記憶喪失の悲劇
と、普段なら、風俗というと、どうしても低俗なイメージで見ていたことが恥ずかしくなるほどだった。
だが、
「先輩ってすごいな」
と感じるほどの知識には、一目置くほどであり、
「いやいや、風俗というのは、結構置くが深かったりするんだ」
という先輩の言葉を、素直に、先生から聞いているという気持ちで聞いていたのだった。
「先輩の言葉を聞いていると、風俗も悪くない」
と思うようになった。
むしろ、変に意識する連中の方が、却って、偏見で見ていることで、
「いやらしい」
と感じるほどだった。
だから、初めていくと、それから、
「お金をためて、また行こう」
と思い始めると、それが自分のルーティンになってくるのを感じた。
「ストレスが溜まったものを鑑賞するのに、風俗を使って何が悪い」
という感覚であった。
風俗というものが、
「いかに、非道徳なもので、不健全化?」
ということは、考えてみれば、誰かから教えられたわけでも、諭されたわけでもない。
しかし、皆、
「その話題に、わざと触れない」
というようにすることで、
「実に嫌なことだ」
ということを植え付ける結果になってしまい、
「人が、わざと触れないようにしていることは、モラルや、道徳的に、あまりいいことではない」
と感じさせる、一要因となってしまっていた。
だから、そして、余計に、
「風俗というものが、話題にできない」
ということであるから、性行為自体も、
「触れてはいけないことということになったのか」
それとも、
「性風俗が、触れてはいけないことになるために、性行為をそのターゲットにした」
ということになるのか、どちらにしても、税行為自体が、元凶のように思わせるのも、無理もないことではないだろうか?
さて、そんなことを考えていると、いよいよ先輩が、お店に行く時間になったということで、先輩の後を、まるで、
「金魚のフン」
のように、くっついていったものだった。
大体の場所は知っていたが、近寄ることもなかった。
そもそも隣は、同じ歓楽街一体の中でも飲み屋街だったので、
「酒があまり得意ではない」
という三十郎には、まったく行くようなところではなかったのだ。
「繁華街はさぞかし賑やかなところだろう」
と思っていたが、ネオンサインも、想像していたよりも、すごくはなかった。
ライトアップというと、ネオンサインが、まるで、
「芸術を奏でる動画」
という雰囲気であったが、今は、動画の雰囲気はかなり低くなっていて、
「思ったよりも、寂しい感じであった」
と感じるほどだった。
風俗街に入っていくと、色合いが、賑やかというよりも、
「妖艶な雰囲気」
という感じで、歓楽街が、
「赤や青」
と言った原色系よりも、
「紫や、少し薄い紺色」
のような感じで、そこには、
「淫蕩な雰囲気」
を醸し出しているのだった。
「このネオンの雰囲気は、どうやら昔かららしいんだ。歓楽街の方のネオンは、まったく変わってしまったけどね」
というではないか。
「なるほど、風俗の方も、変えようと思えば変えられないわけではないが、今の雰囲気を考えると、前からそうだったと思う方が自然な感じがする」
と感じたのだった。
先輩も以前、似たような話をしていた気がするが、実際に見たわけでもないし、その頃は話だけでピンとこなかったので、余計なことを考えることもなかったのだ。
先輩は、今までにも風俗のことを話してくれた。
そのほとんどは、
「行ったことも、これから行くこともないと思っている人にとって、まったく不必要なものだ」
といえるものであり、
「興味もない」
と言ってよかった。
しかし、それが、
「急に切実な思いを抱くようになった」
と考えたから、そのタイミングで、
「先輩が連れていこう」
と感じてくれたのかも知れない。
しかし、その逆に、
「先輩が連れていってあげよう」
ということになったから、
「急に切実に感じるようになる」
と言ってもいいのかも知れない。
もう一ついえば、こんな深く考える余裕があの時にあったということもあるので、これらの考えは、
「後になって、自分の中で作り上げた妄想のようなものなのかも知れない」
ということであった。
先輩が連れてきてくれた店は、一見、
「ヨーロッパのお城か、宮殿」
を思わせるようなところだった。
となりの店が、まるで、日本の高級料亭を思わせるような作りになっていることから、
「こりゃあ、この一帯でも、さらに別世界なんだな」
ということであった。
先輩から聞いたところによると、
「風俗には、最高級店、高級店。大衆店、格安店というランクがあるのさ、高級になればなるほど、ソープの技というものが洗練されてきて、マットを駆使するようなものをたくさん、嬢は身に着けていて、それだけのサービスを味わえるが、値段が下がっていくと、まさに、ショートコースで、回転数を増やす、ファストなものが何になるかということを考えさせられる」
ということを言っていた。
今でこそ、大衆店が多くなったのだが、それは、
「質より量」
を選んだからというわけで、
「高級店とかであれば、本当に、ボーナスが出ないとなかなか敷居が高い」
ということであったが、大衆店であれば、2,3カ月であっても、かなり楽だといってもいいかも知れない
だが、たまに、
「質より量」
では我慢できないことがある。
「せっかくだから、たまには、女の子の最高の癒しを受けたい」
と思うのも当たり前だ。
そうでないと、
「欲望のままに、欲望を果たすためだけのため」
と考えると、今まで感じてはいけない
「今までが、ただ、出すだけという、感情のない時間を過ごしていたのではないかと思うと、たまに、高級店での、最高の癒しがもらえることを楽しみにしている」
と感じないわけではなかった。
特に。高級店には高級店なりの、
「心遣い」
というものがある。
それが、
「ソープの技」
という露骨なものではなく、あくまでも、
「風俗の愉しみ」
それが、
「癒しになるんだ」
ということを忘れないようにするというのが、モットーになってきた。
そんな思いを感じながら、先輩が連れて行ってくれた店の待合室で待っていると、これほど、興奮したことはなかった。
実際に今でも、待合室で待たされるのが、それほど億劫ではない。さすがに、30分以上待たされるのは、愚の骨頂だと思っているので、予約は絶対に欠かさないが、予約で待つ場合は、何かのトラブルでもない限り、十分な許容範囲だったのだ。
待合室は、ある意味至れり尽くせりであった。
というのも、ドリンクバーが設置してあったり、ソファー咳だけではなく、奥はバーカウンターのようになっていて、さらに、その奥では、まるで社長室のようなフカフカソファーと、カラスのテーブルという形のものが用意されていた。
広さに限りがあることで、なかなか、いろいろ工夫はしているだけに、それぞれの場所はせまかったりするが、その分退屈はさせない。