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神のみぞ知る

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「今までみたいに、朝廷から給与を貰ったり、荘園から取り立てたりしていた時代が、恥ずかしい」
 と思えるほどだった。
 彼ら、下級の武士は、その存在は中途半端なものだった。
 領主である武士でさえ、
「俺たちは、公家や貴族から、完全に下に見られ、警護などという厄介な仕事を押し付けられていた」
 という立場であり、さらに、武士としては、最下層に近い自分たちなどは、ただの兵卒にすぎないということでしかなかったのだ。
「死のうが生きようが、世間ではまったく関係のない存在」
 なのであった。
 だからこそ、まわりから何かを言われることはないが、存在的には、
「ただの石ころ」
 だったのだ。
 そこに存在してはいて、見えてはいるのに、その存在ということになれば、まったく意識があるわけではない。
 それを思うと、
「俺たちのような、捨て駒は、結局、細々と生きていて、その存在すら認識されていないのだから、ただいかに、死なないように生きていくかということだけを考えればいいのだった」
 そんなことは分かっている。
 それでも、やつらは、本隊とはぐれ、平家の血は受け継いでいるといっても、
「遠い親戚」
 という感じであろう。
 彼らは、屋島に取り残され、壇ノ浦にいくことはできなかったが、そのおかげで、助かったといってもいいだろう。
 源氏の連中は、取り戻すことを必須と言われた、
「三種の神器」
 のうちの
「村雲の剣」
 が海中に沈んでいるので、それを引っ張り出すことに必死で、落ち武者捜索など、ほとんど、
「あってないようなものだ」
 と言えたのだ。
 彼らは、その隙に屋島を抜け出し、この山中に潜んでいる間に。何とか、村で息を吹き返した。
 すでに彼らは、村人の仲間入りということだったのだが、そのうちの一人が、
「村からの脱走を企てた」
 ということであった。
 村に潜んで息を吹き返すところまではよかったのだが、その時、一緒に武士としての魂までもがよみがえってきたのだった。
 その人は密かに村から金を奪取して、武士団を形成するつもりだったという。
 お金も使わないのでなくなることもなかったが、農業と牧畜で得た収入が少しずつ貯蓄に繋がっていき、そのお金が溜まってくると、そのまま誰も手を付けていなかったので、一人で何かをするには、結構な貯蓄となっていた。
 彼らは、
「俺たちの子孫がこの村で生きていく時のためのお金」
 ということで、手を付けることなく、子孫のために、貯蔵していた。
 ここから抜けようとしている人も、
「幹部の一人」
 なので、もちろん、その場所も分かっていた。
 そして、時期がくるのを待って、そのお金を強奪して、武士団の形成をもくろんでいたのであったが、その計画が、他の三人に分かったのであった。
 結局、企みは、未然に行われることはなかったのだが、企てた男は、
「武士の情け」
 ということで、切腹ということになったのだという。
 その男の亡骸を供養するということで、立てられたのが、
「神仏祠」
 だったのだ、
 この場所には、以前から、小さな祠のようなものがあるにはあったが、そもそも何のために作られたのか分からないということもあって、3人は、そこを大きな祠に作り替えて、かつての仲間を葬ることにし、供養を、行うということを決めたのだ。
 実際に、彼の命日には、盛大な祭りが行われるようになったのだが、それは、この村での唯一の祭りであり、4つの村が合同で行うものだった。
 それも、この時だけのことである。
 この村において、
「入出に関しては、結構厳しいのだが、一度村に入っていた人を追い出したり、差別をしてはいけない」
 ということを言われてきた。
 それをしてしまうと、昔からの言い伝えで、
「祟りがある」
 と言われていたのだ。
 だから、
「一旦この村に侵入さえできれば、ここほど安全な場所はない」
 ということになるのだ。
 村人にとっては、
「厄介な者を抱え込んだ」
 ということになるのだろうが、村人としても、昔からの、
「島国根性」
 のようなものがあり、外部との確執は、
「かなりのものだ」
 と言えるのではないだろうか。
 それを思うと、
「真田がこの村を選んだのは、このあたりに理由がある」
 ということである。
 しかし、なぜ真田がこの村のことをここまで詳細に知っていたのかということは謎である。
「ひょっとして、この村の出身では?」
 とは、皆思っただろうが、
 もしそれなら、二つに一つ。
「訳を言えば、普通にかくまってもらえるか?」
 あるいは、
「見つかったら、殺されかねないので、最初から、この村を隠れ家にしないか?」
 ということであろう。
 しかし、そのどちらでもないということから考えると、
「真田とこの村とでは、直接的な関係はないのではないだろうか?」
 ということだったのだ。
 真田に付き従ってきたまわりの連中は、
「しょうがない。このまま、真田についていくしかないか」
 ということしかなかった。
 真田を信じるかどうかは、それぞれで考えは違うだろうが、真田の言う通りに強盗をやってしまったのだから、ここで引き下がるというわけにはいかない。
 それが、他の三人の考え方だった。
 真田にとって、
「この村で、生き残っていくには、どうすればいいか?」
 というノウハウがどこまであるのか分からない。
 真田は、どこかから、いつも食料を持ってくる。
 実際には、ここで、田を耕したりして、
「自給自足」
 を行っているが、食料も最初の頃は、穀物もないので、調達してくるしかなかった。
 それでも、しばらくすると、すぐに食べれるものも徐々にできてきて、次第に、落ち着いた気分になれるものだった。
「どうやら、村の誰かに恵んでもらっていた」
 ということのようで、
「いずれは、お礼をしなければ」
 と真田は言っていたという。
 この村でも、逃亡生活は、
「逃亡している」
 という立場にしては、結構いい暮らしができていた。
「俺たちがここで暮らすようになってから、村人は寄り付きもしないけど、皆どんな気持ちで俺たちを見て言うんだろうか?」
 と、北条が言い出した。
 北条は、主犯が真田であれば、
「共犯者」
 としての立場として一番強いのが、彼ではないだろうか?
 犯行の下見や下準備も滞りなく行い、一人ではできないところは、頼光に手伝ってもらうという形をとっていた。
 沖田は、勧善懲悪という意識が強いので、
「強盗などせずに、何とか自分たちの立場を回復させるということを中心に、いろいろ考えていたようだ」
 しかし、実際には、
「誰かの手助けがなければ、どれも成功しない」
 ということで、考えられることすべてを検証してみたが、どうにもしっかりと考えられることはなかったのだ。
 それを考えると、
「真田さんの考えに従うしかないのか」
 という結論に達し、それ以上は、何も考えられなくなった。
 それを真田に話すと、
作品名:神のみぞ知る 作家名:森本晃次