普通にあるだろう。
それを考えると、ちょっとしたことで、普通に来ている客にイライラをぶつけてしまったり、客が悪くないのに、衝突してしまい、その客を出禁にでもしてしまい、問題にあることもあるだろう。
その客が、本来なら、完璧な客であれば、何ら問題ないにも関わらず、その対応ができないことで、スタッフに、
「あのお客さん、私にひどいことをしました」
などと言ってしまうと、スタッフも、
「あれ? あのお客さん、いい人で、そんな変なことはしないんだけど」
と言ったとしても、それを聴いた女の子がさらい怒りをあらわにし、
「私のいうことがウソだというの?」
と言い出せば、こうなると、
「売り言葉に買い言葉」
どうしようもなくなってしまうことだろう。
そうなると、
「私は、スタッフからも、客からも、相手にされない」
などと思うと、
「店を辞める」
と言いかねない。
彼女のいうことを聴くのであれば、一人の客を出禁にしないといけない。そうなると、
「出禁になるような客は、他に言っても、同じようなことをして、結局、どこの店からも相手にされないようになるのだ」
ということである。
そうなると、他の店との、
「ブラックリスト」
の情報開示をしていて、
「あの客を出禁にした」
というと、
「えっ? おたくはあの人を出禁に?」
という反対意見があると、他のところも、結構、
「いやいや、あの客を出禁というのはないでしょう?」
などと言ってくるものだ。
そもそも、出禁になるかどうか分からないくらいの怪しい客であれば、
「えっ?」
などと言って、口を挟むようなことはしないだろう。
それをするということは、それだけ、
「店側からも慕われている」
ということになる。
なぜなら、もし、その客を出禁にするようなことになった場合、その客を出禁にしたということが、他から漏れると、
「情報共有と言いながら、、店同士のバチバチというのもあるかも知れない」
ということになると、そんな情報をいかにあやつることができるのか?
ということになるのである。
それを考えると、
「一人の女の子を切る方が、店側としては、リスクが少ない」
と言えるだろう。
そういう意味で、女の子と店、そして、客の間での問題は、大きいのかも知れない。
その時はもちろん、分からなかったが、女の子のことを店は、基本的に守ろうとする。そして、その中でも、一番大きな問題は、
「身バレ」
というものであった。
これが、
「デリヘル」
というもののように、
「客がホテルにいて、女の子が、そこに向かうという場合は、どうしようもないが、店が店舗を構えていて、そこに、男性が来る」
というシステムであれば、防ぎようがある。
待合室などに、マジックミラーを仕込んで置いたり、、防犯カメラを、恩の子に見せたりという方法がある。
中には、先に客を部屋に案内しておいて、部屋の外から確認するというところもあったりする。
しかし、これが難しいところで、身バレの問題というのは、基本的には、お互いに分からず、出会いがしらで、客が、上司であったり、学校の先生であったり、下手をすれば、父親だったりということもありえなくもない。
それを思うと、女の子というのは、前述のとおり、
「昼職を持っていた李、学生だったり」
という顔を持っている。
だから、そのプライバシーを彼女たちは必至に守ろうとする。
というのは、
「目標を持って。この仕事をしているのだから、ここでバレてしまうと、今後、目標に向かって進むための、致命的なミスということになりかねないからである」
それを思うと、女の子も必死だ。
店の方としても、女の子を守らないと、看板の女の子が、
「私辞めます」
と言って、翌日には、ライバル視されている店に新人としていないとも限らない。
こうなると、一人の女の子だけの問題ではなく、彼女についていyた、客をすべて取られるということになる。
集客率が、50%くらいの率を誇っていれば、たまったものではない。
売り上げが半分になり。その分がライバル店に行くのだ。
もし今まで同じくらいだったとすれば、その影響だけで、
「来月から、ライバル店は、うちの3倍の売り上げとなる」
と言っても過言ではないだろう。
それを考えると、
「女の子を簡単に切るわけにもいかない」
ということになるが、それも、女の子次第だろう。
たまにしか指名の来ない、
「フリー要因」
というような女の子であれば、固定客もついていないだろうから、店とすれば、何とでもなるということになるだろう。
しかし、そんなことを簡単にできるわけもなく、結局、
「どっちを切ればいいか分からない」
ということになる。
三十郎は、そんな身バレなどということを知り由もなく、女の子が見ていることを意識することもなく、カーテンの向こうに控えている女の子尾にドキッとした。
正直、
「タイプだった」
のである。
「は、初めまして」
と、緊張した挨拶に、彼女はにこっと笑って、
「どうぞこちらに」
と言って、手を引いてくれたのだ。
清楚な感じはするが、どこか冷たさを感じた。敬語もどちらかというと寂しい感じがする。
部屋に入るまで、彼女は、
「こちらに」
「どうぞ」
という、動作を促す言葉しか言わなかった。
「これが風俗というところの、礼儀なのか?」
と、三十郎は、自分の頭が混乱してくるのを感じた。
部屋に入ると、
「どうぞ」
と言ってベッドの上に腰かけさせた。
「今日は、どちらからなんですか?」
と、やっと会話をしてくれた。
「ああ、えっと、実は先輩に連れてこられて」
というと、急に、彼女の表情が和らいだ。
「自分のお家だと思って、ゆっくりすればいいのよ」
と言って、ニコニコ笑っている。
それを見て、三十郎は、初めて彼女を。
「可愛い」
と感じた。
「いい先輩ですよね? きっとその先輩が私のことを予約してくれたんでしょうね?」
というと、