記憶喪失の悲劇
何と言っても、予約が多いわけで、その時間に対応する客が、ちょうど同じ時間に重なるということも、それほどないだろう。
なぜなら、一人のキャストに対して、対応時間が値段によって、さまざまであるし、次のお客様への準備等で、少しくらい時間がずれたりもする。
さらに、
「ご案内」
がかぶらないように、先着で中に入っていくことで、それほど、待合室が混みあうということはないのだ。
それを考えれば、
「待合室に、いろいろある方が、楽しい」
という客も結構いるようで、店も、そのままにしているようだ。
さらに、風営法の規定の中に、
「新店舗を経営したり、新規参入のような会社は許さない」
というような規定があるので、新しい店舗ができた場合、そのほとんどは、他の店のチェーン店のような形になるだろうが、その時に、あまり大げさな改修をすることは許されないということになる。
だからこそ、
「前の店舗をそのまま踏襲し、同じような内容で、コンセプトだけを変更する」
ということになるだろう。
「サービスオプションの変更だったり。壁紙を張り替えるなどの程度くらいにしておかないと、改修とみなされる」
と言えるのではないだろうか?
だから、ここの待合室も、カウンターは元々あったので、それ以外を、家具や色調を変えるくらいにすると、こういうコンセプトになったのだ。
「そもそも、この店になる前も、ここは、高級店だったからな」
と先輩は言った。
「高級店というと、サービスが濃厚で値段が高いというのもあるが、同じサービスでも、表立って言えないのもあるからな」
と言って、先輩は、ニヤッと笑った。
「ちなみに、ここは、そのサービスはない。だから、逆に、プロの技をしっかりと味わえるというわけさ」
というのだった。
その日、最初カウンターに座って、ドリンクバーを所望していたが、コーヒーを落ち着いて飲みたくなったので、今度は、重役のようなソファーに腰かけた。
「これは、気持ちがいいですね」
と先輩にいうと、
「ここは、昔だったら、目の前にシュガレットケースが置いてあって、ライターも高級品。それこそ、金ぴかの彩で、本当の高級店だったら、葉巻のようなものまで用意してあったくらいなんだ。要するに、そこまで完全に、差別化をすることで、どれだけ客を満足させるかということを考えているということさ。高級には高級のわけがあるのさ。これは、経営学などを勉強するなら、いいことなんだろうと思うぞ」
と耳元で言った。
「まさか、先輩、将来、起業なんてことを考えているんじゃないですか?」
と聞いてみると、ニッコリと笑って、
「分からんぞ?」
というのだった。
その時の表情から、本心を見抜くことはできなかったが、
「まんざらでもない」
と思ったのは、事実だった。
今の時代は、基本的に、
「自分の家以外では、室内での喫煙は禁止」
ということになっている。
よほど分煙ができていて、分煙室が隔離されていて、さらに、電子タバコであれば、
「ワンチャン、いいのではないか?」
と大目に見られることもあるだろうが、今は、まず、街にそういうところはない。
皆勘違いしている人もいるかも知れないが、
「受動喫煙防止法」
というのが施行した時、
「段階的に行われた」
ということである。
本番が4月からだったが、本当は、前の年の夏くらいに、一度先行して、実施されたところがあった。
それが、
「病院であったり、公共の施設」
だったのだ。
だから、その場所というと、
「病院や学校」
というのが、まず一番に考えられる。
そしてもう一つが、
「公園」
である。
病院や学校というのは、そもそも、こんな法律ができようができまいが、今の喫煙場所が限られてきている時点で、自主的に禁煙にしてしかるべき場所である。
「いまさら感」
があっても仕方がないだろう。
しかし、公園だけは、そうもいかない。今でも、
「室内で吸えないから」
ということで、公園で吸っている人がいるくらいだ。
「公園では吸ってはいけない」
ということくらい分かりそうなものなのだが、問題は、
「路上喫煙」
であった。
基本的に、都心部の駅近くであったり、オフィス街などでは、路上喫煙禁止場所になっていたり、もちろんではあるが、地下通路も室内同様だから、当然、喫煙は許されない。
それを考えると、
「どうしても、公園で吸う」
ということになるのだろう。
しかも、路上の禁煙所というのも、刑法での禁止事項ではない。基本的に、
「都道府県による条例の定めるところなので、せめて罰金くらいであろう」
というものである。
それを思えば。公園の方が開放的だし、問題がないようになっている。しかし普通に喫煙禁止ではないところで吸っても、基本的には、法律違反でも、条例違反でもないというところが、大きな問題であり、そんな中途半端なことをするから、
「公園では吸ってもいい」
ということになるのだ。
ただ、
「人間って、何てバカなんだ?」
と思うのは、法律で決まっていようがいまいが、表で吸うのは違反だということは、古戸でも分かるというものだ。
なぜか?
ということになると、
「灰皿がそもそもないのだから、禁煙なんじゃないか?」
という理屈は、小学生にでも分かるというものだ。
だからこそ、
「いい悪いは別にして、コンビニの横には、灰皿が設置してある」
ということなのではないだろうか?
それも、
「路上喫煙」
には変わりなく、さらに言えば、
「集中して吸っているので、その付近の空気の悪さは、公害レベルだ」
と言えるのではないだろうか?
そういう意味で、コンビニの横の、喫煙コーナーも、犯罪行為でしかなく、本来なら、他の場所、例えば大きなターミナルに設置してあるような、
「喫煙コーナーを設けないといけない」
というはずなのである。
それができないのは、
「そんな金はない」
というのだろうが、そんな金がないのであれば、最初から、すべてを禁煙にしてしまえばいいのだ。
ここまで喫煙場所を制限しているのだから、中途半端なことをせず、
「世の中すべてを、禁煙」
としてしまえばいいのではないか?
どうせ政府は、
「たばこ税が取れない」
などと言って、自分たちのことしか考えていないのだろうが、
「タバコをやめられない人はどうすればいいか?」
というのだろうが、
そんな連中のために、国の金で、
「禁煙促進病院」
のようなものを作って、
「タバコをやめられないという依存症の連中」
を、入院させればいいのではないか?
「タバコと、大麻やマリファナのような薬物とどう違うというのか?:
昔であれば、ヒロポンや大麻など、合法だった時代もあったのに、今は違法となっている。タバコだって、ここまで喫煙者を締め付けているのであれば、中途半端なことをせずに、
「非合法」
ということにしてしまえば、タバコがなくなっていいのではないか?
と言えないだろうか?
元々タバコを作っていた、
「元、専売公社」