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自分と向き合う

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 相手を振るという後ろめたさを感じずに済むという意味で、相手に、
「騙されているのかも知れない」
 と思い込ませるのも、無理もないことだったのかも知れない。
 そんなことを考えていると、
「彼女は、まんま(?)と、有岡の策に嵌ってしまったのかも知れない」
 別れることは、確率的にかなり高いということはわかっていたが、
「どこまであと腐れなく別れられるか?」
 ということであった。
 となると、
「彼女が失恋したということを疑いもなく感じるとすれば、騙されたという感覚を使わない手はない」
 ということである。
 失恋したと考えるよりも、
「騙された」
 ということを相手に思わせるなど、罪悪感や、後ろめたさがあるというのが普通なのだろうが、彼女に関しては。
「その方がショックは小さくて済む」
 ということだろう。
 それだけ、彼女の中で、
「人にはない別のトラウマ」
 というものが存在していることに気付いたのだった。
 だが、それがよかったのか、どうなのか?
 彼女は、別れることになったのだが、なぜか、有岡のことを嫌いになったということはなかったようだ。
「徹底的に嫌われるのも、しょうがかい。それくらいは覚悟の上なんだ」
 と有岡は思っていた。
 彼女に対して、
「彼女としての感覚はない」
 という思いから、敢えて、嫌われる道を選んだのだが、
「別れが遅くなればなるほど、別れられなくなる」
 という意味で、
「一定の覚悟は致し方ない」
 と思っていたのに、それが、別れを迎えるまでだと思っていたので、
「まさかとは思うが、復縁はないにしても、友達としてであれば、うまくいくのではないか?」
 と感じていた。
 しかし、彼女との関係は、
「友達としてではなく、もちろん、恋人としてではない」
 という微妙な関係になった。
 というのは、
「兄貴を慕う妹との関係」
 というものであった。
 もちろん、別れてからすぐのことではなかった。
「友達として付き合っていければいいかな?」
 と、有岡は、男としての気持ちから、そういったが、彼女の方が、相当な違和感があるおうで、
「それは、ちょっと」
 というのであった。
 有岡としては、
「あそこまで俺のことを好きになってくれていたのだから、友達にランクが下がるくらいは、容認できるのではないか?」
 と思っていたが、
「好きになったのだからこそ、どうしようもない」
 ということではないかということであった。
 ただ、その後の展開で、彼女のことがなかなか忘れられないということから、自分から別れを切り出したくせに、そばにいないとなると、実に勝手なもので、寂しさがこみあげてきたのだった。
 そして、勝手に、
「彼女だって同じ思いのはずだ。ひょっとしたら、復縁を申し込んでくるかもしれない」
 と感じたが、その思いがどこまで自分勝手なことなのかということを、分かってはいなかったのだ。
 だから、
「俺から行こうとは思わない」
 ということであった。
 勝手であり、自惚れが強いことから、彼女が、
「可愛そうだ」
 と思う前に、それまで、女性を振ったことがなかったのに、今回は振ることができたことで、
「俺の中に、変なプライドがあって、それが、罪悪感とを天秤にかけた時、どう感じることになるのだろう?」
 という思いからだった。
 というのは、
「彼女は、俺のことを最初から最後まで好きでいてくれた」
 と勝手に思い込んだからだった。
 人を振っておいて、
「よくそんなことが言えるな」
 と言われるかも知れないが、まさにその通りだったのだ。
 フラれることがどのような感覚なのかは、分かっているつもりだが、いまだに分からない。
 何度も煮え湯を飲まされたという感覚で、別れてしまった相手を恨むよりも、
「俺の方から振ったんだ」
 ということがどういうことなのかというのを味わってみたいという願望もあった。
 それはあくまでも、
「いつもフラれているということで、振るというのはどういうことなのかということを一度は味わっておかないと、片手落ちだ」
 と思ったのだ。
 まだ、人生これからだというのも、
「死ぬ前に」
 などという言葉を言ってしまうというのは、それだけ、
「今後において、その機会がない」
 と感じているということよりも、
「恋愛など、若いうちにしか感じることができない」
 ということなのかということを考えてしまう。
 この二つは、どちらも、
「もっともだ」
 と言えば、まさにその通りで、この考えの双璧なのではないかと感じた。
 その双璧と思えるような考えであるが、
「どちらともいえない」
 という思いも確かにあったが、あくまでも、
「自分の立場」
 としてと考えると、
「後者の方かも知れないな」
 と思えた。
 ただ、次の瞬間にその考えを打ち消している自分がいる。
「恋愛が、絶えず若いうちにしかできない」
 というのは、ある意味、
「恋愛に対しての冒涜ではないか?」
 と考えたのだ。
「恋愛というものを、どう考えればいいのか?」
 という思いは、
「まずは、自分の今までの経験から、湧いてくるものではないか?」
 と思うと、
「確かに、人を好きになったことはあるが、恋愛というところまでは行っていない」
 と思えるのだ。
 つまり、
「お付き合い」
 と言える関係は、ひょっとすると、彼女が最初だったのかも知れない。
 ただ、初恋というものは、
「人並みにあった」
 と言えるだろう。
 自分にとっての初恋が、
「小学三年生の頃だった」
 ということをしっかり自覚している。
 その三年生の頃というと、当然のことながら、
「思春期」
 というものに入っておらず、
「人を好きになる」
 という感覚とは違ったものであった。
 その感覚は、
「可愛い妹がいて、その女の子を守ろうという感覚であったり、盾になって君臨することで、その女の子を自分に従えさせる」
 というような気持ちだったのかも知れない。
「正義のヒーロー」
 のような立場が、子供の頃に嵌って見るという、
「戦隊ヒーローもの」
 というような、特撮番組と意識が交錯することで、
「俺には、好きな人がいようがいまいが、誰であっても、守ってあげたいと思う人が、ヒロインなんだ」
 というようなことを考えていたのかも知れない。
 特撮番組を見ていると、大体、同い年くらいの子供たちも出ていて、その中で一人のヒロインのような女の子が出ている。
 その子のことを好きな男の子がいて、結局その子ではどうすることもできないのだが、そんな時、特撮ヒーローが出てきて、相手をやっつけてくれる。
 それを、男の子は、
「まるで自分がヒーローにでもなったかのように感じるのであった」
 ということで、
「俺も、あんな男の子のようになれればな」
 と、有岡は、
「ヒーローのようになりたい」
 とは思わなかった。
「ヒーローは、一人を贔屓してはいけない」
 というルールがあるからだ。
 だったら、ヒーローに憧れている、ドラマの中で、自分が入り込んでいる相手である少年に、
「思い入れを深める」
 ということがあっても、無理もないことではないだろうか?
 それを考えると、
作品名:自分と向き合う 作家名:森本晃次