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記憶喪失の悲劇

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 と思ったのだが、それも次第に自信がなくなってきた。
 考えてみれば、普通であれば、
「よく似ている人だ」
 と最初に感じると、見ているうちに、次第に、そうでもないかのように思えてくるのが普通のはずなのだ。
 しかし、今回の
「拾ってきた女性」
 と、
「いちか」
 という名の、風俗嬢、
 それそれを比較して考えると、
「最初は打ち消したはずなのに、次第に、似ているという方向に感じるようになったのは、一体。どういうことだろう?」
 ということであった。
 雰囲気はまったく違っている。
 風俗嬢のいちかは、オーラがハンパない。
「彼女ほどのオーラは、童貞を奪ってくれた、みなみさん以外には、感じたことがないほどだった」
 といってもいいだろう。
「みなみといちか、この二人もまったく雰囲気が違っているが、共通点は多いような気がする」
 と思っていた。
 一番の共通点は、
「その力強いオーラだ」
 といってもいいだろう。
 その思いを感じたからなのか、
「みなみ嬢との最初」
 を思い出してしまったのだろう。
 みなみ嬢には、それから何度か入ったが、いちかを知ってから、みなみ嬢から、自分の中で、
「卒業した」
 と感じたのだった。
 みなみ嬢から教えてもらったのは、テクニックなどだけではなく、風俗嬢の感覚であったり、
「オンナというものの、本質と本性」
 という意識のことも教えてもらった。
 何を言いたいのか、途中から、よくわからなくなったが、そのおかげで、
「いちかさん」
 と知り合った時、お互いに、意気投合できたのだと思った。
 まさか、いちかさんが、そんな特命のようなものを持っていて、風俗嬢をやっていることに、それらの一連の事情が孕んでいたのだった。
 ただ、これは、後になってから知ったことであって、
「いちかさんは、風俗嬢をやっていることに、いくつかの理由がある」
 ということは、何となくではあるが、分かっていた気がする。
 そして、そこにどんな理由があるにせよ、
「危険が孕んでいるのではないか?」
 と感じるのだった。
 そういう意味で、
「いちかさんのような女性は、普段の彼女が近くにいるとしても、まったく分かるはずのない人であるに違いない」
 ということは、いえるだろうと思うのだった。
 今回、拾ってきた女性は、
「たぶん、いちかさんなんじゃないだろうか?」
 と思ったが、あれだけの深い仲だと思っていただけに、一緒にいる人が、
「いちかさんであってほしい」
 という思いと、
「あまりにも知っているいちかさんとの違いが激しい」
 と感じるだけに、これほどまでに複雑な思いになってしまうとは?
 と感じさせられるのだった。
 だから、当初は、
「厄介なものを拾ったな」
 と感じたのだ。
「いちか」
 という女性は、お店で見せる態度は、完全に三十郎に酔っている雰囲気だった。
 それまでに相手をしてもらった女性は、
「みなみ嬢」
 だけだっただけに、その違いというものがまったく違っていると感じられるのだ。
 みなみ嬢は、三十郎との距離を、広げないようにしながら、感覚は明らかに、
「上から目線」
 だった。
 本来の三十郎は、相手に上から目線をされるのが、我慢できないくらいの屈辱だったのだ。
 そんな三十郎は、
「みなみさんに飽きた」
 ということはなかった。
 ただ。
「他の女性も見てみたい」
 という衝動に駆られたのだ。
 以前から、みなみ嬢から、
「他に気になる女性がいれば、その人のところに行ってもいいのよ」
 といってくれていた。
 ただ、それは三十郎は男として、
「そんなことはできない」
 と感じていた。
 確かに、他の女性を見てみたいという思いがあるのも事実で、
「他の女性を見ることで、余計に、みなみのことを好きになるかも知れない」
 と感じたほどだった。
 それから、数人の女性に相手になってもらったが、さすがに、みなみさん以上の女性はいなかった。
「もう少し他の女の子に遭ってみて、パッとしなかったら、みなみ嬢に戻ることにすればいい」
 と思ったのだ。
 みなみ嬢とも、何度か会って、彼女からも、
「他の女の子とも遊んでみれば?」
 と言われた。
 正直自分では、
「他の女の子に遭って、お相手をしてもらったとしても、みなみさんほどの女性はいないのではないか?」
 と、考えていた。
 だから、
「どうせ、すぐに戻ってくる」
 と、自分の中でタカをくくっていた。
 だが、実際に他の女性に遭ってみると変わった。
 その相手が、
「いちかさん」
 だったのだ。
 いちかさんは、みなみさんほど、優しさはなかったが、
「一緒にいると、忘れられない存在になった」
 といってもいい。
 正直、身体のどの部分か何かに、強く惹かれたという感じでもない。
「何か気持ちを感じさせる雰囲気が忘れられない」
 というような感じでもなかったのだ。
 だから、自分の中で、
「どこが忘れられないんだろう?」
 というのは分からないが、少なくとも、何かのオーラを感じさせるところであった。
 さらに、彼女が、この店だけでなく、
「この地域の風俗嬢の中でも、ランクが最上級である」
 と言われているのだが、それが、遭ってもどこからくるのか分からないのだった。
 そう思って、もう一度指名してみると、今度は、本当に忘れられなくなってしまった。
「彼女は、リピートして分かるところがあるんだ」
 ということは感じたが、
「その何が分かるのか?」
 というところは分からなかった。
 ただ、いろいろ、
「口コミ」
 などと見ていると、
「どうやら彼女は、それぞれ皆自分の中にある何かを、引っ張り出されているかのように思えて、その心地よさから、彼女の沼から抜けられなくなるのではないか?」
 と感じられたのだった。
 もっとも、三十郎もその一人であり、
「そういえば、彼女に最初に遭った時、みなみさんと会った最初のあの日を思い出していたな」
 と感じた。
 皆それぞれ、
「過去」
 というものを持っていて、あるいは、引きずっていて、今を生きているといえるであろう。
 その感覚を、彼女の魅力が、思い出させるだけの魅力があるのだろう。だからこそ、
「あれだけのオーラ」
 と言えるものを、放っているのではないか?
 と感じるのであった。
 だから、彼女の中に、時々、
「感情があるのだろうか?」
 と思うような、冷徹な部分があり、そこに魅力があるというと、語弊があるが、そういわないといけないだけの、何かを感じさせるのであった。
 そんな、いちかという女性と、お店で会っていた時のことを思い出そうとするのだが、どうにもハッキリと思い出せないところがあった。
 今でも、風俗には時々通っているが、みなみさんにも、いちかにも遭っていない。
 いちかは、急に辞めていき、途方に暮れた気分になったが、だからといって、
「みなみさんの下に戻ろう」
 という気分はなく、風俗は、
「本当にただの遊び」
 という程度になったのだった。
 しばらくは、
「それほど行きたい」
 ということもなく、
「行くとしても大衆店」
 という程度だった。
作品名:記憶喪失の悲劇 作家名:森本晃次