小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

邪悪の正体

INDEX|7ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

「ただ、彼女は一時的な記憶喪失になっているようですし、もし記憶が戻っても、思い出すようなことをさせてしまうと、また記憶を失いかねません。今度失うと、それこそ大変で、本当の記憶喪失になってしまいますので、そこは気を付けてくださいね」
 と、医者に釘を刺され、警官は、ゾッとしたものを感じたのだ。
「もし、それで記憶が戻らない状態になったら、どう責任をとればいいのだ?」
 という感覚で、
「これは、絶対に触れてはいけない話題なんだ」
 と思った、
 かすみと、この警官は、面識があった。いつも予備校に行く時、いつも挨拶をしてくれるのがかすみだったのだ。
 だから、今回の事件に少なからずのショックを警官も受けていた。
 そういう意味でも、どうすればいいのか、最初は考えあぐねていたが、結局、
「何が彼女のためになるというのか?」
 ということを考えれば、自ずとその考えはまとまってくるのであった。
 実際に、彼女のことを考えてみると、
「何をどうすればいいのか?」
 ということは分かっている。
 なるべく、辛い記憶を思い出さないようにしてあげるのが一番で、いつもと同じように接することであった。
 とりあえず、それしかなかったのだが、彼女を襲ったが、未遂に終わった男が捕まったのだが、あの男、結局、警官に見つからなくても、
「オンナを襲うだけの根性もない」
 ような、小心者の男であった。
 というのは、近くでも似たような犯行があり、警察だけでなく、市民の大人たちが、気を付けて見回りのようなことをしていたので、この男が捕まったわけで、そんなことも知らずに、ただ、本能に任せて犯行に及んでいたのだ。
 まだ、大学生だということだが、実際には何もできないだけのクズ人間で、逆にいえば、
「暴行はされなかったが、その分、精神疾患に陥ったり、PTSDと判断されたりしたという、可愛そうな女の子が街に溢れた」
 ということだったのだ。
 実際に、ここ1年半くらいで、5件ちかい犯行があり、これ以上起きると、マスゴミの方を抑えることができなくなり、一気に社会問題となり、却って警察が緘口令を敷いていたことまで暴露されかねないということだったのだ。
 それを考えると、警察としても、面目という面でも、
「市民からの信頼をなくす」
 という点で、行動しにくくなるということでも、
「由々しき問題」
 だったのだ。
 その犯人には、被害者がやはり数人いて、ただ、変質者ではあったが、強姦を行えるほどの男ではなかったので、あくまでも、
「変質者」
 としての、裁判となったのだ。
 ただ、こちらは刑法犯ではなかったので、複数の被害者がいたということ、その他、もろもろもあったが、未成年ということもあり、実刑ということにはならなかったようだ。
 ただ、保護観察はついたようで、そのあたりの状態は、警官は聴いていた。
 だが、この時の、かすみの被害としては、まだ何とかよかったのだが、それだけでは済まなかったのは、かすみによって気の毒なところだった。
 といっても、この時も、ひどい目には合わなかった。
 今回も、ちょうど声をかけてきた人がいたので、事なきを得たのだが、実はその声をかけてきた男というのが、グルだったようで、
「かすみに近づきたい」
 ということで、一人の男が、
「怪しい男」
 を演じていたのだ。
 かすみとしては、自分を助けてくれた男を完全に信じていた。
 そして、実際に、好きになりかかっていたのだったが、
「悪いことはできない」
 というもので、
「この男、実は私の元カレだ」
 と親友が言い出したのは、かすみが、自分とのプリクラの写真を見せた時だった。
 親友は、男の正体を知らないようだった。
 二人が別れたのは、相手の男が、浮気をしたからだった。
 というよりも、親友が知らない間に、
「二股をかけていた」
 ということがバレたことで、急転直下、別れにつながったという。
 もちろん、相手のオンナも、その男をことを許せなかったようで、
「二兎を追う者は一兎をも得ず」
 という言葉通りに、結果、
「一人にされてしまった」
 ということであったが、それこそ、
「自業自得」
 あるいは、
「因果応報だ」
 ということなのだ。
 もっと言えば、相手の男は、
「いつも同じ手口を使っていて、しかも、同じ相手を利用している」
 さらには、
「相手を研究することもなく、疑わずに、慎重性もなく、思った通りの行動に出る」
 ということで、ハッキリ言って、
「犯罪には向かない男だ」
 と言えるだろう。
 かといって、決して、
「善良な人間というわけでもなく、むしろ、救いようのない男といってもいいだろう。そして、救いようのないという言葉の下につくのは、バカということであり、こんなやつが中途半端に存在しているから、精神疾患で悩む女性が、中途半端に増えるだけなのだ」
 と、少しひどい言い方ではあるが、
「的を得ている」
 といっても過言ではないだろう。
 そういう意味で、この男は、
「この世では、毒にも薬にもならない」
 という意味で、
「この世に存在すること自体、ムダな人間なのだ」
 といってもいいやつだった。
 さすがに、二度も似たような性犯罪に巻き込まれかけると、本人もどこか病んでくる。
 夜中の暗い路地近くを歩くのが怖かったり、後ろから誰かが追いかけてくるのではないか?
 ということを恐れたりと、気にすることが多くなった。
 そんな時助けてくれた男がいたのだから、
「ホロっ」
 となったとしても、それは無理もないことだったのだ。
 しかし、それも、親友の告白によって、男の事情が分かってくると、今度は、かすみの精神が怪しくなってくる。
 というのも、まずは、男性不信になってくる。
 これは当たり前のことであるが、その理由として、
「信じていたのに?」
 ということの対象が、
「裏切られた」
 ということよりも、なぜか、
「親友と付き合っていた」
 ということの方がショックだったのだ。
 付き合っていたといっても、友達も話だけを聴いていると、
「騙された」
 ということであり、その騙されたという感覚は、
「男に対して」
 というよりも、何か、
「親友に対して」
 と言った方がいいかも知れなかった。
 というのも、確かに、親友が前に付き合っていた男性がいて、そいつから騙されたということで、
「かつては、可愛そうだということで同情したのに、それなのに、まさか、自分が好きになった男性の元カノだったなんて」
 と感じたのだ。
 親友からすれば、
「そんな発想はいい迷惑だ」
 と言いたいだろう。
 確かにその時は、かすみに相談に乗ってもらったりして、助かったと思っているのだが、今回は、完全に、
「謂れのない因縁」
 といってもいいだろう。
 それを考えると、
「かすみという存在は、自分にとって、あまりありがたくない存在だ」
 と感じていた。
 しかし、かすみという女性は、それでも、
「親友だ」
 といって、あくまでも立ててくれる。
 それが、親友にはたまらないことなのであった。
「親友でなければ、別れられるのに」
作品名:邪悪の正体 作家名:森本晃次