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神のみぞ知る

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「あんたが、金に困ってるのは、こっちでも調査済みさ。ここで、これから俺たちの仲間になってもらうぜ」
 ということであったのだ。
 男は、北条を奥の部屋に連れていった。元々、一緒にここまで来た男は一緒ではなく、どうやら、男の指示で、別のところに行ったようだった。
 男に連れられて、恐る恐る歩いていくと、そこにいるのは、一人の男性だった。
「ああ、北条さんだね」
 と言われて、相手は、ニッコリと微笑んでいる。
「え、ええ」
 と答えたが、
「私は、今回の救世主計画を立てた、真田というものだけどね」
 と言い出した。
 後で聞くと、ここまで連れてきた男が、頼光だという。
 頼光は身体が大きく、ちょうど、大江山に出てくる、
「源頼光」
 とモデルとする形で、
「鬼伝説」
 としての、
「酒呑童子」
 とあだ名されているという。
 そんな頼光に連れてこられた場所は、真田のところで、そこで、初めて真田から、今回の襲撃事件について話をされたのだった。
 借金の額の割には、強盗などというのは、わりに合わないほどの大きなリスクを背負ってしまう。
 しかし、それでも、
「今の世の中、どこで何が起こるか分からない」
 ということで、強盗でもして、お金をいくらでも持っていないと、難しいという。
「今回のパンデミックで分かったと思うが、まず、政府は、まったく役に立たない。これだけの有事なのに、何か対策でも取るのかと思えば、取ったとしても、後手後手であり、国民からは冷めた目で見られ、結局は、どうにもならない状態になっている」
 というのだ。
 さらに、
「政府だけではない、国民だってそうだ。有事を今まで経験したことがなかったからというのもあるだろうが、誹謗中傷のあらしだったじゃないか? 特に命を直接守ってくれている医療従事者が家族にいるというだけで、その人たちは、学校や職場で、出てくるななどと言われ、ひどい目に遭ったというのではないか。本来なら、例を言われても、しかるべきなのに、例どころか、伝染病が移るって言われるんだから、こんなに理不尽なことはないよな。結局、金しか勝たんのだよ。君にだって分かるだろう?」
 という。
「だからと言って、強盗なんて」
 というと、
「心配いらない。相手は、ひそかに金を溜めているやつで、個人的にあこぎな商売をしているやつなのさ。世間的には、あくまでもひそかになので、警備もほどんどないし、そんな守銭奴には、金を出して屈強な連中を雇うという考えなどないのさ。だから狙うなら今なのさ」
 というのだ。
「なるほど、そういうことなら」
 と、話を聴いているうちに、北条も、気分的には乗り気になっていった。
 そもそも、ここは、
「恐怖の館」
 のようだが、さっきいた人間も、あの瞬間だけを演じてもらうために、雇った、
「役者のたまご」
 による、アルバイトだったのだ。
 ただ、これで、主部者の
「真田」
 第一の共犯者、
「頼光」
 そして、今ここに、もう一人。
「北条」
 が加わったのだ。
 そして、前述に記したように、
「勧善懲悪」
 という観点から、最後に、
「沖田」
 が加わったのだった。
 さて、そんな彼らの計画は、ある程度は、無難に進んだ。これと言った問題もなく、お金も手に入れたし、アクシデントもなかったので、被害者を殺すということもなかった。
「顔を見られる」
 ということもなかった。完全に仮面をかぶっていて、被害者連中に、察知されることはなかった。
 なぜなら、被害者との接点がないからだ。もし、見られたとしても、モンタージュを作られるだけで、それほど信憑性のあるものではないだろう。
 それを思うと、誰も傷つけず、むしろ、沖田ならいうべきのいわゆる、
「勧善懲悪の観点」
 から、
「この行動や決起は間違っていなかった」
 と言えるだろう。
 逃走ルートも完璧で、この神崎村を選択したことも、想像以上に、正しかった。
 ここ数か月の潜伏で、村人と会うこともなく、当然、村人から通報されることもなかったのだ。
 何といっても、この過疎地の村、いるとすれば、
「オンナ、子供、老人」
 ばかりだったのだ。
 しかも、4人が潜伏していたところは、村人にとっての、
「聖地」
 といえばいいのか、
「立ち入ってはいけない場所」
 ということで、村人もこない場所に潜伏していたので、見つかることもない。
 実際に、数か月見つかることはなかったし、車もあるので、買い出しにも困らなかった。潜伏場所としては、最高にいいところだったのだろう。
 そんなことを考えていると、
「ここまでうまくいって、本当にいいのだろうか?」
 と思えるほどで、ことわざにある、
「好事魔多し」
 というのも、マジで気になる言葉になっていたのだった。
 そんなことを考えていると、
「真田がこの後何を考えているのか?」
 ということが、他の連中には分からないということが気になるところであった。
 計画としては、
「この村に数か月潜伏する」
 というところまでは決まっていた。
 しかし、それ以降どうするかというのは、知らされていなかった。真田が何も言わなかったからだ。それよりも、ここまで無傷で、仲間割れもなくうまくやってこれたのは、実によかったということであろう。
 だが、それは、
「ただうまくいったというだけで、本当の試練はこれからなのかも知れない」
 しかし、そのことを誰が知っているというのだろう?
 当の主犯である真田にも、
「ここから先の計画」
 というのは、頭の中に、できていなかったのだ。
 その計画の一つに、
「六道越え」
 というものがあるのだった。

                 それぞれの関係性

 この神崎村というところでは、村の入り口にあたるというところに、
「神仏祠」
 が存在し、そこが、
「この村を守っている」
 と言われているが。実際にはそれだけではなかった。
 というのも、この神崎村というところ、これまで戦国時代などを通しても、
「侵略を受けた」
 ということがないのだという。
 確かに、
「どこから見ても田舎の村」
 ということなので、
「何ら戦略的に獲得する意味があるのか?」
 と言われているのだが、実際には、
「国の入り口になっていて、ここをとるのは意味がある」
 という地理的な意味での攻略は必要だったはずだ。
 しかし、ここは、いくつかの入り口にあたるようなところがある。それはもちろん、
「神仏祠」
 のある峠を含んでのことであるが、
 それ以外にも、3つの場所が、ちょうど均等な距離に置かれていて、そこも峠となっていることから、
「攻めてくるなら、そこから」
 ということになるのだ。
 その場所から攻撃を受けたとして、
「どれだけ守れるか?」
 ということなのだろうが、実際には、当時は、峠に大きな櫓が存在したという。
 攻められれば、そこから反撃するということだったようだが、その戦力にも限界がある。
 しかも、攻め方はいろいろあり、
「水攻め」
「兵糧攻め」
 などあるが、山奥なので、
「水攻め」
 はありえない。
作品名:神のみぞ知る 作家名:森本晃次