記憶喪失の悲劇
そんなことを考えていると、
「自分のまわりにいる人を見ていて、そんな気になってくる」
という人は結構いるのではないだろうか?
たとえば、テレビを見ていて、女性でも、いろいろなジャンルの人がテレビに出ている。
「演歌歌手」
「アイドル」
「シンガーソングライター」
などと言われる女性を、
「美しさ」
という尺度で測れば、それぞれに、魅力が違っていることだろう。
それを表に出そうとすると、
「衣装が違っていたりする」
ということになるのであろう。
演歌歌手であれば、
「着物」
アイドルであれば、
「ミニスカなどの衣装」
と、それぞれを輝かせる服を着せて、プロモーションする。
その雰囲気に、一番マッチするオーラを出せる人が、
「その世界での美しさを彩る」
といってもいいのかも知れない。
ということを考えると、
「つかさという女性は、この世界で、いかにオーラを出せるかということが分かっていて、それが、一番、自分を美として輝かせることができるのか?」
ということが分かっているかのようであった。
「耽美主義」
という言葉があるが、つかさという女性は、
「きっと、この耽美主義という言葉を理解し、自分が、どこで輝くのか?」
ということを分かっているということだろう。
それが、
「自分を輝かせる」
ということに繋がり、そのことが、つかさという女性の、
「強み」
であり、
「武器だ」
と言えるのではないだろうか?
そんなことを考えていると、
「つかさという女性は、これからも、果てしなく美しくなっていくのだろう」
と考えられた。
つかさが、源氏名として使っているのは、
「いちか」
という。
「そう、いちかというと、三十郎が憶えていた彼女のことである」
彼女は、確かに、
「風俗業界の耽美主義」
といってもいいかも知れない。
風俗業界というと、どうしても、
「妖艶な雰囲気」
ということがイメージされる。
もちろん、最近の風俗業界というのは、いろいろな業種もあり、コンセプトもバラバラ、それだけ、ターゲットとなる年齢層も違えば、金額設定も変わってくる。
最初から、
「ソープに行こう」
といって、店のホームページで研究して、予約してからいくという人もいるだろうし、
そこまでしなくても、風俗街にある、
「無料案内所」
の暖簾をくぐって、そこで、案内人に紹介してもらうという手もある。
「無料休憩所」
からの客であれば、割引が効いたり、さらには、女の子の好みから、
「ちょうどいい店をチョイスしてくれることで、すべてを見る必要もない。」
と言える。
何と言っても、
「情報を対面で聞ける」
ということが最大のメリットで、店に直接電話を入れてくれて、
「交渉成立」
ということになれば、店から、スタッフが、直接迎えに来てくれたりして、場所をいちいち聞いて確認しながらいくこともない。
さらに、この時のメリットは、
「店のスタッフと一緒だから、他の店の呼び込みに引っかからずに行ける」
ということである。
こうなると、案内所から店までは、すでに予約済みということであり、
「予約を入れているのと同じ」
ということであるから、交渉成立の時点から、すでに、女の子は準備に入っている。
すると、待ち時間も少なくなり、
「案内がスムーズにいく」
ということになるだろう。
それを考えれば、
「無料案内所というのも、あなどれない」
ということになる。
また、こういう無料案内時というのは、一人の客だけではなく、若い連中に多いのだろうが、例えば、朝一番まで、繁華街で飲んでいて、誰か一人、言い出しっぺみたいあ人がいて、
「ソープに行こう」
と言い出す人が、
「かなりの確率でいるのではないか?」
と、思われる。
ただ、これは、意外と皆感じていることであり、
「誰かが言い出すのを待っていた」
ともいえるだろう。
その証拠に、誰かが言い出した瞬間から、反対意見などまったく出ないからであっただろう。
一種の、
「お約束の儀式」
といっても過言ではないかも知れない。
飲み屋街には、そんな時間制限はあまりないのかも知れないが、性風俗関係のお店(デリヘルは除く)の営業時間というのは、風営法で決まっている。
「午前6時から、午前0時まで」
というのが、基本となっている。
もちろん、条例で、その範囲内であれば、別に変えることはできるのだが、基本的に、全国共通で、この時間になっているのだろう。
そもそも、風俗業界における。
「深夜時間」
というのが、
「午前0時から、午前6時」
ということから、この間は、営業をしないということになったようだ。
だから、
「早朝営業」
というと、午前6時からということになるのだ。
基本は、9時か10時というのが基本かも知れないが、早朝営業というと、基本、40分から1時間くらいのショートコースが売りになっている。無料案内所にやってくる若い団体の連中などは、ちょうどそれくらいのコースを望むのだ。
要するに、
「酒を飲んだ最後の締め」
と言ったところであろうか。
そんなショートコースを望むのだから、いわゆる、大衆店と呼ばれるところか、格安店と呼ばれるところが、
「早朝営業を行っている」
ということになるのであった、
というのは、
「そもそも、高級店に、そんな早朝営業を行う理由はない」
ということである。
高級店というのは、そもそも、
「女の子と、サービスの質」
で売っているわけである。
だから、客も高い金を出して、
「サービスを買う」
というわけで、そんな彼女たちが、格安店のようなことをすれば、せっかくの
「質と格」
というものが台無しになるだろう。
だから、高級店と呼ばれるところで、早朝からやっているところはあまり聞いたことがない。
ただ、客の中には、
「会社に行く前にスッキリしたい」
という人もいるかも知れない。
ということで、そんな客のためだけに、早朝からやっているのかも知れない。
だから、決して、ショートコースを設けるようなことはしない。そこまでやってしまえば、高級店としては、
「終わりだ」
といってもいいかも知れない。
そんなことを考えると、
「時間帯、料金設定。それらは、風俗店のランクに大いに関係がある」
ということになるのであろう。
それが、風俗店の、常識と呼ばれることなのかも知れないが、理屈が分かってみると、
「経営というのは、実に面白い」
と思うことだろう。
つかさも、同じようなことを考えていて、
「いずれは、店の経営をしてみたい」
という考えがあり、今回の諜報活動を、
「危険だ」
と思いながらも、自らその道に飛び込んだのだった。
そこで、三十郎が、
「彼女の客」
としてきたことがあった。
いつのことだったか忘れてしまっていたが、いちかという女性を強いインパクトで覚えていたのは、間違いない。
だが、あの時のあのインパクトのいちかと、自分が連れて帰った女とが、
「よくは似ているが、まさか本人ということはないだろう」