記憶喪失の悲劇
といっても、過言ではあるまい。
実際に、それが、
「それまで、俺が知ることができなかった、女の正体」
というものではないか?
と、三十郎は考えたのだった。
ただ、この時、セットで感じたのは、
「男の本性だ」
ということだ。
「片方が本質であれば、片方が本性」
そのどちらにも、
「片方」
というものは、なれるということなのだろう。
女性記者
女は、ある組織に潜入し、取材を慣行していた。
大っぴらにやると、相手に悟られてしまい、それが自分にとって、いかに不利なことになるかということは分かっていた。
「さすがに消されるということはないだろうが、社会的な抹殺くらいはされてしまうだろう」
と考えていた。
そんなことになってしまうと、ロクなことにならない。それだけは避けたいことであった。
その組織というのは、
「反社会勢力一歩手前」
といってもいいところで、その存在を認識しているのは、警察の公安関係か、政府トップの一部の人間くらいであろう。
今までにも、日本政府は似たような組織を、水面下で内偵していて、それを判明できるくらいまで、特化させなければいけないということで、
「政府は政府」
ということで、密かな部隊を作っていた。
テレビドラマなどで、よく出てくるものとして、
「どこかの河川敷で、一人の身元不明の男の死体が見つかった。地元警察の方では、事故死として片付けたようだが、親族は納得がいかない。殺された男の身元がそう簡単に、分かるわけではないので、捜査は難航を極め、結局、迷宮入りということになってしまうだろう」
それが、政府側とすれば、さすがにこのまま放っておくわけにはいかないだろう。
かといって、騒ぎ立てるというのも、得策ではない。ここまで内偵を進めてきたのに、
「政府が、反社会勢力に、策を弄してでも、その本質に近寄ることもできない」
というくらいになってしまっては、本末転倒だということになる。
政府は、本当は、
「弔い合戦」
を仕掛けなければいけないのだろうが、そうもいかない。
相手も、いよいよ、本気で動いているのは、
「殺人を犯した」
という意味で、証明されたようなものである。
ただ、やつらからすれば、
「これくらいのことは、これまでに何度おあったことなので、日常茶飯事だ」
というくらいに思っているとすれば、それは、
「本当に恐ろしい連中だ」
ということになるのだろう。
かといって、
「許すことはできない」
が、
「さらに余計なことをしようとすると、仕損じた時のリスクも大きいだろう」
ということだ。
本人にだけではなく。家族などにもその影響が広がると、相手の、
「何をするか分からない」
ということが、二の足を踏ませているのだろう。
それを分かっているから、やつらも、無理をするのだ。
「本当は、人の抹殺などしたいわけはない」
と感じるし、
「それでも、自分たちの保身のためには、それくらいのことはしないといけないだろう」
ということにもなるのだった。
ただ、基本的に、
「政府というのは、昔から、保身を第一に考える」
ということから、強引なことを政府がするとは思えなかった。
だが、このまま、迷宮入りというのは、できない。
「少なくとも犠牲者がいるのであれば、何とかしないといけない」
ということである。
何といっても、死因は、
「酒に酔って、川に転落。目撃者がいなかったので、悲劇につながった」
ということであった。
「うちの夫は、そんなになるまで酒が飲めるわけはない。そもそも下戸なんですよ」
と被害者の家族は訴えてくる。
「警察というところは、何かないと動いてくれない」
とは、よく言われるが、それよりも、
「何かが起こっても、迷宮入りになることばかりだ」
と言えるだろう。
基本的に、警察は、
「令状」
というものはなければ、深くかかわらない。
「証拠探しのために、容疑者の家宅捜索をするには、捜査令状というものがいる」
ということであるが、
「いくら容疑者といっても、まだ、犯人として、検事が送検するまでは、捜査令状がないと動けない」
ということだ。
そして、何と言っても、犯人が確定していたとして、拘束しておかないと、
「高跳び」
であったり、
「証拠隠滅」
ということが考える場合、警察というところは、
「裁判所が発行するという、多雨彫令状によって、犯人を拘束できる」
ということである。
犯人は、そこまでくれば、もう悪あがきをすることはできない。
令状が出ているにも関わらず、証拠隠滅しようとすれば、その時点で、さらに罪が重くなる。
高跳びにしてもそうだ。
昔、凶悪犯にも、時効があった時代であれば、
「海外に逃げたとしても、その間は、時効の進行はストップする」
ということを、普通の人間は知る由もないだろう。
となると、
「いくら海外で十五年間潜んでいて、時効だということで日本い大手を振って帰ってきたとしても、警察が、海外にいたことを証明さえできれば、逮捕は可能で、逮捕した時点で、時効は失効したといってもいい」
ということである。
そうなると、今の時代のように、
「凶悪犯の時効が撤廃された」
ということであれば、犯人として、
「もう海外に逃げる」
というのは、
「二度と日本には帰ってこれない」
ということである。
そういう意味では、
「海外追放」
という昔の罪のようなものは、曲がりなりにも成立していることになる。
だから、結局、
「本当にやむを得ない犯罪でもない限り、
「国外逃亡というのは、百害あって一利なし」
ということなのであろう。
ただ、
「国家を狙う、反政府組織による犯罪という、スケールの大きなものであれば、実行犯の一人や二人、海外で養うことくらいは簡単なのだ」
それをもし、犯人側が耐えられなくなり、
「自首した方がマシだ」
と誰かが感じかねない。
そうなると、収拾がつかなくなり、
「犯人を、秘密裡に葬り去った方がいいに決まっている」
ということになる。
その都度葬るというのも大変だ。
そこで組織内に、
「プロの殺人集団:
なる者がいても無理もないことだった。
だが、それには、下手をすれば、他国の軍に訓練を任せるか、あるいは、
「世界的な諜報集団や、殺し屋のような集団に、訓練してもらうか?」
さらには、
「直接彼らに依頼するか?」
ということである。
世界的な組織であれば、最初から、計画を練りに練り、実際に行動をする時には、
「絶対に大丈夫だ」
という状態に持っていきながら、保身のための計画も、しっかり練られている必要があるというものだ。
ただ、いくら日本が、
「アメリカの属国」
に近くても、
実際には、属国にすら上がっていないのだから、
「日本というのは、何と中途半端な位置にある国なんだ」
ということになる。
もっと言えば、
「こんな国は、政府ですら、ロクな人間はいないのだから、アメリカのような国でも、簡単に属国にしなくとも、属国並みのことはしてくれる」
というものだ。