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禁断のライセンス

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 小林はそれを知らないものだから、どんどん、開発し、国民に進めていく。
 博士は、小林とはいえ、本当のことが言えるわけもなく、遠回しに話をしながら、
「これは、現代のアヘン戦争なんだ」
 というところまでしか話せなかった。
 博士は、何とか説得しようと試みていたが、実際に、薬はどんどん売れていく。
 これを見て、博士としては分からなかったことだが、
「まさか、小林に話したことが、的を得ていたなんて」
 と感じたのだ。
 つまり、それが、
「アヘン戦争」
 という言葉だった。
 あの薬には、常習性があり、まるで麻薬であるアヘンのように、使い続ける。そう、媚薬であっても、そうだし、芸術家が、
「眠らずに自分を活性化させることで、音楽を作曲したり、作家が作品を書き上げたりするのと似ている」
 ということだ。
 それこそ、覚せい剤であったりの麻薬の効果が、蔓延っているということだ。
 そもそも、ここまで効く精力剤なのだから、これくらいのことは当たり前だ。こんな副作用のある薬をライセンス契約として売りつけてくるのだから、実に厄介なことだ。
 国民は、ライセンス関係の省庁ができたことは知っていたが、その内容に関しては、完全にオフレコだった。
「どこの国からどんなものがライセンスで契約されているか?」
 ということは、直接、某国との契約の時だけ分かるのだ。
 もう一つ、省庁を新しくしたのは、その属国とのことを、国民に知らせないようにするため」
 という一番といってもいい理由ができたのだった。
 そして、その流れが、想像はできていたが、悪い方へと向かっていた。
 なぜなら、皆さんはお察しかも知れないが、某国というのは、一目瞭然で分かることだろうが、
「では、その属国というのは、どこなのか?」
 ということである。
「これこそ、最重要国家機密であり、このことがバレると、下手をすると、世界大戦となり、世界の滅亡を意味する」
 と言えるだろう。
 実は、この属国というのは、元々のソ連の加盟国だったのだ。
 ソ連が崩壊し、その隙をついて、某国が平和のうちに、密約で、属国としたのだった。
 つまり、これは、
「某国と、属国だけの間のことであり、属国は、某国の、諜報国家だ」
 といってもいい。
 形の上では、ただ、国交があるという意味だったが、内容は、
「ロシアを監視する、某国の属国ということで、スパイのような国だった」
 ということである。
 どうやら、ロシアも、ここ10年くらいで、そのからくりが分かってきたのか。
「某国がそういうことをするのであれば、こちらも大っぴらに、あの国を攻めることができるではないか」
 ということで、約8年前に、彼らが支配するヨーロッパに抜ける半島を武力で奪い取り、支配を続けていた。
 何も知らない世界は、
「ロシアの暴挙」
 としたが、今度は、属国が、
「ヨーロッパ連合に入りたい」
 などと言い出したことで、一触即発となった。
 某国からすれば、それも計算済み、そして、さらに戦争になれば、
「ロシアを孤立させることができる」
 ともくろんだのだった。
 まんまと、ロシアは、その作戦に引っかかり、戦争を仕掛けた。それにより、
「ロシアは最悪の侵略国だ」
 ということになり、属国は攻められながらも、実は日ごろ開発している兵器を、ちょうど、試していたのだ。
 そんなことを知らない国は、その武器を、某国製だということを聞かされて、どんどん武器を買うのだ。
 だから、昨年から始まったロシアの侵攻問題というのは、実際に言われていることとは違い、
「某国を中心とした、陰謀が渦巻く戦争」
 だったのだ。
 一番可哀そうなのは、属国の国民で、政府同士の勝手な密約と、
「自分たちだけが儲かるため」
 というシナリオの犠牲になっているのだ。
 そのため、物流は混乱し、物資の流れが滞り、まったく入ってこないものもあったりして、世界的な物価高となった。
 そうなると、
「強い国だけが生き残る」
 という、そう、まるで、世界恐慌の時のようではないか。
 そういえば、今の世の中というのは、
「第二次世界大戦前夜と似ている」
 のではないだろうか?
 その前哨戦が今行われているロシアの侵攻に始まった戦争ではないか?
 そして、ナチスの再来と言われるのが、属国政府、ロシアの大統領が、あの国のダイトウリョウを名指しして、
「ヒトラー(ナチス)」の再来だ」
 と言ったというが、まさにその通りではないだろうか?
 しかも、日本の政府もそれを分かっているのか、その独裁者がモニターに出てきた時、国会議員の全員が起立して、スタンディングオベーションをしていたではないか。
 あれを見て、
「うわっ、これこそ、ナチスの再来ではないか?」
 と思った人はどれくらいいるというのだろう?
 しかも、今日本では、かつてのパンデミックが続いていて、今にも自殺者予備軍がたくさんいるということで、そんな人たち、いや、経済を復興させなければいけないという状態において、
「自分が、世界外交において、目立ちたい」
 という何とも口にするにもおぞましい発想で、ことを進めて行こうとするソーリがいるではないか?
 しかも、国民は、そんなソーリのやる暴挙。つまりは、無償で、戦争をしている当事国に、ポンと大金(国民の血税)を簡単にやるというのである。
 この偽善行為を、
「当たり前のこと」
 などという、さすが、平和ボケの国と言われるだけの日本にいる、
「お花畑思想」
 で凝り固まっている人たちが、今頃になって、政府批判をしても、
「やってしまったことが戻ってくるわけはない」
 というのだ。
 それこそ、
「禁断のライセンス」
 といってもいいだろう。
 一体、世界はこの情勢に気付かず、政府高官の利益のみが追及され、結局、
「この世界は、このまま滅んでいくしかないんだ」
 ということになるのは、必定だ。
「気が付けば死んでいた」
 ということになるのか、
「気づくことなどできない」
 ということになるのか、結果は同じだが、どうなるというのであろう?

                 (  完  )
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作品名:禁断のライセンス 作家名:森本晃次