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 そんなことを考えていると、
「湯本博士のそばにいつもいる連中が、何を考え、湯本博士から、何を学び取っているのか?」
 ということが重要なのではないだろうか?
 湯本博士の助手として、最古参なのが、
「小林助手」
 だったのだ。
 二人は、一心同体と言ってもいいくらいで、実は、
「小林助手が博士を慕っている」
 ということよりも、
「博士の方が、小林助手に一目置いている」
 という方が、何倍も強いのではないか?
 ということを言われているのだった。
 小林助手というのは、
「そもそも、捨て子として、施設で育ったのだが、ある日、湯本博士が、慰問を兼ねて施設を訪れた時、目に留まったのが、小林だった」
 ということだ。
 しかし、実際には、一緒に来た奥さんの方が、一目で小林のことを気に入ったようで、「夫婦ともに、気に入っているということは、運命以外の何物でもない」
 ということで、博士は、すぐに養子縁組をしたということであった。
 博士も奥さんも、まるで実の子供のように育てた。
 だから、湯本博士にとっては、息子同然だった。
 しかし、研究所では、そのようなことを顔に出すわけにもいかない。我慢して抑えてきたところがあった。
 だが逆に小林としては、家にいることは、何かこっぱずかしいところがあるということで、まるで反抗期のような態度を取り、一人閉じこもっていたが、これは、
「博士に甘えてはいけない」
 という思いからであった。
 しかし。研究員としては、
「博士の気持ちに寄りそう感じでいけばいいんだ」
 ということであった。
 だから、研究所では、家での立場とは反対になる。
「俺は博士の一番のファンだ」
 と、小林助手は口外する。
 博士も、
「まんざらでもない」
 という気持ちでいるのだが、嫌な気分があるわけではない。
 ということを考えていると、
「博士もある程度の年齢になっているのだから、俺たち助手がしっかりしないといけないんだ」
 ということは分かっているつもりだった。
 だが、そうは言っても、博士の、科学者としての知識の継承、さらには、
「愛国者」
 ということに対しても、
「思想的発想」
 などは、そう簡単に受け継がれるものではないといえよう。
 そのことは博士も分かっているようで、その気持ちが、どう繋がっていくのかということは、大いに難しい発想ではないかと思えるのだった。
 博士は、
「年を重ねるごとに、頑固になっているというわけでもなく、どちらかというと、温和になってきている」
 と言ってもいい。
 ただ、それまで、何かに頑なだったわけではないので、
「普通の人が、さらに温和になってくるのだから、そんなに、大変なことではないのだろう」
 ということであった。
 小林助手が、いかに博士をリスペクトしているかということは、実際の研究の時は、余計なことは一切喋らない。
 それが、博士と同じ雰囲気を醸しだすことになっているからであったのだ。
 そんな小林助手であったが、博士に気を遣ってなのか、博士に何も言わず、密かに研究していることがあった。その研究というのが、
「惚れっぽい」
 という薬であった。
 湯本博士という人は、話をすれば、物分かりのいい人で、そんなに融通の利かない人には見えないのだが、そのかわりどこか、安心できないところがあった。
 要するに、自分の中で、頑ななところがあるといっても過言ではなかったのだ。
 というのは、
「勧善懲悪」
 なところがあるというところであった。
 まるで、
「水戸黄門」
 や、
「遠山の金さん」
 のようなところである。
 しかし、それはあまりにも偏ったなところであり、日本人が好む、
「ちょっと曖昧な、勧善懲悪」
 というわけではなかった。
 つまりは、
「遊びの部分がない」
 と言ってもいいところではないだろうか?
 遊びの部分がない」
 ということは、
「実際に見えている」
 というところも、本当に見えているところなのかどうかも分からない。
 要するに、
「石ころのような存在なのかも知れない」
 というところであった。
 そのことを証明することは難しいのだが、
「勧善懲悪」
 という言葉は、誰に証明されるというわけではないのだった。
「石ころ」
 というものについて、博士は時々、話をしていたことがあった。
「石ころというものは、そんじょそこらに点在しているという意味で、見られていても、実際にその人の意識として、頭の中に入ってくるというのはありなのだろうか?」
 という、一種の、
「不思議なものの象徴」
 という意味での発想であった。
 そういう意味で、
「石ころのような存在になりたい」
 と、博士は常々言っていた。
 ある有名マンガ家の作品の中で、いろいろな未来の道具が出てくるものがあったが、その中に、
「石ころのような存在」
 になれるアイテムがあったような気がしていた。
「わしは、それを見た時、何か、不思議なものが下りてきたような気がして、その感覚を味わってから、今の自分が分かってきた気がしてきて、おかげで、研究が、爆発的に進むようになったんだ。石ころという発想には、感謝しかないんですよ」
 というのだった。
 そんなことを考えているということを聴いた、小林助手は、
「俺も探してみるか?」
 ということで、鼻背が言っていたマンガを片っ端から読んでみると、
「おお、これか?」
 というものがアイテムとして存在していた。
 内容としては、
「子供が読むマンガ」
 ということで、子供の世界で、
「子供が満足できればいい」
 というような内容のものであった。
 だから、その内容を見て、
「じゃあ、俺が、博士に、石ころというまじないを掛けて、この俺を、石ころとしてしか見えない状態にしておいて、この俺が、博士の中で見えない存在にすることで、新しい薬品を開発できるようになりたいものだ」
 と感じていたのだ。
 だが、この発想は、すでに博士が感じていて、
 博士の中では、
「こういう発想を、小林君に抱いてほしいんだよ。私がどうしても、彼を息子のように思っているから、彼は、我々から一歩も先に進めないのだとすると、問題は私にあるのだろうな」
 ということを感じているようだった。
 つまり、この考えは、あくまでも、博士に問題があるわけではなかった。
 博士に問題があるわけではなく、逆に新しいものを見つけた子供が、新たなおもちゃを貰えたことで、ワクワクするという状態をつくってくれたのが、博士だったのである。
 ただ、今同じ状況に入り込んだのが、小林であり、彼は、そういう意味では、
「やっと博士に近づけた」
 ということであった。
「博士の研究に対しては、大いなるリスペクトを抱いていたのだが、それ以上に、俺だっていつでも、博士に追いつけ、追い越せという気持ちにだってなれるんだぞ」
 という気持ちになっているということであった。
「博士に近づくには、やはり、追いつけ追い越せという思いがなければ、務まるものではない」
 ということであろう。
 だが、あまりその思いが強すぎると、今度は、空回りしてしまい
「追いついたつもり」
作品名:禁断のライセンス 作家名:森本晃次