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神のみぞ知る

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「この村ほど、安心できる村というのは、どこにもない」
 ということだったのだ。
 他の三人は、それら昔の言い伝えなど一切知らない。潜伏地については、真田の計画の一環だったので、潜伏地を探してくるのも、真田の考え一つだったのだ。
 真田がどこでこの土地を知ったのかということは正直分からない。だが、偶然ではなかったということであろう。
 ここは、神崎村というところで、それぞれ、F県、S県、K県とにまたがっているのだが、村の名前は一つだった。
 しかし、実際には、それぞれ3つの違った村が存在するのは確かで、それぞれの県で管理されていた。
 だが、村人にはそんな意識はなく、ただ、県として用事がある時は、それぞれの管轄の県庁に赴くということであった。
 そして、実際に村を統括しているのは、それぞれの県の隣接している市であり、実際に何度か、
「市町村合併」
 という話もあったのだが、実際に、合併する市の側からも、その話があったわけではない。
 というのも。村を合併しても、人口があまりにも少ないことで、市側おメリットは何もないし、村人からの反発も、想像以上にあったようだ。
「昔から続いてきた、神崎村を一部でもこの世から消そうものなら、ご先祖様の祟りがある」
 ということであった。
 村人がどこまでそれを信じているのか分からないが、一度、峠のあたりで事故が遭った時、その被害者の死体が、ちょうど、神仏祠の目の前まで流れ着き、その被害者が、
「実は、数年前に起こり、全国的に有名になった事件の犯人だ」
 ということが分かったからで、その時は、
「それまで犯人は分かっていて、全国に指名手配していたにも関わらず、約3年ちょっとという間、まったく見つかる気配もなく、迷宮入りになっていた」
 のだった。
 結局、被疑者死亡という形で、事件は落着したのだが、それまで、この男がどこにいたのかということは、捜査が行われたが、結局分からなかった。
「村に潜伏していたのだろう」
 と言われていたが、村人は、警察に対して完全に、非協力的であり、何を聴いても、まともに答えるという感じではなかったのだ。
 それを分かっているのか、警察も必要以上には聴かない。
 といっても、すでに被疑者は死亡しているわけなので、切羽詰まっているわけではないので、これ以上、聴くことはなかったのだ。
 ただ、
「この村には、昔からどこにでもあると言われる祟りのようなものが存在している」
 と言われるようになり、
「あまり村に立ち入ったり、村人を刺激するようなことはしてはいけない」
 ということになったのだ。
 この村にある、
「神仏祠」
 には、あまり知られていないが、
「役病退散」
 というご利益を持った神様が祀られているということだった。
 それを知っている人は実にごく一部であり、村人とて、皆が皆知っているわけではなく、それだけに、今回の、
「世界的なパンデミック」
 でお参りに来る人も、まばらであった。
 しかも、このことは、
「口外してしまうと、ご利益というものには恵まれない」
 と信じられていただけに、知っている人だけが、こっそりとお参りにくるくらいだった。
 だから、何も知らない人からすれば、
「今回のパンデミックの間に、この村に来る人が増えた」
 などということをいう人は誰もいなかった。
 実際にそんなこともなかっただろうから、普段と変わらない村だったのだ。
 ただ、
「神仏祠」
 のご利益だけは本物で、
「何かをやった人間に対しては、祟りがある」
 と言われて恐れられていたのだ。
 だが、今回の強盗事件は、
「このパンデミックにて、政府も自治体も、自分たちを見殺しにしたようなものだから、仕方なく、生きるためにやったことであり、実際に、人を殺したりもしていないので、そんな祟りなどはない」
 と、真田は信じていたので、共犯者である他の三人には、神崎村に伝わっている話をすることはなかったのだ。
 神崎村というところは、普段は完全に、他の土地から、隔絶されていると言ってもいいかも知れない。
 同一の県の神崎村に隣接している県から、隣の県に入る時、神崎村を大きく迂回するようなルートで向かうのだ。
 基本的に、神崎村に何かの用があったり、神崎村の人が他の土地に赴いて帰る時以外は、まずこの村に入ることはない。
 道にしても、車が通るようなところは、村にはほとんどなく、あったとしても、村の中心部で断絶しているのであった。
 だから、バスにしても、それぞれの村の入り口に一か所バス停があるだけで、村の中に入り込むということはないのだ。
 道がそのように作られているのか、それとも、道に対して村の境界線ができたのかという昔のことは定かではないが、ハッキリと、決まっているというわけではなかったのだった。
 この村において、犯人たち4人が潜伏できるところはあった。
 村の奥に、少し大きな森があり、そこには、空き家になったところがあった。
 そこは、村の人は知ってはいたが、決して近づこうともしないところだった。
 子供たちには、
「その場所へは立ち入ってはいけない。祟りがある」
 と言っていたのだが、その場所が、かつて死体で見つかった犯罪者が使っていたところだったということで、
「祟りがある」
 という言葉にも、まんざらでもないといえるのだった。
 実際、
「祟り」
 だったといえるのかどうか、誰にも分からない。ただ、祟りを恐れる人がおおいのも事実であった。
 神崎村の歴史については、いろいろ言われている。
 一番よく言われているのが、
「かつての平安末期において、平家が壇ノ浦で滅亡したと言われているが、その落人が存在し、全国に散った」
 と言われることで、各地に、
「平家ゆかりの土地がある」
 とされてきた。
 このあたりには、そういうウワサはなかったので、
「実は、神崎村がそうではないか?」
 と言われるようになった。
 ただ、実際には、神崎村内部にもそういう話が伝わっていて、村を四分割しているのも、その時の四人の中心人物がそれぞれに、ここでの勢力を持っていたからだと言われている。
 その4人は、この村を最初から、4分割するというつもりはなかったようだ。
 どちらかというと、
「4人一緒になって、一つの村を経営していく」
 ということであったが、彼らがこの村で落ち着けるようになったのは、
「軍資金」
 を持っていたからだ。
 そんなものがなければ、村人が命を懸けてでも、自分たちを守ってくれるはずもなく、落ち武者狩りに突き出されて終わりだっただろう。
 少々の貯えであっても、貧しい村にとっては、
「目がくらむ」
 というだけの金であったことは間違いなく。
「俺たちの居場所はここしかない」
 と、落ち武者に悟らせるだけの効力は十分だった。
 何度かやってきた落ち武者狩りの連中も次第に来なくなり、落ち武者たちは、ここに、
「安穏の地」
 を見つけたことになる。
 世間はいまだ戦が続いている。
「あんな俗世には戻りたくない」
 と、落ち武者連中は、毎日、畑を耕し、ニワトリや牛を飼って、自給自足の生活をしていた。
作品名:神のみぞ知る 作家名:森本晃次