禁断のライセンス
それを使う使わないということが、患者に強くのしかかってきたりして、実に大変だということを医者も分かっているので、本当にやり切れない気持ちになるのではないだろうか?
だが、今回の博士の発想は、
「副作用の副作用」
というよりも、この副作用のせいで、
「世の中が変格していかないかどうか?」
ということの方が気になっているといってもよかった。
というのも、この、
「惚れっぽさ」
というのを、
「精力増強剤」
という形での製品化が一番多い生産としてしまったのだ。
一番の理由は、前述の、
「少子高齢化」
という問題が、世の中では、切羽詰まった状態に来ているということ、
そして、この薬が、
「大量生産するには、一番都合がいい」
ということだったことである。
精力剤として利用すると、実際に、
「少子高齢化」
を防ぐに違いないという淡い期待があったのも事実だった。
そして、ほとんどの人が、
「これで問題は減ってくる」
と思ったのだろうが、それこそ、
「過ぎたるア及ばざるがごとし」
ということもあるのだと、実感している人も多いだろう。
それこそ、こちらの方が、一種の、
「副作用」
のようなものだといっても過言ではないだろうか?
要するに、この製品は、
「爆発的に売れた」
ということであった。
そのせいで、中毒化する人が増えていった。
そのおかげで、精力絶倫という人も増えてきたのだ。
そもそも、今の時代は、
「草食系男子」
と呼ばれる人が多く、
「セックスばかりして、何が楽しいのか?」
と思っている人が多いというのか、そもそも、
「女体に興味がない」
ということであり、
「人間の三大欲である、性欲が、著しく低下している状態が、世の中に蔓延っている」
ということだろう。
今までであれば、性欲が強い人のせいで、
「性犯罪」
であったり、
「変質者」
というものが多かったりした。
今も、そこまで減ったとは言えない。
確かに、今の性犯罪や、変質者の犯罪の原因のすべてが、
「性欲」
というものに関係しているというわけではない。
むしろ、性癖というものに問題があるのであって、
「性欲と性癖というものが、本当に関係あるのだろうか?」
ということが考えられるのであった。
性癖というのは、基本的に、こういう問題を考える時には、その上に、
「異常」
という言葉がつく。
「異常性癖」
つまりは、今であれば、ストーカーであったり、盗撮などの、
「本当に正欲を解消するための行為なのだろうか?」
というものであった。
実際に相手をリアルに傷つけるというよりも、性癖によって、
「いかに自己満足に浸れるか?」
ということであり、
「相手がどう感じるか?」
ということよりも、
「自己満足を追求したい」
ということになるのだろう。
自己満足というものは、本当に、自己満足で終わっていれば、それで問題ないのかも知れない。
しかし、それだけで終わらないから問題なのだ。
それが、ストーカーにつながったり、盗撮につながったり、盗聴なども、そうだろう。
どれも、昔からある犯罪ではない。
そもそも、
「ここでいう昔というのが、どこからをいうのか?」
という範囲を難しい。
「一昔と言われる10年よりも前を昔というのであれば、ほとんどのことが、昔だということになるのだろう」
と考えられる。
大団円
世の中において、実に難しいのが、
「調整の取り方だ」
ということではないだろうか?
ことわざにある、
「過ぎたるは、及ばざるがごとし」
というのがあるが、
「まさにその通りだ」
といってもいいだろう。
というのも、今回のこの、
「惚れっぽい薬」
として売り出したものが、
「精力増強剤」
というものだったことで、想像以上の売り上げを示し、一気に、
「品薄、品切れ」
という状態を引き起こした。
最初の宣伝もインパクトがあるものだったこともあって、その効果は絶大だった。
しかも、服用した人の意見がさらに拡散されたことで、却って、
「誰もが使っているんだ」
ということで、嫌らしいというものとは違う製品として、世の中に出回った。
おかげで、利用者は爆発的に増えたのだが、逆に、異常性癖を持っている連中からは敬遠された。
なぜなら、
「健全という形が表に出てくると、異常性癖者には、手が出せないものになるからだ」
というのも、
「健全でなかったからこそ、俺たちにしか与えられないものだ」
ということで、いくらでも使えたのに、それができないということになると、
「そんなものを俺たちが使えば、俺たち自身が、自己嫌悪に陥らせるという、悪魔のような薬になるではないか?」
ということであった。
正常と呼ばれる連中から見れば、
「少々のことでも、この薬を服用することで正当化される」
と思うと、
「これほど楽に楽しめるものもない」
ということになる。
だから、異常性癖者にとっては、自分たちに自己嫌悪を与えるものだと考えると、今度は冷静な目で見ることができ、
「この薬は、諸刃の剣だ」
と思えるようになった。
正常性癖者という人が、正当性を求めるようになると、
「世の中終わりなんじゃないか?」
と、湯本博士は考えるようになった。
湯本博士というのは、今でこそ、
「世界に通用する、日本のリーサルウエポン」
などと言われているほどの、権威ということになったが、若い頃は、異端的なところが多かった。
他の学者を批判することもあったが、その唱える学説は、いつも奇抜で、
「本当に、異端的なことばかりをいつも探求している」
という、ある意味
「変わり者」
と言われていたのである。
そのことを知っているのは、小林助手くらいだろう。小林に限らず、自分のことを誰にも言わなかった博士は、これを黒歴史だと思っていた。
しかし、何でもズバリと指摘する小林は、湯本博士であっても、変わりなかった。
「博士は、若い頃、結構なやんちゃをしたのではないですか?」
というと、博士は意外だという顔をして、
「よく分ったな」
と敬服していたのだった。
そんな博士が、この
「惚れっぽい薬」
を開発することを考え、少しでも、
「少子高齢化」
の進展を何とかしようと考え、それを継承する形で、小林助手が、推進を考えたのだった。
しかし、実際に、今少しずつ、博士が考えていた以上に、どんどん増えていく。これは、某国の属国を推進することになるのだが、それを、博士は懸念していた。
このカラクリについて、国家間ではほとんど、
「最重要機密となっているので、政府高官は分かっていても、それ以下の国会議員や国民などに分かるわけはない」
という情勢だった。
しかも、今の日本のソーリは、それを分かっていて、
「敢えて」
行おうとしているのだ。
そう、何もかも分かっていてのことである。
そのことを、何よりも博士は懸念していた。
「どうして、国家機密を博士が知りえることができたのか?」
ということは、これこそ、
「博士お機密」
となるのだった。